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魔法使いのバイエル―銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる  作者: にーりあ
銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる

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万神殿の天使④-2-1

「この辺でいいわね。魔道具をそこに設置なさい」


私は言われるがまま背負ってきた学園支給のバックパックをその場に降ろし、中から複数枚の板を取り出す。


『〈其方は人参ペジット、私だけについてくる。キョウモ・ハコベ・タタカエ・サガセ・ソシテ、タベ・ラレーロ〉』


切なげな旋律を持った詠唱が宙に複雑な文様を浮かび上がらせ、同時にアンジェリカの足元に置かれた六角の板からいくつもの若葉が生まれる。


――これが【能動的魔力操作能力(ダイナミックハーモナイズコンフィグレーション)】か。あの歌は三次元振動入力のようなものか? 確かに、これは今まで見てきた魔術とはかなり毛色が違うようだ。


魔術を使用できないアンジェリカを特待生たらしめている理由が、この【世界の欠片】と言われる【晶石】に直接干渉する技能だ。


彼女はその技能によって魔力オド(生物に取り込まれ変質したゲフィオン粒子。陽ゲフィオン粒子)と魔素マナ(大気中に存在するゲフィオン粒子。陰ゲフィオン粒子)の入れ物たる晶石に干渉し、奇跡の印章(リトグラフトーン)(魂の模様・紋を転写して作り出す魔術の設計図・回路)の代わりに魔道具に組み込まれた魔術回路へと晶石から魔力オドを誘導することで疑似的に魔術を成立させ奇跡を発現させられる。


今アンジェリカの使用した魔術は【魔道具・雛九壇】による〈下級精霊使役〉である。


晶石を組み込んだ魔道具のタクトを使い、同じく晶石を埋め込まれた魔道具・雛九壇を操作することで小さな使い魔を召喚し使役する。


アンジェリカの魔術により宙に描かれた光の文様はやがて消え、それを合図にアンジェリカは生えてきた若葉を摘まみ、そのまま躊躇なく引き抜く。


出てきたのは手足のある球根だ。


頭に若葉を生やしたソレは見ようによっては顔に見える窪みを備えていた。


「貴方達、魔物の死体を見つけて。行きなさい」


「にんにん」「にんにん」「にんにん」「にんにん」「にんじん」「にんにん」「にんにくん」


甲高い声を上げ、手足の付いた縦に長い逆三角形型の赤い球根らが命令に従い走り出す。


何匹か個性を発揮した個体がいたのが薄気味悪い。


量産型BOTかと思ったが少し違うようだ。


「見つけたわ。ついてきなさい。あとこれしまっておいて」


魔術により何らかの情報を得たのか、彼女は唐突に歩き出す。


私は魔道具を片付けてその後を追った。


数分も歩かない距離にあったのはイノシシに似た生物の死骸だ。


アンジェリカはいつの間にか両手にいくつもの小さなビスのついたグローブを履いており、魔物の体を触診するかのように撫でていた。


やがて彼女はイノシシの胴に傷口を見つけると、そこへ躊躇なく手を突っ込み心臓あたりを探る。


するとイノシシの体が一度大きく震えて、急速にイノシシの体が紙粘土質へ変化し始め、かと思うとそれは瞬く間に黒い砂となった。


「何をした?」


「必要な素材は討伐した班で回収するのよ。そのまま核を抜いても問題ないわ」


彼女の答えは私の質問趣旨からズレていたが、魔核と呼ばれるものが関わっているのだろうと察しがついた。


魔核とは、要は汚染された晶石をいうらしい。生物に宿り生物と影響し合いながら生物に悪影響を与える晶石、だったか。


そして魔物とは、この惑星では魔核を宿した害獣の総称である。


私はあえて問い直すようなことはせず、考えられる仮説を裏付けるため消去法の材料を得る質問に切り替える。


「魔核を破壊したのか?」


「はぁ? そんなことしたら使えないでしょ? この力を認められて特待生になった私がそんなミスをするわけないの。もし死霊術士がいたらそっくりそのまま原型を再現できるくらいよ」


アンジェリカの手には黒い塊が握られていた。


それが汚染された晶石なのだろう。


彼女は「馬鹿を相手にするのは疲れるわね」などとぼやきながらそれを腰にくくりつけている皮袋の中に入れる。


そうして体についた黒い砂を軽く叩いて払い、次の目標へと向かって彼女は再び歩き始めた。


――これが、彼女の課せられた実習の全容ということか。


晶石の回収作業はその後一時間以上続いた。


プライドの高いアンジェリカであるから、屍骸漁りなど不貞腐れながらやるのだろうと思っていたのだがそんなことはなく、彼女は殊の外まじめに取り組んでいた。私の予想を裏切る事態である。


――周りをよく見ているな。探索にはなれているのか?


レンジャーの真似事は勘だけでできるようなものではない。


地面の草、足跡、木々の様子、食われたと思われるキノコの残骸。森の様子を逐一観察し、森の全体の状況を考えながら道を決め進んでいる。


それは彼女がよく勉強していたという事実を物語っていた。


アンジェリカの事を気位の高いわがまま娘程度にしか思っていなかったから、努力の跡が垣間見えた今、私の胸の内には彼女への素直な称賛が湧いていた。


「なかなかやるものだな」


「は? なんなの? 暇つぶしに嫌味? あなたはただついてくるだけでしょうから全然つまらないかもしれないわね。でもこっちは考えて動いているの、あなたみたいに暇を持て余しているわけじゃないの。黙っててくれる?」


「……そうか。了解した」


アンジェリカの言に私は首肯する。


まぁそうなるよな。お前ってそういう奴だよ。知ってた。私の賞賛を返せ。


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