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愛する上司は罪深き転生者(冤罪だけど)  作者: 安藤昌益
今度こそ

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彼をまた私のものにすればいい

「私だけの物と思っていたら、そうでなくなっていた時はどうなさいます?」

 ベアトリーチェが、ふとそのようなことを口走ったのは、他の貴族夫人のサロンに招待された時のことだった。ふと、ではあったが、その内容は何度も何度も考えていたものだった。ただ、この場でそれを口にするつもりはなかったのだ。

「しまった。」

とは思ったが、狼狽しては疑われてしまう。彼女は、ちょっとした話題を提供しただけですよ、という風に装うため、にっこりと微笑んだ。

「それなら、自分の魅力を想い知らせてやろうと思いますわ。」

と脇で聞いていた夫人が、割って入って言った。

「それでは、まるで男女の3角関係みたいではありませんか?」

と少し心配そうな顔で加わった夫人もいた。

「ああ、そう言えばそうですね。」

とベアトリーチェは、なおも笑顔を絶やすことなく、返した。

「小説だと・・・自分の価値を永遠にするために自害するというのもありましたわ。」

と言ってから、本人はもちろん周囲まで、しまった、という顔をした。

「そういう考えもあるのですね。私は、死んでまで固執したくはないですね。そう言えば、最近流行の小説とはどういうのがありますか?」

とさり気なく話題を変えると、誰もがホッとした顔となり、最近読んだ小説について話始めた。


 さして、ベアトリーチェが、夫の愛人のことでかなり不満を持っている、怒りを感じている、悩んでいる、という噂がたった。実際、彼女の夫は、中年から少女に近い歳までの3人の愛人を持っていた。ただし、ベアトリーチェは、ほとんど関心は持っていなかったが。


「でも、私と再会したら、彼は、ロレンツィオは私を殺すかもしれない。もし万が一、彼がそうしたくなくても、周囲が許さないだろうな。」

とベアトリーチェは思った。当然であろう。自分達のコロニーが、村が、命が危険にさらされたのだ。結果として彼女が、その場所、詳細をかたらなかったから無事だったものの、その間の、さらに未来の不安がある。怒りに任せても、理性で判断しても、彼女を殺すことが一番好ましいことではないか?それに彼が抵抗できるだろうか?それに、もう恋人、いや妻もいるだろう。自分は邪魔者でしかないだろうな、とも考えた。

「このままお互いに相手のことを忘れるのが一番いいことなんだ。」

 彼女の理性も、良心も彼女に語り掛けた。

「彼は私を殺さねばならないだろうな、私が彼の元にもう一度戻ったら。彼のことだ。他人に、私の処刑をゆだねるような奴ではない。自分で・・・やらなければならないのなら・・・私を殺すだろうな。私を殺したら・・・恋人がいよう、悲しむだろうな。奴のことだ、ずっとそのことを忘れることなく、心に残して苦しむだろうな。ずっと、ずっと、私のことに引きずられて過ごす・・・。彼のために、私は彼のことを忘れるべきなんだな。彼からの恩は忘れることなく、それは別として新しい道を歩むのが・・・私にも、彼にも幸福なんだ。」

 理性、良心、常識からの言葉通りに、ベアトリーチェは納得しようとした。だが、 

「?・・・私のことに引きずられて、ずっと日々を過ごす?私のことに支配されて?私にしはいされて・・・ずっと?それって、彼が彼のものになるってことでは?そうだ、私が彼に私を殺させるのだ。私のものになる、私が命令した時点で。そして、私の死で、私を殺したことでロレンツィオは私の物になる?」

 狂気が彼女に囁いた。狂気が彼女を支配しようとした。だが、彼女の理性、良心、常識はまだあきらめず囁いた。

「でも、私を彼が殺さなかったら?」

 逆に今度は、そのことが不安になった。また、あの当時と同じになる。彼は、彼女の者ではなくなるのだ。しかし、狂気が彼女にまた囁いた。

「そうだ。私は転生者達とともに生きるのだ。私が彼らの生きれる場所を確保してやる、守ってやる。彼に私の副官を再びさせるのだ。彼に妻がいようとかまわない。彼を取り戻す、奪い取ればいいんだ。彼は私のものになるのよ。」

 彼女は狂喜に完全に乗っ取られた。

 彼女のその時の顔は、完全に狂気した人間のそれだった。笑っていたが、その笑い顔は歪んでいる、というしかなかった。ただ、彼女は声を出して笑うことはなかった、本当はその笑いが心の奥深いところから、こみ上げていたものではあったが。


「そうだ。彼の元に戻ろう。それからだ。彼を捜し、見付けるんだ。彼に借りを・・・運を返そう。」

 彼女は、そう決めると良き、かつ優秀なアテナ聖騎士団副団長として良妻賢母、進歩的な階層の人々が集まるサロンの女主人として義務?を果たしながら、ロレンツィオの捜索と彼を見付けたらどうするか、その時持って出る荷物とカバンを用意し始めた。



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