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気弱令嬢と入れ替わった私、とりあえず不満を書き出してみることにしました。  作者: ちょこだいふく


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17/17

17.真理恵の後日談

昼下がりの光は、今日も柔らかい。


タワマンの上層階は相変わらず静かで、街のざわめきは遠い。


ベランダの椅子にもたれながら、真理恵はぼんやりと空を見上げていた。


あの日から、数日が経っている。


あの出来事は、結局——


夢だったのかもしれない。


そう思うこともある。


でも。


机の上には、一冊のノートがある。


最初に見つけたとき、あきらかに私じゃない、美しい筆跡でびっしりと文字が書かれていた。


整った、きれいな文字。


アマーリエのものだ。


今、そのノートにはもう新しい文章は増えていない。


それでも、真理恵は時々ページをめくる。


「……元気かな」


ぽつりと呟く。


もちろん、返事はない。


窓の外では、午後の光が街を照らしている。


真理恵は椅子から立ち上がった。


部屋に戻り、机の前に座る。


ノートを開く。


最後のページの余白に、自分の字で書いた言葉がある。


『やりたいことリスト』


その下に書かれているのは、まだ一行だけ。


『外に出てみる』


真理恵はその文字をしばらく見つめた。


それから、小さく笑う。


「……まあ」


「書いたしね」


立ち上がる。


部屋の中を見回す。


いつもの景色。


ソファ。

キッチン。

静かな部屋。


今までなら、ここでまたベランダに戻って、ぼんやりして終わりだった。


でも今日は、少し違う。


真理恵は鍵を手に取った。


玄関のドアを開ける。


廊下の空気は、少しひんやりしていた。


エレベーターのボタンを押す。


しばらくして、扉が開く。


中へ入る。


ゆっくりと下降していく感覚。


なんだか、それだけで少し不思議な気分だった。


やがてエントランスに着く。


自動ドアが開いた。


外の空気が、ふわりと流れ込む。


真理恵は一歩、外へ出た。


街の音が、少しだけ近くなる。


人の声。

車の音。

遠くの信号。


全部、久しぶりに聞く気がした。


真理恵は空を見上げる。


青い空。


少し眩しい。


「……なるほどね」


小さく呟く。


そして、少しだけ笑った。


「悪くないかも」


ポケットに手を入れて、ゆっくり歩き出す。


行き先は、まだ決めていない。


でも。


それでいい気がした。


真理恵は、ふと空を見上げる。


遠いどこかの世界でも、きっと誰かが同じように歩いている。


そんな気がした。


真理恵はもう一度、小さく笑った。


そして、歩き続けた。



読んでくださってありがとうございました٩( 'ω' )و

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