【第45話】私に刺さるものが多過ぎます
お待たせ致しました( ˘ω˘ )
額縁も届き、完全体になった王子様なお兄様の絵は、王城に飾りたい出来栄えだった。
「お嬢様、素晴らしい出来栄えに御座います!!王族の肖像画のようでは御座いませんか!!」
どうやらアニーには私がやりたかった事がまんま伝わったようで何よりである。
正直マジで額縁がお高かった。
(王族の肖像画の値打ちの数割りは額縁代説…あるで)
届くのが誕生日当日では危ないか?とは思いつつも、これだと言う額縁が間に合うだけで万々歳だった。
一応予備もあったが、お目当ての額縁で満足した。
お兄様とレイモンドはと言うと、上手くやっているようだ。稽古中は私が見学するベンチの後ろにアニーと控えて居るくらいなので、かなり何処にでも付き従って居るようで安心した。
出来る氷系イケメンである。
姉弟を背中に控えさせているのも謎のドヤ感があった。
謎だけど。
プレゼントよし、晩餐会場よし、持ち物よし!で、後はお兄様と合わせた服を着て最終準備を整えるだけなので、晩餐の時間までは、文字の読み書きの復習をしておいた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
始まりました!お兄様誕生日パーティー!
(ドンパフ!ドンチキ!)
私たち親子3人は事前の打ち合わせ通り、食堂の入り口を向いて待機して居る。
今日はドアからレッドカーペットが続いていて、お兄様はハリウッドスターみたいに歩いてくる算段である。
「ユリシス様がお着きです」
レイモンドの声がする。
「どうぞっ!」
期待に跳ねる私の声に、レイモンドがドアを開け、すぐ脇に控えこうべを垂れる。
そしてお兄様が優雅に歩いて来てレイモンドの前を通る。
「………あああああああああっ!!」
(イケメン主従ぅうぅうぅぅぅっ!!!!!)
ドサッ……
「「「?!………」」」
(………やっちまった……)
『ア、アメリア大丈夫?打ち合わせと違うわっ?!』
ヒソヒソ声でお母様が屈んで、私に耳打ちした。
何故屈んだかと言うと、私が両手で顔を覆って膝立ちに崩れ落ちていたからだ。
ミーナが崩れ落ちたのをリアクション大魔王とか思っていたのに、遂に自分もやってしまった…。
「ご、ごめんなさいっ!つい…」
崩落していた私は、シュッと立ち上がり、お父様とお母様に目配せしてから、仕切り直してみる。
「お兄様、「「「お誕生日おめでとう」」」
(揃ったあああっ!)
「!!……ありがとう御座います!……アメリア、膝は大丈夫なの?」
「はいっ!あまりの光景に感動し過ぎましたっ!とってもいい入場でした!!」
「ふ、普通に歩いて来たよね…?」
「尊かったです!」
「……うん?」
滾る私を、お兄様他家族は「しょうがないなぁ」の顔で見て居るが、レイモンドは相変わらず鉄面皮のノーリアクションである。
(なんでかゾクゾクするからやめてっ?!)
