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乗客は未発見死体  作者: 沼津平成@ウォーキングで知名度UP
第4章 犬よ、鎖で繋がれどこへ向かう

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『逃げろ!』



 律儀にも、とげとげの紙幣を置く箱の上に、圭吾は千円札を二枚出した。それも走りながら。

 あの時、僕が代表して、支払った時とは違う焦り方。

 ヒートアップしてくる走り。店主と警察が追いかけてくる。

 やばいやばいやばい。

 その三文字が追いかけてきた。

 足元に絡みついてくる。上り坂。

 絡みつかれた。僕をずりおろそうとしてくる。

 まずいまずいまずい。

 今度はその三文字に切り替わった。

 それでも足元に絡みついてくる。上り坂が少し緩くなる。

 息を切らす。肩で息をする。ぼんやりと体力がなくなるのを、足掻きながら感じる。無駄。

 間も無く肺の奥が冷える。倒れ込んだ。圭吾、頼む。お前だけでも逃げてくれ。

 ぼんやりと、空へ祈った。

 澄み切った青空。

 ところが圭吾は立ち止まると、僕を待ってくれた。

 差は縮まっていく。圭吾の顔が険しくなった。10m、9m。圭吾走り出す。

 8m、7m。僕も走り出した。間も無く歩道橋に差し掛かった。熟年の女性とすれ違う。驚いたそぶりも見せずに女性は歩道橋を降り切ったが、警察が爆走するのをみて顔を歪めたらしかった。

 僕は歩道橋を降りるのには自信がある。脳の奥で、おでこの古傷がフラッシュする。あの痛みは鮮明に覚えている。

 山を駆け下って、作った傷だ。

 そこが痛む。

 めまい、転倒。

 起き上がる。

 警察との差は数段。

 足音が追いかけてくる。

 なぜか眠たい。

 眠気、警察。ラーメン屋の店主は追いかけるのを諦めたようだったが、応援を呼んでいるようだった。「食い逃げ」という言葉が聞こえた。

 僕たちは食い逃げはしていない。

 そうだよな、と圭吾の方を向いた。

 そして、僕たちの絆は永遠だ。

 犬が鎖で繋がれているように永遠だ。もちろんこれにはメリットとデメリットがある。

 デメリットは十分に味わった。だからメリットをくれよ。

 あの甘いみつは、もう売り切れなのか?

 僕たちは、味わえないのか?

 犯罪者という烙印を押された僕たちを、らいがぼんやりと見ている。

 そんな気がする。

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