【第46話】私、天国を見つけました
お待たせ致しました( ˘ω˘ )
「お兄様、ケーキのロウソクを吹き消すんですが、その前に、お願い事をしてくださいませね」
「初めてきくね。でもせっかくアメリアが準備してくれたんだから、願い事をしてみるよ」
食堂の光を落とし、ケーキのロウソクだけが煌々と光っている。
ロウソクだけが照らすお兄様も綺麗だ。
誕生日ケーキにロウソクを立てて吹き消す文化は、ここには無かったので、私の提案で準備されたものだ。
「では消すよ…」
……ふうっ
3人で拍手するとそれに続いてアニーとレイモンド、そして他の使用人も拍手した。
すぐに食堂の光が灯る。
給仕がケーキを切り分けてそれぞれに配り、お茶が用意された。
「んんーっ!やっぱり私はショートケーキが一番好きです!」
「ふふふ。アメリアは苺とクリームのケーキが一番好きなんだね?覚えておくよ」
誕生日ケーキを美味しくいただいていたら、覚えて置くとお兄様が言ってくれたので、今後お兄様の所へ遊びに行ったら、ショートケーキが出てくるかもしれない。
「お誕生日ケーキといえばイチゴとクリームかなとこちらにしたのですが、お兄様は何のケーキが好きですか?次からはそれにしますので!」
「うーん…。でも、これと言って出てこないから、次もアメリアが好きなショートケーキにしようね?」
「…はい!」
(イケメンは言うこともイケメンのようですねぇ!)
ケーキを食べ終わってお茶を飲んだら解散と言うところで、私は最後の仕上げをする。
「お兄様、最後にもう一つお渡しするものがあるのです」
椅子を立って、直接渡しに行く。
私がお兄様に歩み寄ると、お兄様は「ん?」とこちらに体を向ける。
「招待状です!」
「招待状……?見てもいい?」
「はい!」
”永久招待
ユリシスお兄様を、家族の食卓へ永久に招待致します。
用事がある時以外は、毎日いつでもご一緒してくださいね。
だから、明日の朝食もご用事がなければ来てくださいね?
いつでもお兄様の席を準備しています。
アメリア
ロメリアス
アリステア“
永久なんて大袈裟かもしれないし、声をかけるだけでも来てくれるのだろうが、遠慮してしまいそうなお兄様にはこれくらいでいいのだ。
本当は家族での食事に招待状なんていらないけど、こうして形に残しておけば、招待に応じなければと思ってもらえる気がする。
そんな、ちょっとズル賢い私の招待状である。
ちなみに、文章と私の署名は私。
お父様とお母様の署名もそれぞれ直筆だ。
「………っ。アメリア、ありがとう。凄いね?さっきのケーキの願い事が、もう叶ったよ……」
「……おにぃ…っ」
最後まで呼べなかった。
お兄様にギュッと抱きしめられて、そのまま抱き上げられたからだ。
「大好きだよ。アメリア」
( 破 壊 力!)
お兄様の温もりと、少しひんやりした柔らかい髪の感触が頬にあたる。
(す……全てが尊いっ!)
「……!!わっわ!私も大好きですよ!」
「ふふふっ。うん、ありがとう。っはははっ」
お兄様がこんなに笑うのを初めて見たかもしれない。
(歯を見せて笑った顔もかわいいな?!)
「養父様と養母様もありがとう御座います。今日は本当に素晴らしいパーティーを開いていただいて、嬉しかったです」
私を抱き上げたまま、お母様達を振り返ってお礼を言うお兄様。
(いつ降ろしてくれるんだろ?永遠にここに居ても良いけども)
そんなアホなことを考えながら、降ろしてくれる気配がないので、お兄様の肩に手を落ち着ける。
「ええ。でもこちらこそ、ここ数日を楽しませて貰ったわ」
「ああ、来年も楽しみにしているよ。……さぁ、もうアメリアは寝る時間だね」
「では、僕はこのままアメリアを送って行きます」
(このままって……このまま?!)
「あぁ、我が家の天使を頼んだよ。さぁアリステア、私たちも行こうか」
「ええ。それではまた明日ね、二人とも」
そう言って二人も立ち上がったので、お休みなさいの挨拶をして、お父様とお母様を見送った。
「……お、お兄様?降ろさないと、腕が疲れてしまいますよ?」
「お姫様はそんな事気にしなくていいんだよ。それにふわふわで軽いから大丈夫。さあ、行こうか」
「ふぁっ!はい…!」
兄様は私のお尻を右腕に乗せ、左腕で私の背中を支える形で縦抱きしてくれているので、ドレスが引っ張られたりは無く快適だ。
お兄様は背が高い方だとは言え、150cmほどだろうに、案外力が強いのか、本当に私が軽いのか、安定感がある。
(私は今日からお兄様のお姫様で、ファイナルアンサー!)
お世辞を真に受ける天才である。
お兄様が歩き出したので、一体感を求めて、もう少しだけ体を寄せて掴まる。
ドアを開けて居るレイモンドに、一瞬片腕になって、先ほど受け取った招待状を預けると、そのまま私の部屋へと向かった。
アニーは斜め後ろをついて来ていて、ドアを閉めたレイモンドも続く。
(これはなんて言う天国?)