アホな自分を、イケメンに無関心な眼差しでヒンヤリ見られるのも悪くないな…なんて思ってしまった自分が怖い。
「それではお兄様!まずは晩餐にいたしましょうっ!お兄様は私とお父様の間の席です」
「うん。ありがとう」
それぞれが席に着くと、給仕がグラスにジュースとお酒を注いでくれる。
「オッホン!それでは、ユリシスの10歳の誕生日に」
「「おめでとう」ございますっ」
3人の唱和に照れくさそうに微笑みながら、グラスを掲げるお兄様。
(尊い…)
前回は、お互い髪色を洋服に、瞳の色を差し色にしていたが、今回は逆に瞳の色を洋服に、髪の色を差し色にしていた。
私はアイスブルーのドレス。
お兄様はシルバーグレーが複雑に紫色を帯びている、薄紫色の異世界テールコート。
単純な薄紫にしない事で、安っぽくならず、とても上品な仕上がりだ。
お母様のセンスが光った。
私はパールの装飾品を、お兄様はプラチナの台座にダイヤモンドが嵌め込まれた装飾品を身につけて居る。
私のアイスブルーのドレスは、金糸で刺繍されていて、お兄様の瞳の中の陽光のような煌めきを表現していて、とっても素敵なのである。
胸の下から広がるエンパイアドレスで、美幼女を妖精のように見せてくれていると思う。
そんなドレスで先程崩れ落ちてしまったわけだが、ドレスが無事だったので、セーフという事にしよう。
私も、家族揃ってパーティーができて幸せだが、何かウズウズして居るお父様も、そんなお父様を見守るお母様も、とても嬉しそう。
お兄様は少しだけ頬がポッと色づいていて、嬉し恥ずかし…といった様子だ。
「ユリシス、実は渡したい物があってだね…こ、これを受け取って欲しい!」
何かウズウズして居ると思ったが、お父様は緊張気味にお兄様に声をかけ、長方形の箱を従者に持って来させた。
「?!……ありがとう御座います!…開けても?」
「勿論だよ。私とアリステアからだよ。気にいるといいのだが……」
「10歳ですからね。……きっと似合うわ!」
(おお?!なんだろう!?似合うって事は装飾品?)
お兄様は丁寧にプレゼントを開けると、固まった。
見開かれた瞳は光をゆらりと反射していた。
「……杖、ですね?」
「ええ、そうよ。10歳から魔法が発現されるし、学園でも必要でしょう?…貴方らしい物を考えるのは、楽しかったわ。ねぇ、貴方」
「あぁ、ユリシスは剣術が出来るからね、特別な造りにしたんだ。杖の持ち手の境目から先が鞘になっていて、引き抜くと小さな細剣になっているんだ!かっこいいだろう?」
そう言われて、箱からそっと杖とやらを持ち上げるお兄様。
(杖って何だろう?10歳で魔法で杖って……魔法の杖?!)
お兄様が持ち上げたそれは、とても綺麗な光沢の銀色に近い白に、チカチカと光を弾く銀色の装飾がされた、とても美しい物だった。
タクトより少し長いくらいで、形はレイピアのようだ。
(なん…だと?中二病心に刺さりすぎる……)
持ち手と鞘の大部分が白、鞘の上下端は銀でアクセントになっていて、ナックルガードやら、その他の優美な曲線を描くガード部分も銀色だ。
(もう……かっこいいが過ぎる……)
細身の白い十字架のクロスした部分が、銀色の螺旋を描く曲線や、薄い帯状の円環で装飾された、おしゃれアイテムにも見える。
「か、かっこいい……!に、似合い過ぎます…お兄様……」
「アメリア…ありがとう。養父様、養母様…ありがとう御座います…!」
「本当に似合うなぁ…ユリシスの髪色に似ていて映えるね」
「私の目に狂いはなかったわっ!」
(流石お母様!いつでもセンスが半端ねえっす!!!)
「お兄様、ぬ、抜いてみてくださいませ!」
「う、うん」
シュリンッ…
「……!」
「はわああああああ!!!!」
(かっけえええええええっ!!)
鞘の中からは眩く光る銀色のブレードが出て来た。
小さいながらに、こんなに綺麗なレイピアで……しかも魔法の杖なのか……。
(オシャンティー過ぎない?!!)
アイスブルーの瞳に天上の白の髪のお兄様に、白と銀のレイピアとか、なんだかもう「ありがとう御座います」と言いたくなった。
(あれ?でも、お父様やお母様のは見た事がないぞ?)
