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魔法使いのバイエル―銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる  作者: にーりあ
銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる

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万神殿の天使④-2-2

あのな小娘。確かに学びの姿勢は尊いよ。


でもレンジャーの知識そのものにはそんなに価値がないんだ。


その証拠に私は初めてこの森に入ったが、レンジャーの知識などなくてもまるで困らない。何故なら必要な情報はすべて検索できるからだ。


空は飛行型迷彩偵察機から、陸はDRFから送られてくる情報を照会することでリアルタイムの森情報を私は入手できる。


お前の勉強に使った時間はただの浪費なんだよ。何かを学んで備えとするのは弱者の所業だ。


強者は俺のように何の努力もなく情報を手に入れられるんだ。そういう存在こそが強者なんだ覚えとけクソガキ。


で。


そんな強者である私は、得意そうに前を歩くアンジェリカより遥か前に森の異常に気が付いていた。


――さて。危険は刻一刻と迫っているわけだが。ご主人様はどう対処するのか。



剣歯虎( Saber-toothed cat) 9体

剣歯虎マカイロドンロード 1体



この十体は私の索敵に引っかかっている獣らだ。


冒険者研修関連で得た知識から魔物・害獣に関する情報の照合は終わっている。


一般人では対応できない獣と評価されているそれらは、なかなかに獰猛そうだ。


スローネシステムが表示する簡易マップ上に敵対者として赤い印でマーキングされた一団は、五百メートル先の木々の向こうでこちらを包囲するように展開している。


一匹だけ距離を取っているポイントは、マカイロドンロードと識別された個体だ。群れのボスとみて間違いないだろう。


――一人で研修をしていたらアンジェリカは死んでしまったのではないか?


近くに護衛の教員がいるのかとDRFを動かし周辺を探ってみたが、それらしい人影はなかった。


――虎どもはこちらに気が付いているようだが……。


随分とのんびりしている自称主人の後ろをついて回りながら、黙っていろと命令されている私は、この危機をどう知らせようか思案する。


害獣共の足の速さを考えれば今すぐ逃げないと危機的状況に陥るだろう。アレに一斉に襲われたら魔術を使えぬ少女などひとたまりもない。


そうなった時、アンジェリカは果たしてどのような行動に出るのか。


ちょっと興味がある。


私が主人の言いつけを守って黙ってみていたら、アンジェリカは魔物の死骸の処理を終え再び移動を開始した。


どうやらまだ己の危機に気が付いていないようだ。


――そっちに行くのか。まさか包囲網のど真ん中へ自ら突き進むとはな。ふむぅ……。


運の悪い女なのか。まさか窮地へ直行するとは思わなかった。


このままでは不意打ちによる瞬殺もありうる。


彼女の戦闘力を知らない私は悩む。


彼女は私に黙っているよう言った。上司の命令に背くのは元軍人として抵抗がある。

だがこのまま進ませては彼女にとって良くない結果になるという予感もある。


――彼女は考えて動いていると宣言した。その上で私に黙ってろと言ったのだ。上官を気取るなら自分の言動には責任を取るべきだろう。私が進言せねばならぬ理由はない。


私に生意気な口をきいたのだからそのまま死んだとしても致し方なかろうよ。自業自得という奴だ。コイツがここで死ねば私にかけたおかしな術も解けるかもしれないし、試しに死んでみればよいのだ。


こんな小賢しいクソガキが死んだところで一体如何程の損失が出るというのか。むしろ私の溜飲が下がるだけでも収支は十分に黒だろう。


が。


しかし。


――まぁ、とはいえ……彼女は軍人ではない、な。


まして本当の意味での主人でもない。


私の上位者ではない。


対して私は大人だ。


彼女の上位者である。


大人には子供を許してやる度量が求められる。


大人には子供を導いてやる器量が求められる。


折れるべきはどちらなのか。答えは言わずもがなであろう。


私は彼女のプライドに障らぬよう、それとない忠言を試みる。


「ご主人様。ちょっといいか?」


そっとアンジェリカに近づき、小声で話しかける。


「…………」


「おいご主人様」


「…………」


「おい――」

「何ようるさいわね! ちゃんと敬語を使いなさい! おいって何よ! ほんと馬鹿なんだから! なんなの!」


その時。


強化していた私の耳に草を揺らして迫りくる四足獣の足音が届く。


虎たちが急に速度を上げ包囲網を狭め始めたのだ。


――見つかったな。


「え? うそ……なんでこんなところに剣歯虎が」


どうやったのか。


方法は不明だが、アンジェリカも今更ながら虎の存在に気が付いたようだ。


「ご主人様が大声を出すから包囲を一気に縮められたぞ。どうする?」


「なっ?! 知ってたならなんでもっと早く教えないの!」


「黙っていろと言ったではないか」


「はぁ?! 私のせいだっていうの?!」


「その通りだ。ご主人が大声を出さなければ逃げるという選択肢もあっただろう」


一瞬顔を歪め私に目をむいたアンジェリカ。


だがすぐにいつもの表情を取り繕う。いがみ合ってる場合ではないと判断したようだ。


「今からでも逃げてみるか? しかし既に我々は袋の鼠のようだが」


「仕方がないわね、やるわ! 私が底辺じゃないってこと証明してあげる!」


「そうなるのか。学園側で何か対策していたわけではないのだな。であればここは私が処理しよう。君は下がれ」


「うるさい! あなたは黙ってなさい!」


姿を現した虎たちに向かいアンジェリカは前に進み出る。


私の言葉を無視したばかりかその手に小剣を握り、彼女は近づいてくる一頭に向かって駆けた。


向かい合う一頭もそれに合わせてアンジェリカの正面に飛ぶ。


それに対し、虎もその牙で彼女の体を食いちぎらんと駆け出し、跳躍した。


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