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愛する上司は罪深き転生者(冤罪だけど)  作者: 安藤昌益
今度こそ

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20/25

幸せな日々?➂

 その彼のところからどうして自分は逃げ出したのだろうか?いや、その前にどうして彼を拒否したのだろうか?何故、彼のことをあれほど嫌悪したのだろうか?彼女は自問するようになった。

 いや、そんなことはない、毛嫌いなどはしていない、と初めは考えようとした。しかし、思い出せば思い出すほど、あの時彼を嫌悪していたことを思い出した。それも酷くだった。触られる、いや、見られるだけでも悪寒を感じた。どうしてだったのだろうか?何時からだったのだろうか?牢獄で第12騎士隊が彼女の独房に入ってきた時、彼と一緒だった。その時は、そのようなことはなかった。それよりずっと前、入獄してまだ間もない時・・・あわてて駆けつけてきた彼に対して強がりの冗談すら言った時ですら、他の男達によって汚れていた自分を見られていたにも関わらず、そんな気持ちは抱かなかった。彼が自分を助けるために、返り血を浴びた状態の時には?感じてはいなかった。転移魔法陣の中に入る寸前、彼に手を握られ、引っ張られるようにしていた時も・・・感じてはいなかった。転移後はどうだったか?よくは覚えてはいない。少なくとも、それからしばらく後、彼が自分を見ているだけで鳥肌が立っていた、嫌悪感から、ことは覚えている。

 彼が転生者の疑いを持ったから?自分を助けるために転生者達の脱獄を図ったと考えていた。転生者だと・・・転生者ではないかということを耳にしたのはずっと後だった。転生者の味方をしたからか?転生者達に、嫌悪感や不信感きあったが、それほどではなかった。彼らについては、生活をともにするうちに、嫌悪感は少なくなっていった。だが、ロレンツィオについては別だった。

「どうしてロレンツィオを嫌うようになったのだ?」

 いつも彼女は最後に、最初の疑問に戻っていた。


 転移した直後からか、嫌悪するようになったのは?そこから考えることにした。そうだとすると・・・どうしてだ?彼の自分への態度が変わったか?変わってなどいなかった。目つきが変わったか?どうだろうか?変わっていない・・・と思う。大体、顔を見て、目つきを見て、ということではなかったはずだ。するとどうしてだ?何が変わった?確かに暮らしが変わった。貴族から、貧しい農民・・・貧しい農民の生活ではなかった、そこそこの農家というべきか、まあまあ暮らしていける農家の生活に変わった。確かに大きな変化だった。だが、それ自体は・・・嫌ではなかった・・・か?・・・そうだ、嫌悪はしていなかった。毎日の苦労も新鮮で楽しくはなかったが・・・楽しかったか?・・・悪くはなかったことは確かだ。これが貴族ではない生活か、農民達はこうやって暮らさなければならないのか、とあらためて思ったし、日々うまくできるようになっていく、成果がでることが嬉しくもあった・・・はずだ・・・絶対そうだ。それでも、そのような生活にしたロレンツィオを憎んだのか?生活を嫌悪していないのに、ロレンツィオを憎むはずはない。貴族、騎士の世界から堕としたことを憎んだのか?いや、もうそこから堕ちていたはずだ。もう戻れないと思って・・・。いや、貴族のままだった。貴族の気品を、騎士の吟じを捨てないようにして、必死になっていた。あの牢獄の中で犯されてさえ・・・。ロレンツィオは、それなのに自分を引きずり下ろした?いや、簡単に連れ出してしまったのだ。それに嫌悪したのか?確かにそれはあるかもしれない・・・。それだけか?あの時・・・彼の下に自分はいた、彼に頼っている自分がいた、彼に依存して・・・。ロレンツィオは、私のものでなければならないのに、私のものではなくなった。私の保護者?として私の者ではなく、私から離れてしまった。それが嫌で嫌で仕方がなかった?私は彼の下が屈辱だったのか?そうだ、私は、行くぞロレンツィオ、これを考えてくれ、これを、あれを頼む、助けてくれ、と彼に命じていた、彼を後ろに従えていた。彼は私の物だった。私の隣に、上に、共にいるべきで物ではないのだ・・・だから、私の物ではないロレンツィオに嫌悪したのだ。私のやることに、私のために働いてくれるロレンツィオではない、私のことを思いやり、助け、導いてくれるロレンツィオは、ロレンツィオではないのだ。ロレンツィオの顔をした、ロレンツィオではない物に私は嫌悪したのだ。


 ベアトリーチェは、そこまで考えついて愕然とした。そして、その瞬間、ロレンツィオの顔をした、ロレンツィオでない物を脳裏に浮かべて、悪寒を感じて、ひどい嫌悪感が沸き起こるのを感じた。

「でも彼はロレンツィオなのよ、ロレンツィオ以外の何物でもない。私が勝手に、自分の気に入る存在・・・いや自分の気持ちでロレンツィオだ、そうでないと嫌悪していただけなのよ。彼は変わってはいない、あの時私が変わっただけよ。私は・・・私の虚栄心が彼を嫌悪した・・・。」

 脳裏のロレンツィオの顔をしたロレンツィオではない物は砕けるように消えていった。

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