第113話 5日間訓練④
第113話です。
楽しんでいってください!
――4日目の朝。
今日、ヴェーヴの前に立ったのはリリスではなく、アグニ=ゼルだった。
ヴェーヴがきょとんとした顔で彼を見おろす。
「今日は、アグニが教えてくれるの?」
「ああ。ここからは魔力とは少し異なる分野だからな。」
「何するの?」
「お前の精霊力に属性を載せる。」
そこでヴェーヴは首を傾げる。
「精霊力?」
「お前が魔力だと思って流していた物だ。」
「何か違うの?」
「ああ。お前には魔力がない。精霊力とは、精霊の力だ。契約主は契約精霊のそれを借りることができる。」
「へー。」
いまいちピンと来ていない。
そんな表情をしながらヴェーヴは相槌をうつ。
「やるぞ。」
次の瞬間、アグニ=ゼルの耳飾りが淡く発光する。
そして、ヴェーヴの左胸にある契約紋が赤い光を放つ。
ドクン、という心臓の動きに合わせて脈打つそれは、熱い。
今まで感じたことのない熱。
でも、苦しくない。
むしろ、どこか懐かしかった。
「感じるか?」
「うん。」
「それが、俺の力だ。・・・魔力で球体を作ってみろ。」
ヴェーヴはその言葉通りに、昨日よりもさらに球状に近くなったそれを浮かべる。
「そこに、俺の力を流し込め。精霊力と同じ要領でいい。」
「・・・。」
ヴェーヴは無言のまま目を閉じる。
心臓の近くそこにある、今まで感じたことのない熱。
それをそうっと押し出した。
すると――
ボッ
球体がわずかに赤く染まり、熱を持つ。
「わぁ!」
ヴェーヴは感嘆の声を上げ、それをじっと見つめた。
その瞬間、球体から火柱が昇った。
「へっ!?」
目を丸くし、思わず声を上げる。
天井まで届こうかというそれは、即座に張られた薄い膜に阻まれた。
「暴走ね。」
リリスがヴェーヴに歩み寄る。
「制御しきれないのだろう。」
「まぁ、予想通りね。」
アグニ=ゼルは無表情で、リリスはいつも通りの笑みを浮かべてヴェーヴを見つめる。
「先に言ってよ!」
ヴェーヴはむっとして声を上げる。
そんな彼女に、リリスは苦笑しながら口を開いた。
「初めはそんなものよ。今日はこの制御の練習じゃないかしら?」
ちらりとアグニ=ゼルに向けられる視線。
それを肯定するように彼は無言で頷いた。
「もう一度だ。」
「はーい・・・。」
2度目は流す量が少なすぎたのか、球体は即座に消火した。
3度目は再び火の柱が立ち上る。
4度目、5度目と回数を重ねるごとに、ヴェーヴは精霊の力のコツをつかんでいった。
「これで最後だ。」
訓練場に橙色の日の光が差し込んでいる。
ヴェーヴは額に大粒の汗を浮かべながら小さく頷いた。
何度も何度も繰り返し、球体の魔力は完全な丸にさらに近づいている。
ヴェーヴはそこに契約紋からアグニ=ゼルの力を混ぜた。
絵の具のように、きれいに、均一な色になるように。
ボッと音が鳴り、そこには球状の炎の塊が浮かぶ。
それは30秒程度維持され、かき消えた。
完全に消えたのを確認し、ヴェーヴはその場に座り込む。
「疲れたー!」
「お疲れ様。」
リリスがいつの間に持ってきたのか、冷たい氷の入った水を差し出す。
ヴェーヴはそれを一気飲みしながらアグニ=ゼルの言葉に耳を傾けた。
「明日は最終確認だ。」
「確認?」
「・・・明日になればわかる。」
完全に地平線に沈む寸前。
その橙色の光が3人を照らしていた。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




