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魔法使いのバイエル―銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる  作者: にーりあ
銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーのイベントに巻き込まれる

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海賊の虫船 ①-2-2

眠りから覚めた私はスローネシステムの設定を行うためのAR操作盤<立体虚像制御卓コンソールスヴェイ>をポップさせた。


視線入力設定を有効化しアップデート内容の確認速度を倍加させる。


虫船もどきたる飛空艇のはるか上空にはドローン群を張り付かせているが、無防備な時間は極力削いでおくべきだ。


未知の惑星の戦場で気を緩めるなどあってはならない怠慢であるが、スケジュール的に今回のケースはやむを得なかった。Kの開発した新しい異能は多少のリスクを負ってでも今獲得すべきものだと判断したのだ。


‘そういえばガラなんとかといってた仕掛けについてはどうだ。解除する方法は見つかったのか?’


“解除自体は初めから可能でしたが、プリンシパルとのリンクを断てば閣下の筐体はゲフィオン粒子への耐性を失います。ゲフィオン粒子は耐性のない生命体にとっては猛毒となるようですので、解除を試みれば筐体はたちまち腐食し生存は絶望的となります。解除してよろしいですか?”


‘……よろしいですかとはなんだ。今の話によろしい余地があったか?’


選択肢のない問題なのに選択させようとするのはいかがなものだろう。人ならば絶対に口にしない内容だと思うのだが。これもAIのなせる業か。


そもそもその設定が初耳だ。そのことをまずフォローすべきだろうに。まぁ私が資料データを細かくチェックすればわかるだろうということなのだろうが、本当に気の利かないAIだと思う。最新式が聞いて呆れるぞ。


“あえてお尋ねになられたのかと。閣下のことですから銀河帝国陸軍がエッダ星系8番惑星において苦戦を強いられた理由をご存じないはずがないと存じましたので”


‘……なるほど。濃度一千倍はその問題も一千倍か。それだと陸軍で作られた抗体では追いつくまいな’


こいつの皮肉は偶然なのか。それとも最新式ポンコツAIだからか。判断に迷うところだ。


“ですからしばらくは魔法の拘束に従い術者の保護に努められた方がよろしいでしょう。術者を守護しない守護天使には相応のデメリットが発生するかもしれません。今後も精一杯の献身をもって彼女を守るべきです”


‘なんだと? この私に子供のお守りをしろというのか?’


“状況を打破するための完全な解析にはより多くの情報データと時間が必要です。状況を打破するにも今は辛抱が肝要かと存じます閣下”


マイペースな提案の終始する最新AI。帝都に帰ったら帝国軍の技術部相手に訴訟したい気持ちが湧いてくる。少なくとも特別監査官を派遣させたい絶対に。


‘それで、お前の見立てではこの星はどうだ? 既存の惑星で近いのを上げてみてくれ’


“エッダ星系にある8番惑星以上に似た環境は無いかと推察されます。かの地の生物もまた、惑星に満ちる固有の粒子を操る力を持っていました”


‘そうか。ここの大陸最大規模国家も【衛星型戦略兵器トールハンマー】で焼き払う事態にならなければよいがな’


“この地のゲフィオン粒子濃度からその戦術は有効でないと判断します。何より惑星の外にまで手を伸ばすことが可能という点が脅威です”


‘そうだな。看過できない力だ。もしかしたらこの力は、海賊共の言っている【加護】という奴の類なのかもしれない。情報収集の結果によって陛下にご報告しなければならないかもしれん’


“軍を引退なされた閣下に、その必要があるのでしょうか?”


‘今の私は予備役だよK。正確には帝国法の定める特務将校に当たる。元帥ではなくなったが、帝国法を無視することはできない。わかるな?’


“了解致しました閣下”


‘うむ。まぁ、それはそれとして、次は装備の確認をするか’


ベッドわきに設置されていたテーブルの足元に置かれた軍用カバンから私が取りだしたのは小鳥の卵に似た物質だ。


特殊DRFのひとつで、殻を割ると中に人型の人形が入っている。


私がテーブルにそれを置くと、卵型の物質はひとりでに揺れ始め、亀裂が入り、やがて割れた。


「とくがたこうさくかんぶんきえんてれけいあcima430W35969-01ちゃくにんです?」


テーブルの上で解凍最適化されたのはK――特型工作艦新第二世代として建造された最新鋭工作艦五隻のうちの初号艦A/5Ⅱ型――から分岐した小指ほどの大きさの人型形態の人工知能体エンテレケイアアバターだ。


発声は可能なようだが、音の周波数は高く活舌もよくない。こんな頭の悪そうな自己紹介をするのもすべては容量リソースの都合だろう。オミットしてよかったんじゃないかと思わなくもないが今更である。


‘ナリはアレだが、要は中身だ。早速つけてみるか’


“蒸着型DRFはノンヴァーバルアクセスで調整済みです”


「…………」


ノンヴァーバルアクセス仕様なら発声機能はやはりオミットすべきではなかったのか。人型にこだわる必要もないだろうに。と思いつつも、やはり今更なことなので指摘することなく私はアバターに指示を出す。


左手の甲を向け人差し指を数度手前に動かすと小人はそれに反応し、大きく跳躍して私の左人差し指に舞い降りしがみついた。かと思うと、そのままゼリー状に溶けて指の根元にたまり、硬化して銀色の指輪となる。


