模擬戦の誘い
適当な広さの場所に来た俺とグランは魔法の練習を始めた。
「練習って言っても何すりゃいいんだ?魔法を撃ってればいいのか?なあレイジ、的になってくれよ!」
「いやに決まってんだろ。もし魔法を撃ちたいなら向こうにある的打ちに行ってこい」
俺はとある方向を指差した。そこには簡易に作られた的があり、そこに多くの生徒が並んでいた。全員見たことない奴らだからSクラスだな。
「うげ……あんなに人が、それにSクラスの奴しかいないじゃないか!嫌だぜあんなの!」
俺も嫌だ。でもダラダラしてるわけにはいかねぇよな。ロイド先生みたいになりたくねえし。
「しょうがねえ、基礎練習でもするか。おいグランお前もやるか?」
「基礎練習?魔力操作の特訓かよ、嫌だぜ!授業終わるまで瞑想するなんてよ!」
ああそういえば一般的な練習は瞑想だったな。確か自分の中に流れる魔力を感じ取り、それを動かしたりするってやつだったか?
「いや、今からするのはそんなつまんねえもんじゃねえよ」
俺は両手を出して、その上に一つずつ魔力のボールを出す。
「おお、それって魔力か!?目に見えるなんて凄えなぁ!」
……しまった、いつものように魔力だけでしてしまった。本来魔力は目視するのが難しいから、属性を付加して目視できるようにしなければならないんだが。
まぁ、過ぎてしまったことは仕方ない。
とりあえず魔力のボールを少しずつ圧縮し手の平大の大きさにするとそれを使ってジャグリングを始める。途中から一つ増やして3つで続ける。
これはサーシャさんに教えてもらった魔力操作の方法で、瞑想のように魔力だけを意識して操作するよりも動きが入る分、より効率的に魔力操作を向上させることができるらしい。
ジャグリングしてる最中、ボールのサイズを変更すればなお良いらしい。サイズ変更がスムーズに出来るようになれば、魔力操作のレベルはかなり高くなってるはずと言っていた。
「よっ!ほっ!」
一度始めると集中してしまうせいか、やめどきを見失ってしまった。さっきからグランが「すげえぜレイジ!」ど騒いでいるためか次第に周りからの視線も多くなったように感じる。……マジでどしよう。
「ちょっといいだろうか?」
声をかけられて俺はジャグリングをやめる。助かった。声をかけてきたやつありがとう。そいつの顔を見ようと振り向くと、そこには土の六貴族、オルト=バグナスがいた。
なんでお前が?
……ああ、フィラからなんか聞いたのか?
お前は昔から気になることは自分で確かめようとするからな。それに無駄に勘が良かったからな。
ため息を吐いた後、俺はオルトに尋ねた。
「土の六貴族様が何のようだ?」
「いや、面白いことをしていたからつい声をかけてしまったんだよ」
少しだけ微笑みながら言うオルト。周りから小さく黄色い声が聞こえてきた。イケメンめ。
「そうか」
俺はそれだけ答えるとオルトから離れようとした。しかし俺が歩き出す前にオルトが話しかけてきた。
「せっかくだし模擬戦でもしないかい?練習も実践に近い方がいいんじゃないかい?」
模擬戦だって?そんなのごめんだ。こちとら極力お前ら六貴族との接触を避けてんだからな。
「悪いが断ーー」
「オルト様、わざわざ貴方がやらなくても良いではありませんか」
おい誰だよ。最後まで喋らせろよ。
俺とオルトとの会話に割って入ってきたのはいかにもオツムが弱そうな金髪だった。
「えっと貴方は……バーバルさんでしたか?」
「ダルクで構いませんよオルト様」
バーバル?どっかで聞いたことがあるが……思い出せない。まぁいいか、思い出せないってことはそんなに重要なことじゃねえだろうし。
「オルト様は先ほどから奇妙なことをしていたこの平民が目障りだったのですよね?だから模擬戦で身の程をわきまえさせようとのお考えでしたのでしょう。ならばわざわざ貴方がしなくても、このダルクが代わりに行いますよ」
「ちょっと待てよ!俺はするなんて言ってねえぞ!」
「そんなことは一言も言ってないですよ!」
俺とオルトの言葉は聞こえているはずだが、それを無視してバーバルはSクラスの担任のところへ向かった。
「おいレイジ!バーバルって言ったら魔法で有名なとこだぞ!そんな奴と戦うのか!?あぶねぇよ!」
グランがそばで騒いでいるのを見ながら俺は、バーバルって聞いたことあったけどその事だったのかと思い出していた。
まぁそんなことどうでもいいが、なんでこんな面倒なことをしなくちゃいけないんだよ。
俺は責めるような視線をオルトに向けた。その事に気付いたオルトは申し訳なさそうに苦笑いをしていた。




