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死球(DEADBALL)〜同じ悪夢を見る者たち〜  作者: Mr.ランジェリー


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35/42

第35話 夢の続きを

【現世】


「朝、目を覚ますと、窓が泣いていた。   

 

 テレビから、次々と友達の名前が流れる。


 また……ぼくのせいだ……。


 皆で写真を撮る事も出来なかった…


 皆の夢を、僕が奪った…」



父が読み終えたとき、

部屋に残ったのは沈黙ではなかった。


“何かがぽっかり抜け落ちたあとの余白”


線香の煙が、細く揺れながら天井へ昇っていく。


その穏やかな曲線だけが、時間の流れを教えてくれていた。


父はそっと日記を閉じ、

しばらく目を伏せたまま、動かなかった。


言葉を探しているのではない。


胸の奥に沈んだ痛みと向き合っているように見えた。


その沈黙を破るように、中邑がゆっくりと口を開いた。


「……お父さん。

 夢の中で……

 僕たちの光景は、見えていたんですか?」


父は顔を上げず、

静かに遺影の方へ視線を向けた。


まるでそこにいる誰かの許しを求めるように――

その口元は、僅かに震えていた。


「……いいえ。」


かすれた声が、床に落ちる。


「私も、陸斗の日記と同じです。

 日常の中で、突然あなたたちのニュースが流れて 

 きただけ……。


 おそらく…  "全て"を見ていたのは陸斗だけで 

 す。」


その瞬間、蝋燭の炎が揺れた。


部屋の空気が音もなく沈みこんだ。


誰かの息すら、吸い込んでしまうような深い沈黙。


お父さんは両手を膝に置き、

穏やかとも、苦しいともつかない声で続けた。


「真壁さん。本間さん。

 今の話…

 聞かないほうが良かったですか?」


本間が口を開きそうになった時、真壁がスッと立ち上がった。

そして、力強い声で


「お聞き出来て良かったです。

 私も最近、この夢をよく見るようになってから、

 残った生徒や家族がこの後どうなったのか心配

 でした。

 おそらく、事の発端は…

 いいえ、続けて下さい」


真壁は深く頭を下げ、席についた。

父は肩の力を抜いて真っすぐ前を見た。


「……では、これからお話しするのは――

 私、妻、陸斗、海斗。

 そして…上谷さんの話になります。」


その言葉は、今までのどんな話よりも重たかった。


同時に、

最後の物語の扉を、静かに開いていた。


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