第五話 私ぐらいのイケメンです
「社長、ただいま戻りました」
ファスト領警備隊の本部。そこは、領地を納める貴族の邸宅より正面にたてられた、三階建ての建物。
日本のビルのような作りであるはずはなく、全体がレンガ造りの建物だ。
シュウも言っていたように珍しく、この領地では、ギルドと警備隊本部、貴族の邸宅くらいのものである。
もっとも、一般宅でもレンガが使われている家はあるが。
そんな本部のなかで、先ほどシュウとルファの宿泊する宿から戻った男、アルトは三階社長室へと入った。
「よく帰ってこれたわね。どう?魔王についての情報は?」
低い声の女性が問う。長い黒髪は美しく、大きな胸が揺れている。
「旅館を経営する婦人に部屋へ案内していただき、対象と接触。男女二人組でした。私がいくつか質問をしましたが、確信に迫る情報は得られませんでした」
「そう」
「ですが……これは私の感になりますが、あの二人なにか隠していることがあると思います。男の方の驚き様には少し違和感を覚えます」
「へえ。なら、その男どれくらいの歳?イケメンなのかしら?」
「歳は十代後半。顔は、まぁ私ぐらいのイケメンです」
「なんだ、ブスじゃない。放っといていいわその男。せめて魔王はイケメンであることを願いましょう」
「社長!?仮に本物なら魔王を放置して良いわけがなんたら。そもそも私イケメンなのでなんたら」
抗議するように喋るアルトを一度睨んで掌握し、彼女は声をあげた。
「私を誰だと思っているの?ファスト領警備隊の社長ウリエよ。警備隊の社長なのよ、戦うならあなたより強いわ」
アルトは呆気にとられているようだった。自分は責められているのだろうか?自由に見えるウリエの前では、それさえも曖昧になって分からず、失礼しますで部屋を出た。
ーー金髪、角ぶち眼鏡のアルトは実際そこそこイケメンなのであるが……全てはウリエの好みのままにという訳だ。
「いいですか魔王様。魔法というのは主に七種類の属性でできていて、火、水、風、土、雷、白、黒、の七属性になります。これらは個体によって適正が異なり、例えば私であれば火属性になります」
「ウンウンナルホド」
いくら異世界の魔法の説明とはいえ、実は初日に仲良くなれたガイムスから一通り聞いているのだ。何気にあいつの教え方が上手かったせいで記憶に残っている。
しかし今聞いているのは、今回の件で学んだように今の世界じゃ悪魔が本来の力を出すことが厳しいから、俺が戦えるようになるためだ。だが俺には適正がないっ!
なので俺がするのは、できろモードのルファをかわいいなぁと眺めるくらいなのだ。
「また、魔王様が使う召喚魔法だったりは特殊魔法と言いますね。特殊と言っても、こちらが適正無く誰にでも使える魔法となります。召喚魔法の他には、強化魔法、回復魔法、生成魔法、空間魔法、調教魔法などがありますね。適正がないと言っても、得手不得手はありますね」
はぁ、俺には適正も糞もなく、得手も不得手もなく、召喚しかできないんだけどね。
何度考えても悲しくなる事実だ。
「魔王様は召喚魔法しか使えないと、他の魔法には一切の適正がないと聞きましたが、なぜでしょうかね?」
「あぁ、その事なんだけど……」
別にルファには話してもいいと思う。だから俺が異世界人であること、神にどうにかされたことを話した。
「っていうことなんだよね。おのれ神め許すまじ……」
この言葉に、ルファがピクリと反応した。
え、まずかった?もう関わらないで下さいとか言われるのか?
「神、ですか。」
「ごめんルファ!悪気は無かったんだ!俺はルファのこと大切にするし!?実質、私を召喚したのはあなたじゃないじゃないですかとか言わないでくれ!?」
「いえ、とんでもありません。私を召喚したのは紛れもなく魔王様でしょう?
ただ少し、以前人類と戦っていた時に神がいきなり人類側について辛かったなぁと思い出しただけですので」
「なる、ほど?」
ふむ。今度以前のルファについても聞いてみようと思う。
なにか参考になることがあるかも知れないが、少し興味があるという方がでかい。
一通りルファの講習を受け終えると、時刻は昼を回っていた。
「昼ご飯食べて、練習にするか!」
「了解しました魔王様!」
あ、
「……」
「どうしました?」
「お金、もうほとんどない……」
「……」
「おい!?なんで脱ぎ出す!?」
「私を美味しくいただいてください!」
「食べないよ!?ていうかそれって比喩だよね!え、え、エッチなやつ……」
「はい……照れる魔王様も素敵ですぅ」
ルファは俺のことをどう思ってるのだろうか……。
今回も俺は童貞を守ったようだ。あぁ、早く卒業したいのに……
色々ありまして。ただいまいるのは村近くの森でございます。
狩るなり採集なりして腹を膨らませつつ、俺の訓練もしようと決まった。……俺が決めた。
だってルファ期待して待っちゃってるんだよ!?
……もう少しムードを下さいと言うことで辞退させていただきまして、ここへ来ることを決めました。
もうっ、シュウの意気地無し!
と、そこへ、ルファの声が聞こえた。
「シュウ様!そっちにボアがいきました!」
「まかせろっ!」
ルファに終われてこちらへボアが逃げてくる。かなりの速度だが、俺も実は慣れているのだ。
転生したばかりの頃は、あまり危険のないこの手のクエストばかり受けていたからな!ははは!
狙いを定めて、右手で突く。見事ど真中!とはいかないものの、一撃で仕留めることができた。
振り下ろすよりも突く方が簡単らしいのだ。色々聞いてためしていったが、確かにこれが一番いい。
「流石シュウ様!お見事でございます!……シュウ様の剣技初めて見たかっこいい、はぁはぁ……」
「ストーップ!ふぅ、こいつそこそこ大きいし、今日はこれで夜までもつんじゃないか?」
「そうですね……。折角ここまで来たのはありますが、宿に戻ってしまいましょう。召喚の練習は部屋でもできます」
うん。少しずつルファに慣れてきている……はずだ。
彼女はできる子なのだから、すこーしイケナイ感じの顔になってきたらやることを与えればいいのだろうか。
もう少しいい方法があるともっといいのだが、そこはおいおいだろう。
……まだヤることはあたえられませんっ!
ありがとうございます
感想誤字意見によろこびます




