第四話 おい田中ってやつ
ゴクリ、唾を飲む音が聞こえた。
これは俺のものだ。
目の前に居るのは湯浴みを終え、やや濡れた肌が見えるルファ。
今の俺達は寝巻きに着替えた状態だ。
ルファが着ているのは白い服。ゆったりとした形で、胸元に付いた淡いピンクのリボンは揺れている。
彼女は二つあるベッドの内の一つに腰掛けると、顔を赤らめ俺に話しかけてる。
「・・・・・・魔王様。準備は整いました」
「お、おう」
そう言って、彼女は上から脱ぎ始める
ナニが起きてしまうのか、この状況には理由があるのだ。
〜〜〜
「これは広い部屋だなぁ」
「そうですか?魔王様には小さすぎる気もしますが」
ルファとの雑談で時間を潰し、夕食を終えた俺達は部屋に来ていた。
おもてなしと言われていたように、食事はどれも美味しく、沢山の量が出てきた為にお腹いっぱいだ。
悪魔の食事は心配したが、ルファも食べていたので安心した。
俺達に渡された鍵の部屋は二階の一番奥。シングルベッドが二つに小さな机まで設置されているこの部屋は、いつもの寝所と比べてば雲泥の差がある。
──ちなみにルファが『魔王様』と呼ぶのは二人だから問題無いだろうと譲らなかったからだ。
少し照れくさいが、ちょっと嬉しかったりもする。
「この宿は風呂があるらしいがルファはどうする?」
「私は遠慮させていただきます。特に気にすることも無い上、魔王様を待たせる訳にはいきません」
「気にしなくていいぞ。ほら、女の子は体は綺麗な方がいいだろ?」
俺の歳を優に超えるであろう悪魔を女の子と呼ぶのには少し疑問があったが、見た目の問題だ。どこから見ても同い歳ほど少女だ。
さて、この言葉が問題だったんだ。
俺が言った時、ルファは何かを察したような顔をして言った。
「申し訳ありません魔王様。魔王様の事を考えておりませんでした。直ぐに体を清めてまいります故、申し訳ありませんがお待ちいただけますでしょうか?」
対する俺の反応もいけなかったのだろう。ただ、肯定してしまったのだ。宿に入った時に気にしていた事を忘れていたのは、夕食からの満足感だろうか。
「おう。分かった」
「勿論、このままが良いと言うのであれば留まりますが?」
ここで疑問を持つべきだったのだ。なのに俺は何も気にとめず、ゆっくりしてくれと言ってしまった。
まぁ、咄嗟に特殊性癖言えるほど大人じゃなかったんですねボク。
俺もルファと一緒に風呂へ向かったが、男女で風呂は分かれている。
途中、受付の恰幅いいおばちゃんから寝巻きを借りたので、それを持って風呂へと進む。
俺は風呂に、三十分ほど浸かってしまった。
直ぐに部屋に向かったが、部屋に入ると既にルファが居たのだ。
彼女は俺の為に素早く上がったのだと言う。
ベッドに腰掛けるルファを見て、俺はようやく全てが繋がった。
・・・・・・いや、まだ物理的に繋がってないよとかツッコミつつ。
ルファの少し紅潮した顔は風呂上がり故か、照れがあるのか。
俺はそこまで鈍感じゃなかったのだ。だからこそ気付いてしまった。今からルファがしようとしている事に。
〜〜〜
「そして今です。俺は悩んでいます。
目の前の美少女はベッドに腰掛け優しく微笑んでいる。
どうしますか
A、襲う
B、寝る
……できるかぁ!高三童貞をなめるなぁ!
周りのリア充共がプンプンさせてようが、なにも言えないんだぞ!?
からかい目的でクラスのブスとおれをヤらせようとしたの知ってるんだぞ!リア充に近づかれたら、そうっすね!しか言えねぇんだよ!どれだけびびったと思ってるんだ!?
今まで一緒にいたくせに彼女できて垢抜けやがったやつになにも言えないんだぞ!?
一回こっちに来たと思ったら、「お前はまだ女を知らないんだよな」だとぉ?ふざけんなぁぁぁぁぁ!
おい田中裏切りやがって!
やーい別れろーー!」
ということを脳内でひとしきりやった結果、俺はルファに告げた。
「すまんルファ!俺にはまだ無理だっ!」
「大丈夫です魔王様。行きなり魔王様が話し出したことを聞いていれば、悩んでいることが分かります!」
え?この子なんて?
いきなり話し出した?なにを?
もしかしてあれ?
おい田中!ってやつ?
あ、俺死んだ。
さようならルファ。探さないでください。
「魔王様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
もう俺お嫁にいけない!
