第116話 アクアリア
第116話です。
楽しんでいってください!
ふわりと浮遊感を感じ、足裏が地面についた感覚があった。
ヴェーヴはパチパチと瞬きしてから、前を向く。
「わぁ・・・!」
どこまでも青い空、青い海。
それぞれに白い雲と波が浮かび、動いている様が見える。
眼下にはにぎやかな白い石造りの街が広がっていた。
海に面したところには何隻かの船が浮かび、中央に背の高い時計台がある。
「ここがアクアリア。セレストラで一番大きな港町よ。」
強い風が吹き、潮の香りがふわりと鼻腔をかすめる。
ヴェーヴはポニーテールを揺らし、遠くをじっと見つめるリリスを見上げた。
「師匠、ここに来たことあるんだ。」
「ええ、一度だけね。」
リリスは微笑み、頷く。
「すごいね!」
ヴェーヴはそう言って1歩、足を踏み出した。
2人が立っていたのは街を見下ろす位置にある高台。
背後には背の高い塔が立っていた。
早く行きたい!
その気持ちを体現するように、自然とヴェーヴの足がいつもより早く動く。
「こけるわよ。」
少し遠くに聞こえるリリスの声に返事をし、少しペースを落とした。
街へさらに近づくと、どこからか香ばしいにおいが漂い、人々の喧騒が大きくなる。
「きれー!」
ヴェーヴは道を行き交う人々の服装を見て目を輝かせた。
快活な笑みを浮かべた彼ら彼女らは特徴的な衣装をまとっていた。
白を基調とした動きやすそうな服の袖や裾にはカラフルな刺繍が施されていたり、カラフルな紐で縛られている。
「セレストラでは、虹は神聖なものとされているの。だから、衣装や雑貨が色とりどりできれいなのよ。」
いつの間にか追いついてきたリリスに説明され、ヴェーヴはさらに目を輝かせる。
きょろきょろとあたりを見回し、ある一点で目を止める。
先ほどからずっと漂うおいしそうなにおいの正体。
「焼き魚だ!」
道の端にいくつかある屋台の一つ。
そこから香ばしいにおいが漂ってきていた。
「いいにおいね。」
リリスはふわりと笑みを浮かべ、その屋台に近づくと、お金を渡して焼き魚を2本買ってきた。
「いいの!?」
ヴェーヴはパァっと笑みを浮かべ、焼き魚を受け取る。
「熱いから、やけどしないようにね。」
「はーい!」
リリスから許可が出たと判断に、ヴェーヴは焼き魚にかぶりつく。
「ほぉいひぃー!」
口いっぱいに魚をほおばりながら声を上げた。
ほくほくした白身の魚はシンプルに塩で味付けされている。
身が引き締まっていて、とてもおいしかった。
「ご馳走様!」
あっという間に食べ終わり、ふとリリスを見上げる。
「あれ?師匠、食べるの早いね?」
いつもはゆっくりと食べるリリスが、すでに魚を食べ終えていた。
「そうかしら?」
リリスは小首を傾げながら道に設置されていたゴミ箱に串を捨てる。
「そうだよー。」
ヴェーヴもそれに倣い、ゴミを捨ててからリリスに駆け寄った。
「師匠、師匠!海見てみたい!」
「そうね・・・宿だけ取ってから、見に行きましょうか。」
「わーい!」
ヴェーヴは満面の笑みを浮かべて歓声を上げた。
「いらっしゃいませー。」
リリスが迷いなく、街の北側にある宿の1軒に足を踏み入れる。
中からは柔らかい声が聞こえてきた。
「あれ、リリスー?」
奥の扉からひょこり現れたのは水色の髪を肩で切りそろえている少女。
ヴェーヴよりも少し高いくらいの身長だ。
やはり、白地にカラフルな刺繍のついた服にエプロンをした彼女は不思議そうに目を丸くしていた。
「久しぶりね、エリーヌ。」
リリスが微笑み、頷く。
「リリス?リリス、って言ったの?エリーヌ!」
タタタッと軽い足音が響き、エリーヌ、と呼ばれた少女と同じ方向からやってきたのは彼女とそっくりな少女だった。
同じく肩で切りそろえた金髪を揺らし、ドンっとリリスに激突する。
「リリス、リリス!久しぶり!」
元気な声を上げてぴょんぴょんと跳びはねる。
ヴェーヴはそんな様子を目を丸くして眺めていた。
「リュシエンヌも、久しぶりね。」
リリスが挨拶を返すと、リュシエンヌがひょこりとわきから顔を出してヴェーヴを見つめる。
「リリス、リリス。この子誰!?」
彼女はきらきらとした目でリリスを見上げる。
「隠し子!?」
「違うわよ。」
リリスが即座に否定する。
「じゃあ、妹?」
「弟子よ。」
穏やかにそう言い、ヴェーヴを振り返る。
ヴェーヴは慣れた調子で1歩前に出た。
「ジェルヴェーズです。師匠と旅をしています。よろs」
「そうなの!?」
自己紹介の途中でリュシエンヌがこちらに駆け寄り、手を取る。
「私は、私は!リュシエンヌ!リリスとおんなじ学校に通ってたんだ!よろしくね!」
元気な声でそう言い、ぶんぶんと手を縦に振られる。
「私はエリーヌ。リュシエンヌの双子の妹なんだー。」
さらりとリュシエンヌの手を止めながらそう言った。
リリスは苦笑気味にそんな彼女たちの様子を見つめている。
「よ、よろしくお願いします・・・?」
あれ、とヴェーヴは首を傾げる。
「師匠とおんなじ学校?」
「そうそう!同級生だよ!」
「じゃあ、同い年・・・?」
「そうだよー。」
ヴェーヴはきょとんとした顔で目の前に立つ少女たちを見つめる。
・・・?
「「あ、19歳だよー!」」
双子は同時にそう言った。
「へ?」
ヴェーヴが混乱しているのは放っておかれ、リリスに部屋の鍵が渡される。
「2階の一番奥だよー。」
「ありがとう。」
鍵を受け取り、ヴェーヴを振り返るリリス。
「行きましょうか、ヴェーヴ。」
「・・・はーい。」
少し間が空き、ヴェーヴはとことことリリスの後ろについて行った。
2人がいなくなったエントランス。
そこに残った双子は、ひそひそと言葉を交わしていた。
「ねぇねぇ、あの子、精霊の気配する!」
「するねー。なんでだろー?」
「わかんない!」
「リリスに聞こー。」
ひそひそ、と言えるかわからない声量のリュシエンヌの声がその場に響いていた。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




