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魔法使いのバイエル―銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる  作者: にーりあ
銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーのイベントに巻き込まれる

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ドラゴン来襲 ②-1-2

――飛行魔術か?


流石は魔術師、さすがは魔法のある世界。宙に浮くマルレーネを見て私は感嘆した。魔法世界の空中戦がみられると思ったからだ。


だが、髭中年のひどい形相での絶叫に私は違和感を得た。その勘が、なんとなく私に再度マルレーネを見てみようと思わせた。


――ん? 様子が……。


背面飛行する彼女は泣きそうな顔をしていた。――いや、泣きそうではなく泣いていた。悲壮な表情で目を赤くして。


私は再度髭中年に視線を投げる。


私を見ていた髭中年が、私の目を見返して、強く頷いた。


――おい、どうなっている。屋根からは落ちないのではなかったのか?


次の瞬間には、私は船を蹴って宙へ飛び出していた。


買いかぶりだった。優秀な学生であれば魔術理解という一日の長をもって浮遊移動に近い何かを行えるのかと思ったがそんなことなかったのだ。


あれはただの落下。本当に笑えない。いまさら言うのもなんだが、少しだけおかしいとは思ったのだ。


そもそも飛行魔術――〈浮遊移動〉――は禁呪書書庫内にあった魔術である。禁術に指定されている理由のほとんどは、術者への負荷が大きすぎてその身を破壊してしまう可能性があるからだと本には書かれていた。なんでも身体全身を巡る魔力の調整が難し過ぎるため、限られた天才以外が使うと魔力の暴走を起こし体が破壊されるとかなんとか。


学生の中で優秀、程度では、扱えるようなものではないのだろう。


――AIに粒子を精密操作させられる私は例外中の例外か。飛行魔術が使えないとすると、あの女はここで死ぬべき定めだったわけだな。


丁度その時、私の視界の端に空を滑り落ちていく大きなワイバーンが映り込んだ。


害獣は水面に浮く虫を狙う魚がごとく、空に漂うマルレーネを捕食せんとしていた。


このままではパックリいかれること疑いない。


私はホルスターから銃を抜く。構えたのは象や鯨などの大型獣を仕留める実弾銃である。


「そんなものを食べたら腹を壊すぞ」


マルレーネ同様、狩りに夢中なワイバーンもこちらには気づいていない。


私は両手で銃を構える。


“弾丸軌道の予測データを表示します”


空中での射撃は地上でのそれに比べ多くの要因が加わりエイミングの難易度を跳ね上げる。私は射撃を成功させるために求められる膨大な演算をAIに丸投げした。


――…………今。


AR表示に従いトリガーを引く。


直後銃の砲身出口から光が、砲身周りには稲妻が発生する。


低い雷鳴。轟音が上がった時にはもう標的は四散していた。


――ターゲットの破壊を確認。巻き髪を回収する。


放熱能力を備えたホルスターに銃をしまい、私は身体をまっすぐ伸ばし空気抵抗を調整しながらマルレーネとの距離を詰める。


――見た感じ、ダメージはないようだな。


首から先のないワイバーンに目を奪われている金髪巻き髪少女。彼女に衝突しないよう慎重に近づき、私はそっとその身を引き寄せ優しく抱き留めた。


「え?!」


これに慌てたのはマルレーネである。


彼女は無心で暴れた。よほど恐ろしかったのか、海面の藁にでもすがるかのように私に抱き着いてきて、私の首に手を回そうとする。


――おいぃ、邪魔だ! 動くんじゃない!


一瞬怒鳴りつけそうになったが、すんでのところで私は怒気を収める。パニックを起こされる面倒くささを予見した理性が己の感情をわずかに上回った。


一つ深呼吸をして、私は冷静に対処を進める。彼女は言葉で説明をしても理解できない精神状態だろうから、とりあえず安心させるための言葉をかけよう、と。


「大丈夫だ。危険は去った。もう大丈夫だ――」


私は巻き髪女の耳元で安心させるためのワードをピンポイントで聞かせる。


すると彼女の私にしがみつく力が強くなった。


「こわかっ! こわっ! ――ああああああああぁ!」


感極まったのか巻き髪女が号泣する。私は彼女にそのままがっちりとホールドされてしまい体を動かすことができなくなった。


――しがみつくんじゃない!  姿勢制御しにくいだろうが!


イラついて内心で悪態を吐く。放り投げたい衝動に駆られる。しかし理性が、ここでこの女を突き放すのは損失につながると警鐘を鳴らす。


――くそ! くそがっ!


私は理性をフル動員して優しく彼女のしがみつきかたを調整する。だがその度に巻き髪女は私に――恐らく全力で――しがみつき直しに来る。


何とイライラさせる女か。何故邪魔で迷惑だという事がわからないのか。普通は無理やり引き剥がされれば感じるものがあるはずなのだが。コイツもアンジェリカと同じ図々しいお化けなのか。


私はめんどくさくなって巻き髪女を引き剥がすのをあきらめた。


「もう終わりだって――もうここまでなんだって、おもって、わたし」


泣きじゃくりながらマルレーネはうわ言のように言う。


「何も終わらない。お前は助かった。安心していい」


確かにお前の人生は羽根つきトカゲの餌で終わっていただろう、本来ならば。


だが私はそれを言わない。思ったことをそのまま口にしてしまうのは子供の所業である。


代わりに私はなかなか落ち着きを取り戻さない巻き髪女の心を安定させるため――うざかったのでやや投げやりにはなってしまったが――妥当と思われる気遣いワードを並べた。


その言葉を受けたからか。巻き髪女は顔を歪めながらも、私の目を直視し訴え始める。


「私は、私はあなたに酷いことを、私は、助けてもらう資格なんて、私は――」

「そんなことはいい。(落下中につまらないことを)喋るな」


「でも私は、私は――」

「私が勝手に助けたのだ。お前の都合など知らぬ」


「でも私、私は助けてもらえるような人間じゃなくて――」

「そんなことは知らん。だが私には(アンジェリカ対策に)お前が必要だ。だから助けた、それだけのことだ。それ以上の理由はない。それでよかろう。そういうことだ、わかったか?」


「そういうこと……うん。うん。わかったわ……うん」


うんざりしながらも返した私の答えになんらかの納得がいったのか、マルレーネは静かになった。


――よし。とりあえず処置は完了だな。船に戻るか。


私は落下を止めるべくゲフィオンクラフトの出力を上げる。


――ん? あれ? 


‘おい、ゲフィオンクラフトの出力が上がらない。どこか破損したのか?’


出力を上げたことによって落下速度は緩やかになったが、上昇に転じる気配がない。


私はゲフィオンクラフトの出力を最大まで引き上げた。


“正常に動作しています閣下”


‘ならば何故最大出力にしてるのに浮上しない……あっ……いや待て、そういうことか?’


巻き髪女を拾ってから落下が止まらない。プラス四十キロくらいなら問題なく浮かべる仕様であるのに上昇できない。


つまりこの女が見た目以上に重いということだ。


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