第28話 魂の点呼
【現世】
「翌日。
あの衝撃が、まだ体のどこかでうずいている。
気づけば朝になり、看護師さんが朝食を置いてい
った。
あれから、何も喉を通らない。
涙も一粒も出なかった。
テレビをつける。
また学校の映像。
監督と校長の名前が、薄い空気を震わせて耳に触
れた。
“謝罪か”――そう思った。
その直後だった。
聞きたくなかった言葉。
心臓の奥まで届く、鋭い響き。
――自殺?!
誰が?
なぜ?
思考が止まり、心が追いつかない。
気づけば、大切な人がまた二人いなくなっていた。
ーー僕のせいだ
この日の夢は、いつもここで途切れた。
そして、この夢も2人の視点で見てしまった…」
読み終えた父は、日記を伏せて窓際へ歩いた。
窓を静かに開けると、線香の煙が揺れ、細く漂っていった。
しばらく外を見つめたのち、父は振り返り、静かに言った。
「……真壁校長、本間先生。
お二人は、あの事件の当日と翌日、自ら命を絶たれたの
ですね?」
二人は、逃げ場のない目でゆっくりとうなずいた。
立ち上がろうとした真壁に、父が声を掛けた。
「校長先生。どちらへ?」
真壁は崩れ落ちた表情で、かすれる声を絞り出した。
「……もう、これ以上は……。」
父の声が、震えを帯びながらも強くなった。
「――聞くべきです。
前世であなた方は、家族も、生徒も、皆置き去
りにしてしまった。
“生き方”を教える立場の者が、自らその道を閉ざ
した。
あなた達が逃げなければ……
残された13名は、立ち上がれていたかもしれな
い。
夢の中で二人のニュースを見た時、私は強い怒り
を覚えました。
それは、悲しみよりも先に来た怒りでした。
私より長く人生を歩んできたあなた達が
――どうして逃げたのか、と。
だからせめて、現世では逃げずに、
この子たちの最期を聞き届けてあげて下さい。」
真壁は濡れたタオルで顔を拭き、深く息を吸った。
「……すみませんでした。
もしかして、この子たちは……私のせいで……。」
重い沈黙が落ちた。
父はゆっくり頭を下げた。
「いえ……私こそ。
ただ、まだこの先で……
どうか、前世の陸斗の最期も――
聞き届けてあげて下さい。」
白い灯りが揺れ、部屋に張りつめた空気が満ちる。
父は祭壇に戻り、日記を手に取った。
まるで魂の点呼を取るように、場は静寂に包まれた。
「それでは……
中邑さん、柴田さんを含む十三名の皆さん。
あなたたちの夢を、読ませて頂きます……」
13名は強く目を閉じた
誰一人、息をする音すら聞こえなかった。




