補給任務再同行(5)実証
雨が強くなって来た。
木を叩く雨音が大きくなる。
おれはとにかく走った。
雨が顔にあたり、顏をしかめる。ただ、それどころじゃない。
怖い。
どうしても振り返って、蛍火猪が来ていないか確認してしまう。
今、魔物が人を襲っている。
その中を生身で走っていることを意識すると、足が止まりそうになる。その度に、自らを奮い立たせる。
まだか!看板までこんなに遠かったか?!
一本道だ。道はあっているはず。そのはずなのに、いつまでたっても不安が拭えない。
ただ、こうしている最中にも討伐隊がやられてしまうかもしれない。その思いだけで走っていた。
「……あ、あった!看板だ!よかった……」
結界を示す看板が視界に入る。
あそこまで行けばまず魔物は入ってこれない。
残っていた体力を全て込めて走る。
バシャッ!!
看板を通り過ぎたところに、おれは倒れ込み、仰向けになる。
「……っく!はぁ、はぁ……」
肺が痛い。
思い切り息を吸いたいが、痛くて大きく吸えない。
苦しみながら上体を起こして、走って来た道の方を見る。
「魔物は……はぁはぁ、来てないな……はぁはぁ」
魔物がいないことに安堵し、あらためて呼吸を整える。
周りを見渡して、雨を避けるために大きい木の下に移動するが、足がもつれて何度か転びそうになった。
「よし……」
飛脚靴や足袋をだす。
準備が整い、足袋を履いて、足を飛脚靴に入れる。
光は見えない。祈るような気持ちで測定器の針を見つめる。
動いてくれ!頼むっ!
動かない。
まだ動かない。ダメなのか。
——っ!
「動いた!」
さらに見ていると、針はゆっくりと動き出しており、魔力の補充が出来ていることを示した。
正解だった。
やっぱり結界が原因だった。
「こんなのっ!わかるわけないだろっ!!」
思わず、叫んでいた。
ようやく解決したことよりも、太刀戌隊長達が命の危険に晒されていることを考えると、怒りが込み上げた。
ただ、この怒りは、自然や摂理に対してなのか、この原因を見つけられなかった自身に対してなのか、自分でもよくわからなかった。
「急がないと……」
おれは、急いで補充を進めた。
補充を終えて、最後に木の部品に異常がないか、確認する。
「よし……問題ない。これで補充完了だ」
飛脚靴を全て袋に戻して、測定器と鞄に入れる。
「よし。戻るぞ」
補充が完了したことで、気持ちが軽くなる。後は急いで戻るだけだ。
おれは走ろうとした。
何故か歩くことしかできない。
「あれ?おかしいな」
もう一度走ろうとするが、足が上がらなかった。
何度か試した挙句、遂に足がもつれて転んでしまった。
「……っつ。なんで……」
足を見ると、両足が痙攣していた。とうに限界だったのだろう。止めようとしても、足が言うことを聞かない。
見たことない足の状態に、恐怖と痛みが込み上げる。おれは足を抑える。
「なんだよ、これ!?止まれ、止まれって。行かないと行けないんだよ!」
——ダダダッダダダッ
おれは動きを止める。
今のは雨音じゃない。
足音が聞こえた。
明らかに人のものではない足音が。
その音は、おれが走って来た道から聞こえてくる。
おれは、その方向をとっさに見ることができなかった。
二話連続投稿の1話目です。




