第105話 契約
第105話です。
楽しんでいってください!
ヴェーヴはパチリ、と目を開いた。
そこは、遺跡の中――黒い部屋だ。
あの金髪の女の人ってエリュシアさん、だよね・・・?
ヴェーヴはわずかに視線を落とす。
「ヴェーヴ!」
隣を見上げると、心配そうにこちらを見ているリリスが立っていた。
「大丈夫?どこかけがはしていないの?」
リリスがヴェーヴと目線を合わせるようにかがむ。
ヴェーヴはにこっと笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ!」
「そう、なのね・・・。」
まだ心配そうに眉を寄せるリリスの向こう側からアグニ=ゼルの声が響いた。
「エリュシアの記憶を見て、どう思った?」
相変わらずの無表情でこちらを見つめる。
リリスは再び視線を落とす。
「まだ、よくわかんない。」
「ほう。」
アグニ=ゼルが続きを促すようにうなずく。
「僕は、この後何があったのか知りたい。」
まっすぐにアグニ=ゼルを見返したヴェーヴの瞳は、覚悟を決めたもの特有の輝きが宿っていた。
そんなヴェーヴを見て、アグニ=ゼルはわずかに目を見開く。
「・・・そうか。」
ふっと大人びた笑みをわずかに浮かべる。
そして、再び口を開いた。
「それならば、俺も最後まで付き合おう。」
そう言い、ゆっくりと瞼を下ろしていく。
それに伴い、彼の片耳についた紅の耳飾りが光を放ちだした。
やがて、完全に目が閉じられる。
耳飾りが一際強い光を放った。
それが収束し、ヴェーヴの左胸――心臓の位置を示すかのようにピンと伸ばされる。
「なんだろ、これ?」
ヴェーヴの声を遮るように、アグニ=ゼルが口を開いた。
「『始火の観測者』アグニ=ゼルがここに示す。」
ゴウッと音を立て、彼の身体を虹色の炎が覆い隠す。
次の瞬間、炎が膨れ上がり、霧散した。
そこに立っていたのは、白に近い白金色の髪の青年。
その額にはきらきらと虹色に輝く角が生えていた。
琥珀色の瞳がきらめき、まっすぐにヴェーヴへと向けられる。
「真名――ジェルヴェーズ=モルテネを見守り続けることを。」
アグニ=ゼルがそう言うと同時に、耳飾りから、ふわり、と何かが分離した。
それは、透明な炎。
それは光をたどるようにふわふわと移動し、ヴェーヴの胸へと吸い込まれていった。
ヴェーヴの胸がじんわりと温かくなる。
そこにそっと触れ、アグニ=ゼルへと視線を向けた。
「契約完了。」
その言葉を合図に、その姿が一瞬炎に包まれ、霧散する。
その場には、元通り少年の姿をしたアグニ=ゼルだった。
「契約・・・?」
ヴェーヴが首を傾げる。
アグニ=ゼルがその問いに答えるように口を開いた。
「そうだ。精霊と人間の契約。俺たち最上位精霊とできるのは、エリュシアと――お前くらいだな。」
「エリュシアさんも?」
「ああ。見ただろう?精霊女王がエリュシアに加護を与えるところを。」
ヴェーヴはこくりと頷く。
「あの加護のおかげで、エリュシアは精霊と契約を結べるようになった。俺の力は、お前のものだ。」
「・・・へ?」
まだ混乱しているヴェーヴに代わり、先ほどまで沈黙を保っていたリリスが口を開く。
「精霊属性に近いものかしら?」
「近い、というかお前らが使っている魔法はすべて、精霊の力だ。エリュシアの子孫であるお前らには、先天的に精霊が契約することが多い。」
「でも、精霊と契約を結べるのは、始祖様とこの子だけだと・・・。」
リリスはそっとヴェーヴの頭をなでる。
「最上位精霊は、だ。先天的に契約しているのは下位精霊。時には中位精霊もいるようだがな。」
アグニ=ゼルがリリスをちらりと一瞥する。
「お前と契約しているのは、緑の中位精霊だ。精霊の強さは、お前らの言う魔力量にも直結する。」
そこで、ようやく混乱から復活したヴェーヴが声を発する。
「つまり、僕も師匠たちみたいに魔法が使えるってこと!?」
「そうだ。扱い方もほとんど同じだろう。」
アグニ=ゼルが静かに頷く。
リリスが考え込むそぶりを見せた。
「それなら、帰ってから色々と練習しましょうか。」
「うん!」
ヴェーヴはニコニコと満面の笑みを浮かべ、大きく頷く。
リリスも静かに頷き返した。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




