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魔法使いのバイエル―銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる  作者: にーりあ
銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる

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異世界の洗礼②-2-3

「よく逃げずに来たな。誉めてやろうじゃないか」


金髪少年の言葉に私は自分の耳を疑った。


連行しておいて何を言っているんだこいつ頭大丈夫か、と。


だが周りの反応を観察し、それでやや遅れて私はその意味を理解する。


――あぁ、台本通りにセリフをしゃべったということか。


どんどん広場に集まてくる少年らと、その中心に立たされている私。


少年らは皆ここの生徒だろう。どう見てもたまたま通りすがったという雰囲気ではない。


場をしめる異様な熱気。外野はさながら娯楽を見にきた客といったところか。


もしかするとこの一連のやり取りは、全てが事前に企画されていたものだったのかもしれない。


「それで? 次は喧嘩が始まるのか?」


「喧嘩?」


その言葉に金髪少年が偉そうに、嫌味を過分に演じて笑う。


「はっはっは――失礼。あまりにおかしな事を言うのでつい笑ってしまったよ。そうか。惨めな元貴族、リモージュ家では犬をしつける行為を喧嘩と称するのかい? それは没落するわけだよ。その品性の卑しさ、飼い主そのままじゃないか」


「……ふむ。皮肉を言ってやるのも数を重ねると胃にもたれるな。昼食前だというのに困ったことだ。はっきり低能をさらすなと言わないと理解できないのか?」


「……なん……だと?」


少年の顔がみるみる赤くなる。


おいおい怒る芝居だけ上手だな。と思いかけ、私は異常に気が付く。


スローネシステムを介して見える金髪少年のバイタルデータの揺れが大きすぎる。


それが裏付けるのは、少年が演技ではなく素で怒り心頭だという事実。


大した挑発ではなかったと思うが、沸点低すぎではなかろうか。


それとも貴族という上位者の立場に慣れ過ぎて、極端に打たれ弱くなってしまっているのか。


「待て待て。そう熱くなるな。ただの事実だ、挑発の類じゃない」


「――君は、僕を貶めて生きていられると本気で思っているのかい? リモージュ君の守護天使だからって殺されないと高をくくっているのかな、いや、いるね、いるに違いない、でなければ村人がそんなに開き直っていられるわけがない」


「そんなものは知らん。私は天使じゃない。若干若く見えるかもしれんが、何処の世界にこんなおっさんな天使がいるというんだ。そうだろう?」


「無能な主人からはやはり蒙昧なゴミしかでてこないらしい。言っておくが、守護天使を殺してはならないという法はない。無知な村人に法を説いても理解出来ないだろうが、君にも判るようにこの僕が貴族の慈悲を持って教えてやろう。君は今、ここで殺される運命となった。そういう事だ」


そう言うと、金髪少年は耳慣れない言葉を唱え腰に下げていた折りたたんだ扇子のような形をした物体――六文銭文様軍配――を手に持ち、振るった。


「どうでもいいが、いちいちウチのご主人様を引き合いに出してくれるなよご貴族様。それとなんだ、私を殺すと聞こえたが?」


「そうだとも。恐ろしいだろう。泣きたまえ。わめきたまえ。命乞いをしたまえ。そして自らの行いを悔いたまえ」


少年の言葉が終わるや否や、その足元前方の土が楕円に黄色く輝く。


そうかと思えばそこから武器を構えた全身鎧の人型が湧いて出てきた。


それはまるで水が湧きだし吹き上がるかのように、ホログラフィックな映像が土からにょきにょきと生えてきて実体化したのだ。


――これは、さすがに驚くな。これが帝国陸軍の見た魔法か。


その光景にはちょっとびっくりした。


軍人生活はそれなりに長いのだけれど、地面から人形が生えてくるのを見たのは初めての経験だ。結構ぬるぬるとにょきにょきと地面から生えたので何気に気持ち悪かった。アルミナ被膜を取り除いたアルミニウムに水銀を垂らした時発生するアルミニウムアマルガムだってもうちょっと控えめに伸びるぞ。


出てきたソレは顔をマスクで覆っている黒いマネキンのような造形だ。


身長百五十程度と小柄。それらが骨董品のような鎧をまとい、その手には美しい僅かに湾曲した刀身を握っている。


――これが魔法……この星の異能か。


信じがたいことだが、その物体は確かに質量を伴っている。


そして何と精巧な作りか。


誂えられる被造物の生成過程は基本3Dプリンターと同一かそれに近しい。何らかの力をもって謎の粒子を限定した空間に結集し、物質へと転換したのだろう。


実物を目視すると脅威に実感が湧く。その仕組みは確かに科学のメソッドを踏襲しており、法則性についても歪みがないように思えた。


――あの形貌、確か、武者といったか。N星系のどこかの惑星で見たことがある。


何も無いところから物が現れるという事実リアリティにも驚かされたが、その上それが美術品級の精緻を伴っているという事実。特に鎧武者が構える刀の輝きは、芸術に疎い私でも美術的価値を感じるほどの出来栄えだ。


「さぁ、懺悔したまえ。辞世の句を詠むくらいの時間なら刑の執行を待ってやらなくもない」


「待ってくれるのか。まるでエンターテインメントだな」


「えんた……何を言っているんだ村人。――まぁいい。無知な君にも判るように言ってやろう。これは無礼うちだ。君の命は僕の胸三寸という事さ。君はここで死ぬ。判決は下った。死刑さ」


――金髪少年の精霊騎士ド・グー――が、まるで主の言葉に呼応するかのように刀を正面に構える。


武者が私を敵と認識し襲いかかってきたのと、金髪少年が軍配を振るったのは全く同じタイミングだった。


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