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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第11章 同じ空の下で

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第216話 解かれる封印

「ふんふふーん」


 順調に採集も終わり、あとは帰るだけ。

 私の足取りはとても軽かった。

 すると、そんな私の首根っこをレオンが引っ張り投げ、キアネアちゃんがナイスキャッチ!


「ちょっと! ……え?」


 レオンの前には身の丈五メートル。

 とぐろを入れると倍はありそうな蛇が、チロチロと細い舌を出し入れし、こちらを見下ろしていた。


「ちっ、地の主(ルートサーペント)だと? なぜこんなところに!」


 レオンは腰から二本の長剣を抜き放ち、キアネアちゃんもナイフを構えて私の前に立つ。

 愉快なピクニックが一気に戦場へと場面を変えた。

 そして、その初手は地の主(ルートサーペント)からだった。


 ブォンという空気を震わす音が鳴ると、地の主(ルートサーペント)の周囲に人の頭ほどの土の塊が十個以上出現した。

 ブゥン!という音とともに土塊がこちらへと降り注ぐ。

 私はキアネアちゃんに抱えられる。

 私たちよりも近場のレオンに多く飛んだため、キアネアちゃんの一回の跳躍だけでかわすことが出来た。


 ドゥン、ドゥン!

 外れた塊は地面をえぐり、止まった頃には約半分ほどが土に埋まっている。

 あれを頭にでも食らったら……。

 ブルルルっ。

 考えないようにしよう。


 しかしレオンもまた土塊発射と同時に地の主(ルートサーペント)のとぐろへ駆け抜け、鎌首の根本を二本の剣で切り裂いていく。

 ブシュッと言う音に合わせて緑色の液体が舞うが、向こうに取り立てて慌てた様子はない。


「セレナ、火魔法は使うなよ。火事になる!」


 レオンの指示に「分かった!」と叫び返すも、私が打てる具体的な手立てが思いつかない。

 キアネアちゃんも私を守るためにこの場にいるしかないが、あのナイフの短さでは、あまり有効打は与えられなさそう。

 つまりこの場の攻撃力はレオンに任せるしかないんだけど……。


 うまくレオンが誘導してくれてるので、土塊は最初の一発以外こちらへは飛んでこない。

 だがレオンの剣もほとんど効いた様子がない。

 まるで大きな紙を切るのに、針でつついてるようなものだ。

 あと何回、何十回切れば届くのか。

 戦況はあっという間に膠着状態に陥った。


(セレナっ!)

(澪!?)

(蛇ならもしかしたら寒さに弱いかも。マリーナちゃんとの実験で使った、アレなら!)

(そうか!)


 私はキアネアちゃんに降ろしてもらい、両手に魔力を溜め始める。

 幸い、季節は冬。

 まだ扱いやすい時期だ。

 レオンが足元にいる。

 頭を狙えば!


「『白銀の嵐!(プロケッラニクス)』」


 両手から雪が生まれ、吹雪となって、地の主(ルートサーペント)の頭を狙い撃つ。

 単なる雪なので殺傷力はない。

 けど、これで動きが鈍ってくれたら、レオンが動ける。

 動けるなら、アイツなら、きっと!


 突然の大雪に一瞬気を取られたレオンだったが、こちらを見てニヤッと笑い、再び鎌首の根元へ。

 地の主(ルートサーペント)は目標を見失ったように右に左に振り向くが、心なしか動きが緩慢になっている気がする。

 レオンもここぞとばかりに、駆け抜ける一撃ではなく、二つの長剣を一つにまとめて叩き込む荒業を見せた。

 今度こそザシュッ! という音とともに大量に吹き出す液体。

 地の主(ルートサーペント)が初めて「グワォォォ!」と叫びを放つ。


 この好機を逃すまいとレオンが再度剣を振り上げると、その瞬間、地の主(ルートサーペント)がもたげていた鎌首を直下に降りて、レオンに向けて大きく口を開く。


「レオン!!」


 ガキッ!という音。

 レオンはすんでのところで剣を横にして牙の一撃を防いだが、明らかに分が悪すぎる。

 レオンの上には、半分になったとはいえ、およそ人二人分の高さの重量がかかっている。

 私は、鎌首が消えた空間から修正し、途中の胴体に雪を当てる。

 ダメだ、これじゃあ。

 動きなんか鈍くなっても関係ない。

 クソっ、どうしたら……。


「クウッ!」


 レオンが重さに耐えきれず、片膝を突く。

 食いしばった口からは一筋の血が流れた。


「ああっ!!」


 まずい、まずいっ!

 レオンが死んじゃう!!

 どうにか。


(澪! なんかないっ!?)


 しかし返事はない。

 きっと考えてくれている。

 けど、難しいのだろう。


「ガハッ!」


 レオンが血を吐く。

 もう剣を肩に担ぐようにして、ギリギリ防いでるだけの状態だ。


 ……やめ、て。


 レオンの苦悶の表情から目が離せない。

 あと少し天秤が傾けば。

 ……死ぬ。


 死ぬ?

 レオンが?

 あなた、結婚とか未来の話、してたよね?

 早すぎるって言ってたけど、ちょっとは嬉しかったんだよ?

 ねぇ、置いてくの? 私を。

 やめて。

 置いて、行かないで。

 もう、嫌なの。

 誰かを……失いそうになるのは!


「あああぁぁぁっっ!!」

(セレナ! 待って、落ち着い……きゃっ!)


 アレを殺せる方法。

 出てこい、今すぐ!

 連れて行かせるか。

 行かせて、たまるもんか!!


 ガチャン!!


 人生三度目になるこの音。

 今日は痛みなんか感じなかった。

 ただ、熱を持った目が、最適解を導いていく。

 私の魔力で出来ること、その中で最大限の威力をそのままヤツにぶつける方法。


「コレか!」


 ギュィィィン!

 異音を立てて私の両手に瞬時に最大魔力が溜まる。

 その手のひらを合わせ、私はヤツを斬りつけるように、横へ振り払った!


風刃剣!!(エンシス・ウェンティ)


 次の瞬間、ザブッ!! という鈍い音。

 そしてレオンの上方で力を込めていた地の主(ルートサーペント)の首が、横一線に真っ二つに裂けていく。

 バランスを崩したレオンは転んでしまったが、続いて落ちてきた地の主(ルートサーペント)の残骸に驚愕の表情を浮かべる。


 ジュク……。

 私は目から流れ落ちた熱い何かが伝う感触を最後に、気を失った。


 『風刃剣エンシス・ウェンティ』は、周りの人間は軌跡が見えない(魔力を見ようとしない限り)ので、暗殺にぴったりな、危ない魔法だったりします(^^;


次回、第217話「力の代償」


 ちょっとシリアスシーンでしたから、次回はキョトン……シーンから。でもお話はまだ重みを残してますよ。

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