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笑顔を創る魔導具師セレナは、今日も世界をつないでいる  作者: 八坂 葵
第11章 同じ空の下で

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第211話 夢のある魔導具

『卒業課題発表会』も終わり、三年生のクラスはとても緩みきっていた。

 なにせ課題を全員クリアということは、卒業が確定したということ。

 残りの授業はもはや消化試合でしかない。


 授業をしていても上の空、いつもよりも多いコソコソ話、ひどいのになると思いっきり寝てる者まで。

 ……ねえねえ、卒業時の成績ヒドくなってもしらないよ?


 そんな中、あの陰険メガネ(レオニスせんせー)が悪い笑みを見せた。


「お前達、卒業が決まってかなり余裕のようだな。俺から一つ課題を出してやろう」


 あの発表会の日で素がバレた先生は、もはや研究室と態度が同じだ。

 ティミナたちの話では、二年生のクラスではまだ猫を被っているようなので、卒業までにバラしてやろうと思ってる。


 で、もちろんあとはのんびり過ごせると思ってたみんなからは、不満の声が上がる。

 中にはあからさまに机に突っ伏したり、天井をを見上げる者も。


「まあそうだろう。なので、タダでやれとは言わん。ちょうどこの前黎明祭(プリマルクス)の話をしたな? 課題に真剣に取り組むなら、交通費、宿泊費を負担して、お前ら全員連れて行ってやろう」


 ……

 静まり返る教室。

 しかし一瞬後には、


「うおぉぉっ、マジですか先生!」

「うわぁ、私王都行けるの!?」

「やったぁ、タダだぜ、おい!」


 教室中が歓喜の声で溢れかえる。

 様子を見る感じ、乗り気でないのは研究室メンバーくらいだ。


「はーい、せんせー」

「なんだ、セレナ?」

「その間の授業どうするの? 往復四日、一日泊まりとしても、最低三日は授業休まなきゃだけど?」

「どうせこんな腑抜けた授業をするくらいなら、タメになる一日を経験したほうがよかろう? すでに校長含め諸先生方からも許可を得ている話だ」


 今回やけに手回しが良すぎるな。

 何か裏で動いてるものがあるんだろう。

 そこは後で聞くとして。


「私、もともと参加だから何の旨味もないんだけど?」

「そこについては後ほど話し合わせてもらおう。なに、悪いようにはせん」


 ますますもって気持ちが悪い。

 先生が『悪いようにはせん』だって。

 いつもなら押さえつけてこようとするはずなのに。


「課題は、『後輩たちに残すモノ』だ。最後くらい先輩としてカッコつけてやれ。以上だ」


 ちょうどチャイムが鳴り、先生は教室を出ていく。

 私たちも実習室から教室へと移動を始めた。

 道中の話題はもちろん課題のこと。


「後輩に残す……ねぇ。どこまでを言ってるんだろ?」

「どこまでって何よ。一年、二年しかいないじゃない?」


 リディアが突っかかってくるが、レオニス先生のあの言い方が少し気にかかる。


「これからウルヴィスを目指す初等学校生も、広く捉えれば『後輩』じゃない? なーんかあの人、そういう仕掛けを考えてそうで気になるんだよね」

「けど、在校生のために動くのが、一番先輩らしくないかい?」


 マルクスの言うことも一理ある。

 というか素直に考えれば、それが普通の答えだ。


「まあどっちにせよ私は初動あまり動けないから、みんなよろしくね。来週には王都に行かないといけないから」


 黎明祭(プリマルクス)まで日はあるが、アミーカと最終調整もあるし、これは伝えるつもりはないけど、ティミナたちのサポートのためにも近くにいてあげたほうがいいだろう。


「そうよねー、セレナはルーカスくんと片時も離れたくないものね」

「そーいうことじゃないっ!」


 ◇◆◇


 その日の放課後、さっそくクラスのみんなで残り、課題について考えることに。

 私の考えを伝えたところ、見事にクラスが真っ二つに割れた。

 在校生向け対未来の入学生。

 こんなので戦っても仕方ないので、まずはそれぞれに対して『残すモノ』を考え、より納得出来るモノを出した方を作ろうということになった。


「もう! セレナのせいで面倒になったじゃない」


 寮に帰り、着替えてクッキーをパクついていると、マリーナからしっかりと文句を言われる。

 そう言うならバチッとした答えを出して欲しい。


「いやさ、さらに混乱しそうだから黙ってたんだけど、あれでいいのかね?」

「何よ、まだ何か仕掛ける気?」

「人をいたずらっ子みたいに言わないでよね。違くて、あんな『どっちか』みたいなものを後輩のためって、納得すると思う?」

「……そうね、先生のまだまだだなって顔が目に浮かぶようだわ」


 そうなのだ。

 みんなの話を聞きながら、どちらかを切り捨てるみたいに思えてきて、そこがとても引っかかっていた。

 ……実はお腹が空いてたから、早く帰りたくて言わなかったというのはヒミツだ。

 私はあらためてクッキーに手を伸ばす。


「うーん……夢?」

「夢?」

「あぁごめん、単なる思い付きだけど、何か夢を感じさせる魔導具ならいいのかなって。ここで学べばああいう魔導具が作れるかも? 今からでも頑張れば、あれを目指せるかも? みたいな憧れが必要なのかなって」

「だいぶふわっとしたこと言ってくれるわね。ただ、まあ言わんとするところは分からないではないけど」


 そう言ってマリーナは紅茶を注ぎ、私の前に置いてくれる。

「ありがと」と、礼を伝えて私はそれを一口。


「ねぇ、今回私たち関わらないほうが良くない?」

「まあそうね、私も少しそう思ってきてたところ。研究室で力をつけた私たちは、学校の平均ではないものね」

「うん。だから話し合いには参加するし、作業のアドバイスはする。でも手は動かさない。そうした方がいいと思う」

「つまりみんなは後輩のために何かを残し、私たちはみんなに考え方を残すってことね。うん、私は賛成よ」


 あとはみんなが変にずるいとか言い出さなきゃいいけど……。



 しかし悪い予感は当たるもので、やはりクラスのみんなから文句が上がり、それはそれは面倒なことになってしまう。

 そこで活躍し、場をまとめたのは、意外すぎる人だった。


 消化試合もしっかり学ばせようという、レオニス先生の親心、ならぬ教師心。セレナたちはまた変なことを考えているようですが?


次回、第212話「自分自身の誇り」


 セレナたちからの提案へ怒りの声をあげるクラスメート。自分たちも同じように参加すると言いかけたセレナを救ったのは、あの意外な人でした。

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