‘リンクした。問題ない。’


“NGXクラスタインタコネクトの確立を確認。Application解凍・インストールを実行します”


【DRF】とは様々な形状に変化可能な作業支援ボットである。


汎用性が高く民間でも作業特化型が広く普及しているが、Kの用意したDRFは軍で管理している最上位仕様のものに手を加えたものだ。


特型工作艦を制御する人工知能体エンテレケイア筐体としての自立思考独立駆動性を妨げることなく私のウェアラブルデバイスとして、またコンバットスーツとしてその性能を発揮する特級ワンオフ品の出来にはグラドールの性能に懐疑的であった私も舌を巻いた。ちょいちょいポンコツなことする部分さえなければ言うことはないのだが、本当に。


‘スキルツリーシステム、ヴァージョン2.0か’


“プロトコル自体はこの星のものもほぼ同じようですので。その名称が妥当かと”


‘ふむ。ざっと見た感じだが、可能な限りの簡略化がなされているな。これなら実戦にも耐えうるだろう。いい仕事だ’


“お褒めに預かり恐悦至極に存じます”


私は展開されたアプリケーションの概要を一通り眺めた後、スキルの取捨選択作業を始めた。一覧表に映し出された魔術名称を確認し、必要なものだけをピックアップしてスキル欄に設定していく。



【スキルツリーシステムメインパレッド】

スローネシステムにて魔術を制御するため組まれたアプリケーション。ナノマシンによるゲフィオン粒子の誘導・制動を行い解析されている術式を再現する。最大五種の魔法をセットし行使できる。内三種(万物殿パンテオン刻譜魔法キルヒェンリート固有技能マイティストライク)は動かせない。


【スキルツリーサブパレット】

スローネシステムが常時起動・管理しているプライマリドライブではなくセカンダリドライブに独立して構築されたシステム。常時魔術データを解析し格納している。プライマリドライブに置かれているスキルツリーシステムに連動するよう割り当てた論理ドライブから5つまで魔術を間接行使できる。サブパレットに設定されている魔術は起動に特型工作艦人工知能体エンテレケイアのサポートが必要だがノード筐体との共有が可能。ただし間接行使の為セットスキル欄呼び出しに一秒以上、スキル起動に一秒以上、その後スキル既定の技後硬直を経て再度スキル実行状態に復帰するまで二秒以上程度の時間が必要。


【メインパレットセットスキル】

召喚A型……アンジェリカの手の届く範囲内に移動する。体験した召喚現象を部分解析し取得。負荷係数45。

縮地……空間転移I型+召喚A型データを応用。目視内にある対象付近へ移動する。負荷係数15。


【サブパレットセットスキル】

空間転移I型……目視範囲内の空間を入れ替える。クロエ=ラピュセルの行使した術式を解析し取得。負荷係数125。


全能なる泉……召喚魔術+時空魔術を解析。術展開時に接続しているゲフィオン粒子だまりに強制介入し大量の粒子を引き出す。粒子体積による干渉孔の圧迫閉鎖まで40秒。負荷係数7200。


雷光雷轟雷霆ヤルングレイプル……自然界に起こりうる程度の雷の連続多重発生術。ツクヴァ図書館禁呪書書庫内の書籍から術式データを取得。負荷係数1800。


治癒力向上壱式……細胞増殖を加速し裂傷部皮膚を接合する。皮下組織まで復元する。ツクヴァ図書館禁呪書書庫内の書籍から術式データを取得。負荷係数1800。


浮遊移動……術者を浮遊させ発生する反発力を利用し空間を移動する。基本速度は術者体重に比例する。ツクヴァ図書館禁呪書書庫内の書籍から術式データを取得。負荷係数180。


【装備品武器】

実弾銃:パロットX68000(対大型獣用弾)

光線銃:八咫鏡の腕輪(ドラウプニルリング)

パルスグローブ


【装備品インナー】

インテグレートスーツ


‘蒸着テストもしておくか。アクションデータを開いてくれ’


“かしこまりました閣下”


Kは応答し、私の視界にAR表示でマネキンを映す。


蒸着機構はノンヴァーバルアクセスによって起動するため事前にその振り付けを確認する必要がある。私が直立不動の姿勢をとると、ほどなくしてマネキンが動き出した。


マネキンが左腕を振り上げ肘を前に突き出しV字にして、停止。私がそれを真似てポージングするとマネキンは次の動作を示す。


右腕を左四五度に振り上げ腰を切り後ろを向き、素早く体を正面に戻して両手を組み前へ突き出す。私も同じように動き、ポージング。


今度は腰を落とし左ひざを地につき、右足は立ち膝で左肩を前へ突き入れるように前方斜め下へ。その時左腕は地面につかないよう折り曲げ右腕は腰の後ろへ。


その後そこから素早く上体を起こし立ち上がったら、左腕を空に向けて高く延ばし天をつかみ取らんとする姿勢。


次はそこから腕を振り上げ、両腕を両外にまるで中空の何かを引き裂くような勢いで広げて――――。


「あんた……なにしてるの?」


「ッ!?」


私がノリノリのアクションをしているさなか響いた冷淡な声。


振り返れば、そこには鳩が豆鉄砲を食ったような顔のアンジェリカがいた。

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