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第103話 赤い少年

第103話です。

楽しんでいってください!

 『こっちにこい。』


透明な球がふわふわとヴェーヴの横を通っていった。

ヴェーヴは一歩踏み出し、広場に足を踏み入れる。


黒い艶やかな石が床と壁を覆っている。

正面には巨大で、透明な石が浮かんでいた。


カツリ、と音が鳴り、ヴェーヴの横にリリスが並ぶ。

2人並んで球の動きを見つめていた。


球は、透明な石に吸い込まれるように消えていく。

すると、石がぐにゃり、と変形した。

それはさながら、本のような形。


「あれ、なんだろ・・・?」


ヴェーヴが思わず言葉をこぼす。


「エリュシアの遺物だ。」


黒い部屋に、幼い声が響く。

ばっと勢いよく背後を振り返った。


まったく、気配がなかった・・・?


ヴェーヴは小さく首を傾げ、少年を観察する。


白に近い白金色の髪が風もないのにふわふわと揺れる。

ヴェーヴを観察するように、まっすぐ見つめていた。

琥珀色の瞳には熱がこもっておらず、ヴェーヴは背筋が冷たくなるのを感じた。


見た目だけはただの少年。

しかし、その服装が異質だった。

『白露庵』でリリスに教えてもらった、遠い所にある島国のような服装だ。

火のような紅色のシャツをきっちりと着て、その上に同色の短い羽織。

下は黒い袴をはいていた。


「精霊、かしら・・・?」


リリスが目を見開き、少年を凝視する。

彼は静かに頷き右腕を水平に払った。

すると、真っ黒だった空間が炎が放つ赤い光に埋め尽くされていく。

少年の背後には、赤い門のようなものが出現した。


「そうだ。俺は、『始火の観測者』アグニ=ゼル。――お前らの言う、火の精霊だな。」


「二つ名持ちの、精霊なのね・・・。」


リリスが考え込むようにうつむく。

ヴェーヴは彼女を見上げ、首を傾げた。


「何かあるの?」


「・・・上位精霊のさらに上、最上位精霊くらいなの。二つ名持ちは、ね。」


リリスは警戒するようにアグニ=ゼルを見つめる。


「お前らに危害を加える気はない。」


彼は表情を変えず、すたすたとヴェーヴに近づいた。

ヴェーヴよりも少し高い身長。

エリュシアの遺物、と言った本を静かに指さした。


「触れ。お前がエリュシアの後継なら、それだけでいい。」


ヴェーヴはぎこちなくアグニ=ゼルを見上げる。

彼は変わらず無表情でヴェーヴを見おろしていた。


「はい・・・。」


ヴェーヴは緊張し、ぎこちない足取りで透明な、本の形をしたものに触れた。

部屋にまばゆい光が溢れ出る。

ヴェーヴは思わず目をぎゅっとつむる。

次の瞬間、わずかに浮遊感を感じた。

これからものんびり投稿していきます!

ちょこちょこ覗きに来てください!

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