歩く人に抱っこされると、振動が心地よくて眠気を誘う。
お兄様から伝わる温もりと、掴まった肩からふわりと香るお兄様の良い匂いで……
(だ、だめだ……この天国を堪能したいのに……瞼が……)
自分の頭がカクンと揺らいだのを自覚すると、お兄様が「眠いみたいだね」と言って、私の後頭部を撫でながら自分の肩に私の頭を寄せた。
(おのれ…幼い体が寝ようとしてしまう……)
ちょっとだけ…と思いながら、お兄様の肩に頬を預けると、お兄様の首元は更なる天国だったので、瞼を閉じてしまった。
その後の事は、遠のく意識の向こう側。
ふわふわと宙を浮くような感覚と「おやすみアメリア」というお兄様の柔らかい声。
そして額に触れる柔らかい感触があったかな?くらいで曖昧だ。
とても良い気分で深い眠りについた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
瞼に光を感じて薄目を開ける。
とても気持ちの良い目覚めだった。
はて?どうやって帰って来たっけ?と思い返すと、お兄様の抱っこと「お休み」を聞いた覚えはあるので、抱っこされながら寝てしまったという結論に辿り着いた。
「ちくしょおおおお!」
(もっと抱っこならではの角度から、至近距離イケメンを堪能する予定だったのに!!この幼児の身体が憎いぃっ!)
朝一の第一声が、ちくしょうなどとは大分酷いが、寝起きならではの油断である。
アニーが来る前だった事が救いだ。
安眠し過ぎていつもより早く目が覚めたようだ。
そう言えば、お休みの声以外にも額を触られた感覚があった。
(もしかしたらイケメンにナデナデして貰ったかもしれないのに、朧げすぎる……勿体無い……)
そんな後悔に頭を抱えて居ると、ノックが聞こえてアニーが朝の準備に来た。
今日からはお兄様が朝食に来るはずなので、早起き出来たのはラッキーである。
朝の食堂に入ると、私が一番遅かった。
いつもより早起きしたところで、結局幼女はいつも重役出勤な時間に食堂に入る。
子供が一人で待たなくても良いように、少し遅めに設定されて居るのだ。
そして、ちゃんとお兄様は来てくれていた。
朝の眩い光を浴びるお兄様が神々しい。
いつも会えるのは午後以降だったので、朝日を浴びるお兄様を初めて見て感動した。
(ふ……、ふつくしいっ……)
「おはよう。私の天使」
「来たわね、お姫様。おはよう」
「おはよう。アメリア」
3人から向けられる目が優しくて、キュンとした。
「おはようございます!」
(おや?お兄様がいると、お父様の揉みくちゃ圧迫ハグがないだと?!)
お母様は「あら?」な顔をしてから、お兄様を見て、お父様をみたあと小さく「ふふっ」っと笑っていた。
それを見るに、お父様は、お兄様には格好つけたいのかもしれない。
(お父様って可愛いよね、いっつもお母様に見守られてるし)
こういう夫婦って良いなぁと思いながら、昨日と同じくお兄様の隣に座る。
長方形の大きなテーブルに、お父様が最奥で、斜め右側にお母様、お母様の対面に私たち兄妹という並びだ。
今後の定番の席になりそうだ。
「ユリシス。今月末の発現の祈りの儀式の日に、教会に行くので、そのつもりで居なさい」
「承知しました」
「お父様!私も一緒に行って良いですか?!教会を見てみたいです!」
(教会でのお兄様が見たいですっ!ステンドグラス絶対似合うから!……ステンドグラスが有るかは知らないけどもっ)
「ふむ…。家族同伴はどの家もして居るから、勿論良いよ。アメリアも来なさい」
「ありがとうございます!楽しみですね!お兄様っ」
同意を得ようとお兄様を覗き込むと、朝から大興奮の私を見守る優しい目とかち合って、少し恥ずかしくなる。
「ふふふっ。そうだね。」
(く……。25歳なのに、10歳に見守られて居る……)
大人気なかったけど、好きな事に興奮するのは多分オタクの習性だよねと自分を慰めた。
(TPOは意識できるはずだから、ヨシッ!!)
家族の前とミーナやアニーの前では取り繕うのを諦めた私である。
「お母様は癒しの魔法で、お父様は氷でしたよね?……お兄様はなんの魔法でしょうねー?早く教会へ行く日にならないかしらぁ……」
「そうだね。……僕はアメリアを守れる魔法がいいな…」
(な ん で す と? !)
「……お兄様が王子様過ぎてつらいです……」
「……大袈裟だよ、アメリア…」
兄ってこんなに妹を甘やかすものだっただろうか?と両手で顔を覆いながら考える。
日本の兄妹のイメージなんて、何なら邪険にしあってるイメージすらある。
「はっはっは!本当に仲がいいな、二人は」
「ふふふっ。兄弟喧嘩なんて無縁かもしれないわね」
お兄様が、特別性のお兄様なのか、貴族が上品だからなのかは分からないが、今後もこのベタ甘を享受していきたい。
(だだし、甘やかされてわがまま姫になってはいかん!)
そう心の中で固く誓った。
良くある悪役令嬢のようになってしまうのはダメである。
お兄様の魔法の特性が何になるのか、すごく楽しみだ。
早く魔法を使うお兄様を見てみたい。
初めて魔法を使う時は、絶対立ち会わせて貰うのだ!!
読んで頂き、ありがとうございます( ˊ̱˂˃ˋ̱ )
ブックマーク・☆評価・イイね!して頂けると、大変励みになります( ˘ω˘ )g
書け次第投稿していきますので、不定期更新ですが次回もよろしくお願いします(*´꒳`*)
 




