万神殿の天使④-1-2
学園敷地内に集められた生徒に教員から説明がなされる。
実習地は学園より西へ五十㎞移動した森。
教員による簡単な挨拶と説明を終えて生徒たちは散開。私とアンジェリカは学園の用意した荷物運搬用馬車に乗り込む。
他の生徒たちはというと、それぞれ自分の家で用意した馬車に乗っている。
これが生徒らのいう貴族と華族の差というやつか。
とはいえ学園の用意した足に文句などいえようはずもなく。
私は恥辱を耐える荷物扱いのアンジェリカを直視しないよう気を付けながら彼女の正面側の席に座る。
朝七時に出発し到着予定時刻は十五時。
馬車は途中途中で馬を休めなければならないため休憩時間が多めとなる。
食事休憩もそれに合わせてとられると聞いてはいたが、まさか二時間も停車することになろうとは。
私は糧食を積んだ馬車へ行き、学園から配給される糧食を二袋受け取るとアンジェリカに渡しに行く。
配られた内容物はごわごわした紙に包まれたハムとチーズを挟んだサンドウィッチに柔らかめのジャーキーだ。携帯水筒には紅茶が詰められていた。
「あなたも食べなさいよ」
「いや、私はいい。腹は減ってない。君が食べたらいい」
「なんで私があなたの分を食べなきゃならないのよ」
「食べないのか? ならば返却してくるか」
「ま、待ちなさいよ、もったいないでしょ!」
「そうか? ならば受け取るがいい」
私が自分の分をアンジェリカに差し出すと「しょうがないわね!」などとこぼしつつ彼女はそれを受け取る。
うすうす感じてはいたが貧乏性なご主人様である。
――なんというか、野生的だな。エネルギー変換マテリアを経口摂取する個体をこんなに間近で見られるとは。
ジュダスは食事をしない。肉体を維持するために必要な栄養素は体表にあるナノマシンで生成できるからだ。
帝国民はエネルギー補給にエネルギー変換マテリアカプセルを使用する。
この星の人種のように食料を経口摂取することも出来るが、食事はニッチな娯楽であり一般的ではない。口内が汚れるし、完全に洗浄しきれなかった場合万病の温床となるからだ。
ジュダスである私はナノマシンで飲食後の洗浄問題はクリアできるものの、それでもこの地で出される食べ物を食するという行為は苦行だ。だって美味くないから。
この地で出される一般的な食事はひどくまずい。そして臭い。調理技術が拙く食べ物が料理の域に達していない。
だが、食べなければならないシーンというのはどうしても出てきてしまう。
周りの目がある時には我慢して食べている。そうしなければ不自然な目で見られてしまうからだ。食に興味がある振りをするのも、このイカレタ魔法惑星で悪目立ちしないための配慮だ。
そしてそんなことはつゆ知らず、私の事を村人らしく小食だと思い込んでいるアンジェリカは、私から得た二つ目のサンドウィッチに齧りつく。
「このパン……すごくおいしくなった」
小さく呟きとても幸せそうな顔でパンを頬張る姿にちょっとムカついた。




