第106話 終わりの鐘
第106話です。
楽しんでいってください!
その様子を見つめながら、アグニ=ゼルは静かに目を細めた。
「・・・随分と嬉しそうだな。」
「だって、魔法ってかっこいいもん!」
ヴェーヴは目を輝かせながら両手を広げる。
「火がバーってなったり、水がドーンってなったりするんでしょ!?」
「語彙が壊滅的、ね・・・。」
リリスが頭を抱えた。
しかし、その口元にはわずかに笑みが浮かんでいる。
アグニ=ゼルはそんな二人を見ながら、小さく息を吐いた。
「・・・まあいい。」
彼がそう呟いた瞬間だった。
――ドクン。
ヴェーヴの左胸が大きく脈打つ。
「っ!?」
突然あふれ出した熱に、ヴェーヴは胸を押さえた。
胸の奥が熱い。
だが、不思議と苦しくはない。
むしろ、温かい。
「ヴェーヴ!?」
リリスが慌てて肩を支える。
ヴェーヴは困惑したように瞬きを繰り返した。
「なんか・・・ぽかぽかする。」
「契約が馴染み始めたか。」
アグニ=ゼルが静かに呟く。
すると、ヴェーヴの左胸――契約の光が吸い込まれた場所が淡く虹色に発光した。
「わぁ・・・。」
ヴェーヴは自分の胸を見つめる。
その光は心臓の鼓動に合わせるように、ゆっくりと明滅していた。
リリスは目を細め、その光景を見つめる。
「きれい・・・。」
「最上位精霊との契約紋だ。」
アグニ=ゼルがヴェーヴの胸元を見ながら続ける。
「通常の人間の器では耐えきれん。肉体も魂も焼き切れて終わる。」
「えっ。」
ヴェーヴの顔が引きつる。
「じゃあ僕、死にかけてたの!?」
「そうだ。」
「もっと早く言ってよ!?」
ヴェーヴが半泣きで声を上げた。
リリスも顔色を変え、アグニ=ゼルを睨みつける。
「笑い事じゃないわよ・・・!」
「問題がないから、やったのだ。」
アグニ=ゼルは平然としている。
「こいつの中には、無限に近い空白がある。」
「空白・・・?」
ヴェーヴが首を傾げた。
アグニ=ゼルは静かにヴェーヴを見つめる。
「先刻言ったように、一部の人間は先天的に精霊と契約を結ぶ。それは、空白があるか否かが影響するのだ。」
リリスが険しい顔で口を開く。
「契約を結ぶのに必要な、空白の大きさには個人差がある、と・・・?」
「ああ。」
琥珀色の瞳が細められる。
「だからこそ、こいつはエリュシアの後継となり――終焉を選び取ることができる。」
その言葉に、部屋の空気がわずかに重くなった。
ヴェーヴはきょとんとしたまま瞬きを繰り返す。
「終焉?」
「お前の真名――ジェルヴェーズ=モルテネ。」
アグニ=ゼルの声が低く響く。
「それは、死より生まれし者を意味する。」
その瞬間。
――ゴゥッ!!
黒い部屋の壁に切れ目が走り、一斉に虹色に輝き始めた。
「!?」
リリスが咄嗟にヴェーヴを庇うように前へ出る。
だが、アグニ=ゼルは動かない。
ただ静かに、その光景を見つめていた。
壁の文字はまるで呼吸するように脈打ち、
やがて一つの方向へ光が流れ始める。
それは、部屋の最奥。
巨大な黒扉へと集束していた。
ギギギギギ――――。
重々しい音が響く。
今まで何をしても開かなかった扉が、わずかに開いた。
その隙間から、冷たい風が吹き込む。
ヴェーヴは目を見開いた。
「開いた・・・?」
アグニ=ゼルが静かに口を開く。
「どうやら、この遺跡は待っていたらしい。」
「待ってた?」
「ああ。終わりの鐘を鳴らす者をな。」
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




