7話 僕の色って何〜!?
エディくんと共にクラリスの屋敷の門の前に転移したアルフレド(ぽやリーマン和)は、門番に突然の訪問を謝り倒していた。
「僕、アルフレド・フォン・クロイツと申します。
突然転移して来てしまい、誠に申し訳ございません〜!
ですが、どうしてもクラリスさんとお話がしたくて。どうかお願いします〜!」
門番達は顔を見合わせて困惑していた。
「おい、どうするよ?」
「悪い奴じゃ無さそうだが。お嬢様に会わせるのは、なんか心配だよなあ…」
彼らがヒソヒソと話し込んでいると、足音が聞こえて来た。
「いったい、どうしたのかな?」
「「当主様!?」」
(え!?もしかして、クラリスのパパさん!?)
クラリスの父、ヒューゴ・フォン・レーヴェンシュタインは、ダークグリーンの髪と目を持つ美丈夫だ。彼の血統のスキルは、心読み。エディは、若様の心を読んでもらいたいとも思って同伴していた。
ヒューゴは静かにアルフレドを見据えた。
「突然の転移とは、クロイツ家の者らしい大胆さだな。
事情を聞かせてもらおうか」
彼はオフにしていた心読みのパッシブスキルを発動し、アルフレドの頭の中を一瞬で覗いた。
(……何だこの思考は。
鉄の箱に詰まった人間の群れ?『スーパーの値引きシール商品の取り合い』?
『耐毒極ヤバい、逃げなきゃ!』だと?
完璧貴族の器に、定年後パン屋志望のぽやリーマンの魂が……!?)
和は、ヒューゴに見つめられた瞬間から背筋に寒気が走った。
「あ、あの!誠に申し訳ございません!!クラリスさんにお話ししたくて、その……!」
エディくんは期待の眼差しでヒューゴを見つめる。
「当主様……!若様の心の中身が、以前と異なるかと存じまして……」
ヒューゴは微かに眉を動かすと、中に入るように2人を促した。
「ふむ……。
確かに、クロイツ家の血筋ではあるが、中身はまるで別人だな。
話はガゼボで詳しく聞こう。ついてこい」
和は内心慌てていた。
(クラリスのパパさん、目が合った途端になんだか全部見られてるような気分になったんだけどっ。これもスキルなのかな…!?大丈夫なのかな、やっていけるのかな僕っ??)
ガゼボに着席し、メイドが優雅に紅茶を注ぐ中、ヒューゴは和に問いかけた。
「さて、アルフレド・フォン・クロイツ。あるいは清水和か。事情を話せ」
内心冷や汗ダラダラな和は、覚悟を決めた。
「あの……。実は僕、アルフレドさんの体に現代日本から魂だけでやってきた、ぽやリーマンなんです……!」
和はカバンから取り出したスキル表を、ヒューゴの前に差し出した。
「なんだこのスキル構成は?柔らか笑顔?本当に対毒極があるとは……」
「僕が住んでいた場所にはスキルとか無かったので、アルフレドくんが残してくれたんだと思っています……」
「清水さん。本物の若様は?」
エディの声から和が引き出した記憶を読み取ったヒューゴは、切なそうな表情になった。
「そうか。あの子にはもう、2度と会えないのか…。クラリスになんと伝えれば……」
そこへ、ダークグリーンの髪に明るいエメラルド色の目をした少女――クラリス・フォン・レーヴェンシュタインが駆け寄って来た。そして、彼女はテーブルの上のスキル表を見た後、父親をじっと見つめた。
「お父様っ……」
「クラリス。疑問は直接彼に聞きなさい。スキルに頼りすぎるな」
クラリスのスキルには、人の感情が色として見える、〈真実の色 上級〉と。
他人の記憶やその時感じた事を映像として投影する、〈心情投影 初級〉が含まれていた。
「アルフレドさん……。いえ、ぽやリーマンさん?」
「ク、クラリスさん。僕は清水和です。はじめまして…」
彼女は和を見つめながら真実の色を発動する。彼の周囲にはクリーム色や白い光が舞っているのが見えた。
(敵意とか悪意とか、何も無さそうですね。神殿に仕え始めた人みたいな色…)
「清水さん。あなたの色、嘘がありません。とても優しい光です」
(僕の色って何〜!?何が見えてるの!怖いよお!)




