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愛する上司は罪深き転生者(冤罪だけど)  作者: 安藤昌益
今度こそ

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24/25

誰も何も言わなかった

「ロレンツィオ。遅かったな・・・?おい・・・。」

とスラムの境にあるような場所の一軒の旧い、小さい建物に入った2人を迎えた男は、見覚えのあった、ベアトリーチェの記憶の隅にあった男だった。彼は驚いたようだったが、何か言いかけたが、彼女が誰だかわかった上で、言葉を飲み込んだ。

「いいのか?」

とだけ言った。

「もちろんだよ。彼女が来てくれさえすれば、私は・・・。」

とロレンツィオは答えた。

 どちらも色々と聞きたい、話したおきたいと思ったが、言葉が出てこなかったのと、彼にとっては、

「ロレンツィオが決めることだから。」

と思考を停止していた。

「私には、この選択しかないんだ。」

 ロレンツィオだった。

「じゃあ、帰るか。もうすます要件はないんだよな?」

「ああ、さっき持ち込んだ荷で終わりだよ。」

 その会話から、ベアトリーチェは全ての要件が終わってから、彼が自分を見に来たのだということが分かった。

「ロレンツィオ。」

「はい?」

と彼がふり向くと、彼女はいきなり自分の唇を彼に重ねた。彼の後頭部に手をまわして、さらに強く押し付けた。舌をこじ開けるように入れ、彼の舌と自分の舌を絡ませて、互いの唾液を流し仕込みあった。そして、始めた時と同様にいきなり離した。

「わ、私からのただいま、だ。・・・遅くなってすまない。」

 じっと見つめた。すると今度は、彼から唇を重ねてきた。唾液の交換までして離した。唾液の橋が一瞬できて、かぐに落ちた。

「おかえり。遅くなった罰は後で。」

と彼は返した。パンパンと手を打つ音が聞こえてきた。

「はいはい。転移するぞ。転移してから続きはゆっくりやってくれ。」

 転移が始まった。

「罰・・・ああ、私は死ぬのだな。私は・・・彼のために自ら死んでやろう。」

 彼女は心の中で思っていた。


「お帰りなさい・・・え?誰?あ?・・・分かったわよ。」

 迎えた場所にいた記憶にある女が戸惑いながらも、ロレンツィオとベアトリーチェの顔を交互に見てもため息をついて、それ以上は何も言わなかった。いや、ロレンツィオに囁いた。

「どちらにしても、後悔ないようにね。」

 その声は、ベアトリーチェには聞こえなかった。ロレンツィオは、微かに頷いていた。相手もわかったようだった。

 ロレンツィオは、ベアトリーチェを従えたまま、荷の指示を、受け渡しを行った。見覚えのある顔の男女達は、目を丸くしたが、すぐに理解したように何も言わなかった。

「ロレンツィオが何をするか、皆わかっているということか。ロレンツィオが、自ら私を殺すのだな。それでいい。」

 彼女は、そう考えた。

 彼は、自分の仕事が終わると、彼女の手を引いて足早に歩いた。彼女を見ようとしなかった。


 彼は、彼女を、彼女も記憶のある、彼と過ごした家に、連れて入った。彼は素早く後ろに回ると、

「パタン」

とドアが閉めた。

 彼はじっと彼女を見つめて無言だった。彼の目は、彼女の上から下まで精査でもしているかのようだった。

「私を・・・強引に・・・思いをとげるつもり?それは、それでいいわよ。私を強姦して、凌辱して、満足した後殺してもいいわよ。その最中に殺してもいいわよ。」

 心の中で呟いていた。そうされることで、彼が自分のものになる、自分が彼の上に立てる、そにな気持ちになっていた。

 彼は動かなかった。息を整えているようだった。

「全く、何時でも優柔不断な奴だ。」

とつい声を出してしまった。何か懐かしいような気がした。

「私から言わないとだめだな。」

 彼女は苦笑してみせて彼に歩み寄った。

「ロレンツィオ。お前は、私をどうしたいのだ?私は、お前を捨てて、裏切った。お前のことが嫌で嫌で仕方がなかった、触られるのさえ嫌になったと言いまくった女だ。他の男の下で幸せを感じて、喘いだ女なんだ。今お前の所に帰ってきた。どうしてか?お前に謝罪したいからか?違うな。確かに謝罪はしたいと思うさ。お前に、私は命を助けられたのだから。お前のやっていたことで、私は元の世界に復帰できたのだ。それには感謝している。改めて言う。お前に感謝する。そして、そのお前から逃げた、お前を捨てたことは悪かった。お前の誹謗中傷をしたことは悪かった。謝罪する。許されはしないだろうが。だが、お前のことが触られるのさえが嫌になったのも、お前がいなくて幸せを享受したのも事実だ。そういうことに許しを乞うためか?いや違う。許しは乞おう。許してくれ。許されないのは分かっている。だがな、それを言いにきたのではない。償いをしにきたのでもない。私はそんな善人ではない。」

 彼女は彼の襟首を軽くつかんだ。彼の目の前には、彼の目には、誘うような彼女の顔があった。互いの息が感じ合えた。彼女の目の前には、真っ直ぐに見つめる彼の顔があった。


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