「これは……キスで起こすしかないのでは?」
「起きたよおはようっ!」
あぶねぇ。こんな美少女にキスされてたらまじで意識飛んでただろうな現実をみるしかないよね!
「とりあえずルファ、服を着てくれっ!?」
「かしこまりました……」
えぇ、納得している風なのにそんな悲しそうな顔しないでぇ……
一夜明けましておはようございます。
昨日は良く眠れたでしょうか。俺は全くでした。
寝る前にあんなもの見てスヤスヤ眠れるだろうか。俺には無理でした。
今までは忙しくて気にしてなかったけど、この世界にティッシュが無いのは死活問題ではないか?
紙は何度も目にしてるがティッシュは見てきていない。世の男性がたはどうしているのだろうか……
おかげで何度トイレへ向かったか。ちなみにトイレットペーパーもないよ!世の女性がたはそれでいいのか……
「お早うございます魔王様。私昨夜は寝付けなかったもので」
「俺もだよ……今日はゆっくりしてからゴブリン討伐にいこう」
まだ具体的な魔法対策もないのにどうするべきか、頭を抱えるしかない。
「ところで魔王様、夜中何度かトイレに行っていたようですが、お体は大丈夫でしょうか?」
「その事か。俺は元気だ、むしろ有り余っている。だから気にしないでくれ」
「はっ、そう言うことでしたか。意図を汲み取れず、申し訳ございません!」
「察された!?あぁ世の男性がたはそうしてるのか」
いまだルファを見ると裸がちらつき落ち着くこともできない。
だが、俺達のまったりした空気感を壊しに来る来客があったのだ。
ドンドンドンとノックが三回。どうぞというと、入ってきたのは各ぶちメガネのダンディー。
「シュウ君とルファさんだね?私はファスト領警備の者だ。少しお話を伺いたい」
いきなりの来客に、否が応でも頭を使わせられる。しかし警察みたいな人もいるんだなぁとか思いつつ、俺は答えた。
「俺がシュウです、けど。なんの話でしょうか?」
「昨夜この部屋で「魔王様ぁぁぁぁぁ!!」のような声を聞いたとこちらのご婦人から通報があったのですが、魔王について、なにか知ってることがあるのでしたら、あなたには話す義務がありますので」
驚いた。これほどまでに、キモいとは……いきなりこのダンディー裏声で魔王様とか言いましたよ!?
キモい、キモすぎる。
ルファに魔王様って読んでもらって耳をなおしたいなぁ。
しかし今はそんな場合ではなさそうだ。
この警備の人が紹介したのは受付のおばちゃんだ。いい時間だったし、見回りでもしていたのだろう。
「魔王様……」
「!?」
え、やめてルファ!?今度は意図を汲み取りましたよえへみたいなそんなことしないでね!?
と思っていたのだが、杞憂だったようだ。
「魔王様、そう言ったのは私で間違いありません。昨夜、彼と今後について話し合っていたところ、魔王討伐が目標と言ったので少し驚いてしまい……様をつけたのもその時の流れですゆえ、周りへの配慮が足りず、申し訳ございませんでした」
「では、あなた方が魔王について知っていることは?」
「これといったものは……私達も昨日ギルドで噂を耳にしただけのものですから……」
「そうか、ご協力感謝する」
警備の人は俺を一度睨んでから部屋を出た。
なんだったんだ!?今のルファは!?
昨日のルファからは全く想像できない。さっきまであんなに眠そうな顔だったのに、キリと開かれた目が凄くかっこ良くなっている。
流石のできる悪魔だ。魔王交代した方がいいんじゃないか?
なんてルファを尊敬の目でみていたのだが、彼女には大したこと無いらしい。
更に俺に頭を下げて言った。
「申し訳ございません魔王様。魔王様のことを彼だなんて呼んでしまい……」
「い、いや、気にしなくていいんだぞっ?」
あっけらかんと言うルファに、思わず焦ってしまった。今の俺は相当驚いているようだ。
だが、極めつけに彼女は言った。こんなギャップに耐えられるわけない
「今度は意図を汲み取れましたよ?」
そう言って微笑む
そう言って「えへ」と付け足す彼女は天使のような美しさであり可愛らしくもあった。
……悪魔だけど。
本日も呼んでいただきありがとうございます。
感想・意見・誤字など教えてくださると嬉しいです。
前々の回に修正がかなーり入ってますのでよろしくおねがいします
いやぁ、えちえち描写を練習せねば。
メイン二人の性格もしゃべり方も掴みきれておらずすみません。
暖かい目でお願いします
最後になりますが、全国の田中様すみません笑
日本一多い苗字=田中だとパッと浮かんだだけです
故意はないことを言っておきます




