彼女は出奔する
たまたまだった。夫が愛人2人を、2人とも子供ができた、本宅に連れて来たのが、再びロレンツィオが現れた前々日のことだった。妻妾同居ということになったわけである。貴族の世界ではよくあることである。本妻が、怒り狂うこともあれば、受け入れる場合もある。受け入れる場合の方が多い。本妻としての権威が守られれば問題ないのである、その場合。彼女の夫は、まさにそうだった。子供には責任を持ちたい、不自由な成果はさせたくない、本妻のベアトリーチェをないがしろにはするつもりはない、彼女を本妻として愛人達とは区別するし、彼女達にもそれを求めていた。
ベアトリーチェにとっては、そういうことは最早どうでもよかった。
ただ、彼女の大楊に受け入れる姿と微かに無関心といえるような表情を読み取った使用人達は、彼女がかなりショックを受けているのではないか?と感じていたのではあるが。
彼女は、もはやそういうことはどうでもよかった。彼女には、ロレンツィオのことしか頭には、もはやなかった。
再び彼の姿を見た直後、彼女は素早く着替え持ち物を持って、密かに屋敷を飛び出した。事前に検討しきった気がつれないだろうコースで。彼の後を気配を消して追った。
「隊長が我々の居場所を教えていないか、心配しているだけだ。動きがないかどうか見回っているだけだ。」
とロレンツィオは心の中で弁解していた。
「本当は彼女のことが・・・未練が残っているだけ・・・なんだ。俺は、魅力がなかっただけのこと。あの人の何かになっていたなんて思い上がりも過ぎたことなんだ。そんなに自分が優秀だと思っていたなんてお笑い草だよな。あの人にとっては、単にその他大勢の中でしかなかった。」
と呟きながら、もう何度いっているかわからない、
「もうそろそろ諦めるか。いいや、違う。彼女が俺達を売るという姑息なことはしないと信じよう。」
を呟いた。
その彼の袖が引かれた。
「?誰だ?気が付かなかった。」
と心の中で叫んだ。しかし、これは殺意があるとは思えない行動だった。それが分かったから、落ち着いて振り返った。
「何か、ようで・・・。」
彼の口が止った。ポカーンとして口が開いたままだった。彼の目の前に、懐かしい顔があった。
「久しぶりだな。ロレンツィオ。ようやく会えたわね。待っていたわよ。」
「え?」
一瞬戸惑ったが、彼女の姿から彼を捕縛するための囮ではないと言うことを感じた。
「今度こそずっとあなたのそばにいる・・・いいえ、私の意志であなたと共に行く・・・いいえ行きたいのよ。」