「こんなに素晴らしいものを、ありがとう御座います。大切にします!」
「ああ。…魔法の杖を贈るのは、親の特権だからね」
「そうね。……お姉様達もきっとあちらで似合うって褒めていらっしゃるわ」
「っ…、はいっ……!」
なるほど…どうやら魔法の杖というのは、親から子へ贈る文化のある物なのだろう。
「お父様とお母様の杖は、普段は持っていないのですか?見た事がありません」
「そうだったかしら?杖はね、魔力の効率を助けるものだから、長時間魔法を使いたい時や、繊細な調節を必要とする時に使うのよ。屋敷にいる時は確かにあまり使わないわね。私は、実はいつも胸元に入れて居るのよ。ふふふっ」
(マジか、もしや谷間ですか?!……え?入る?!)
「ほら、これが私が父から頂いた杖だよ。普段は小さくできるから、懐にいれたり、ベルトに通したり…ペンダントにしている人も居るよ」
お父様は懐から、綺麗な白い杖のミニチュアを取り出した。
「こうして魔力を通すと……ほら、ユリシスのものと同じくらいの大きさになっただろう?」
「はわああ?!」
本当にファンタジーだった。
伸縮自在だなんて、よほど特別なものなのだ…。
だから親から子への大きなプレゼントなのかもしれない。
日常生活では、こんな魔法の機能がある道具は見た事がないから。
「ユリシスのものは、せっかくだから実寸大で渡したけれど、教会で儀式をしたら、自分の魔力で小さくできるよ。ケースにプラチナのチェーンが入って居るから、ペンダントにするなら、それを使いなさい」
「綺麗なのでペンダントに出来ますね。ありがたく使わせて頂きます」
お兄様はもうずっと「ありがとう」と言いっぱなしだが、それはそうだろう。
私も10歳が楽しみなくらいに、素敵な贈り物ではないか。
(私もファンタジーで中二病がしたいっ)
お父様とお母様のプレゼントのお披露目が終わったので、いざ次は私の番である。
「さぁ、お兄様!次は私からですよっ!変わり映えなく、絵なのですが、少し趣向を変えてみましたっ!」
実はずっとあったので、あるのはバレバレだが、大きな布が掛かっているので、絵が見えてはいなかったのだ。
「僕を描いてくれたの?」
「もちろんです!……じゃーーーん!!」
布を引っ張って剥がすと、王子様が威厳を持ってお目見えである。
「「「………」」」
「あ、あら?だめでしたか……?」
なんだか3人ともポカーンとしてるので、何か常識的にやってはいけない事をしたのかも知れない……。
(やらかしてたら、自室に飾ろっ)
「いや……アメリア…。私の天使は本当に神に愛されて居るのかもしれないね。歳を重ねた絵師にだって負けやしない出来じゃないか……」
「えぇ……。ユリシスだと分かるのだけれど、王族のようで、跪きたくなるような絵ね……」
「す……ごい……。こんな絵も描けるんだね……」
実は三割ぐらいは額縁さんが貫禄を演出してくれて居るのだが、褒められると嬉しい。
元プロではあるものの、褒められるのは、無限に受け付けて居る。
「そうですか?!お兄様って王子様みたいなので、王城に飾ってありそうな感じを目指したので、嬉しいですっ!」
「お、王子…様って、アメリアは、本当に……もう……。でも、ありがとう。いつか…アメリア自身の肖像画も欲しいなぁ……」
ぽそりとお兄様はリクエストしてくれたが、美幼女よりイケメンが描きたい。
「はぁ…私の…ですか?」
「お、王子様…の隣には、お姫様を並べたいよね?」
(ひええええええええっ!かわわっ!何それ、可愛い!)
自分で自分を王子様と言う羞恥に耐えながら頼まれては、頷かざるを得ない。
「わ、分かりました!そういう事でしたら、描いてみますね!」
「王子様と王女様の絵が並ぶのが楽しみね?アメリア、頑張ってちょうだい」
「出来上がったら並べて見せておくれ」
「……頑張ります!」
こうして、プレゼントお披露目会は大成功に終わった。
実は、もう一つ渡すものがあるが、これは誕生日ケーキを食べて、帰る前の最後のお楽しみである。
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