第32話 信じた春
柴田輝基
闇に照らされた冬を駆け抜ける
年が明け、手元には不自然な額の金が残っていた。
いつまでもこんな事をしてていいのか?
葛藤が毎日、俺を責める。
でも、気持ちに余裕が出来たのか、親とも仲良く話すようになって、何処か充実していた。
岡田たちは上手くやってるのか、学校に残ったヤツらのラインを開いては、何もうてずに閉じていた。
陸斗の病院にも何度か行った。
結局、顔を合わせる勇気もなく、弟が来るのを待って、差し入れを渡す日が続いていた。
そしてーー
中邑がいつもより早く迎えに来た。
顔を合わせた瞬間、2人の口から同時に
「あのさ…」
「何だよ。気持ちわりぃーな。中邑から言えよ。」
「柴田。
俺、春になったらさ…」
「偶然だな、俺もそう思ってたんだ。」
俺の笑顔につられ、中邑も微笑んだ。
俺達に言葉はいらない。
1つのライターでお互いのタバコに火をつけた。
「中邑。俺、春になったら東京に行って、タレント
目指そうと思うんだ。」
「俺は知り合いの居酒屋で働こうと思ってな。
いつか、自分の店持って。
有名になったら、毎日来いよ。」
「じゃあ、有名人来店1号は俺だな?
サイン書いてやるよ!」
「陸斗…
病院食飽きただろうからさ、たまに何か作って
持って行ってやりてーんだ」
「中邑…
お前、そんないい奴だったっけ?」
「うるせーよ!
……。
でも、お前ならなれるよ。
色んな特技あるし、アンテナが凄いからな」
「……。
ありがとう。
明日、陸斗のとこ行こーぜ」
「そうだな。元気もらいに行くか?」
夢に花を咲かせ、俺達は今日も仕事に向かった。
「コンビニ寄って行こうぜ。」
その時は、まだ春が来ると信じていた…
俺も、コイツも…
そう言って今日も打席に向かった…
それが、最終打席とも知らずに…




