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魔法使いのバイエル―銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる  作者: にーりあ
銀河帝国宇宙軍を退役した英雄元帥魔法の存在する惑星で乙女ゲーの守護天使にされる

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異世界の洗礼②-1-3

「このように45の等級に区分し評価するのが世界魔術協会の定める等級制度だ。ここにいる諸君は下級貴族の条件である十級の認定を受けたわけだが、三年生になる為には九級の認定を受ける必要がある」


ついていった先にあったのは辺境惑星いなかにある大学という雰囲気を持った建物だ。


一言で言うなら古めかしい空間。


床や壁、椅子机にはビンテージアンティークを思わせる品格が有る。


広さも田舎の一般的な大学の大講堂程だろう。


少女に連れられ私はそこの教壇の正面、受講席中央辺りの席――の隣の床――に座らされていた。


「学園を卒業し学士バチェラーの資格を得るには八級の認定を受ける必要があるが、無事卒業を迎えられる学生は毎年入学時のおよそ三割ほどだ。授業外でも各自研鑽を積むことを忘れぬように。では今日の授業を始める。まずは【奇跡の印章(リトグラフトーン)】基礎理論の復習からだ」


教壇から生徒に向かって檄を飛ばすいつかの中年教師。少女が言うにはハゲネなにがしとかいう名前の男だ。


かたや彼を見ている群衆はなんとかという試験をクリアした、その割には一様にやる気のない目をした生徒ら。パッと見渡した感じ、何かを学びたいと思っている者達の態度ではない。


そっぽを向いたり私語をしたりしている生徒たちが目立つ。そこかしこからあがる生徒の笑い声は、私には不思議を通り越し不快ですらあった。


――やる気がないなら帰ればいいのに。


周りを見ているうちに自然と思いだされたのは自分の学生時代。


思い浮かべたのは産まれた時からあらゆるものを与えられ、多くの他者を自分より下に見て生きていきただろう御曹司らの姿だ。


あの時。権力者の子息らは学びに対し一切の興味を示していなかった。


彼らにとって学校とは遊び場であり、同程度の者たちとつるむためのたまり場でしかなかったのだろう。当時の私にはそれらがひどく的外れな、異質なものに見えたものだ。


――まぁそれは、私が無知であったからに過ぎないのだが。


権力と金が有り余る彼らにとって、学びなど無用の長物である。


彼らには全てを権力と金で解決出来る力があったからだ。


如何なる振る舞いも親の権力で免罪できることを彼らは知っていた。


知識なぞなくとも楽に生きていけることを知っている者達が学びを有難がる道理はない。彼らはそのくらい圧倒的な上位者であった。


強者の元に弱者が集まるという社会の理屈を彼らはよく心得ていたし、弱者が強者に対し勝手にひれ伏しこうべを垂れ富を差し出してくる真理をも彼らは理解していた。


熊が生まれ持った力で人間を簡単に殺せるように、生まれながらの強者は知識の有無に関わらず弱者を簡単に食い物にできる。


私がそれを理解したのは後に力を手に入れた時だ。


あれはどこかの惑星の言葉で言うところの、目から鱗、というやつだった。心に受けた衝撃が、まさにそんな感じだった。言い得て妙と思ったものである。


――それでも今のお前達のそれは、虎の威を借る狐の驕りに過ぎないがな。


知識は弱者が修めるものという考え方には一理あるだろう。強者とは弱者が持ってきた成果物を無条件に奪える存在であり、ゆえにその者らは強者として在らしめられるのだ。


だからここの星では強者なのだろう彼らが、職業教師という存在を笑うのは間違った行いではない。職業教師の多くは世間を知らない井の中の蛙だ。たいていは碌に財を築いたこともない世間知らずな小さき者だ。『先生Fラン卒のくせにあんなに威張っていたのかよ』ということわざにある通りだ。


だが、私に言わせれば、権力者であったとしても自己研鑽はしないよりはしておいた方が良い。


地位を得てからの私は、同じ学び舎にいた御曹司どものような――親が死んだ時には自分がそれを受け継ぎ変わらぬ平和を謳歌できるのだと信じ切っていた――者たちを数多く粛清してきた。


普通以下の人間を助けるのは億劫だが、それが有能な人間とわかれば助けるのもやぶさかではなくなってくる。のちに助けるための対価を回収できると思えるからだ。


絶対的権力者というのは個ではなく、群なのだ。


かつて宇宙最強と謳われた大英雄ジュダスですら、最後は帝国に膝を屈した。どんな絶対的存在であっても個では群に勝てないのだ。


そして群の統率には、どうしたって多少の知恵が必要になる。宇宙の端ではあるが、帝国の名の元にいくつもの惑星を支配下に置く覇者となった私ですら、それは例外ではない。


帝国の将軍ともなれば一惑星の一地域の王などより遥かに格が高いし、比べ物にならない力をも持っているが、それでも慢心には注意を払っている。その気になれば気に食わぬ国家など惑星ごと滅ぼしてしまえる権力を得ていても、歴史の轍を軽んじることはない。


――上り詰めて初めて理解できる世界があるというのもまた真実。ふふ。この不快さはわがままだな。幼き日の自分の蒙昧さを美化している。真実とはグロテスクで残酷なものだ。ロマンのかけらもない。


研鑽を重ねても人はそれを活かせないまま死ぬときは死ぬ。


だから軽んじていいという話ではないが、学ぶことが絶対に必須で正しいとは私は言わない。学びによってデメリットを被る機会がないとも言えない。


ただ、生きていくのに利用できる形なき武器を拾わない理由は何なのかと、私は彼らに少し問いたくなっただけだ。


――少年少女らよ、大志を抱け。私も生涯頑張るから。とかいう、かつてどこかの星系の英雄が残した言葉があったな。クラーなんとか……忘れた。私も彼のように、こんなところからは早々に脱出して自領地の開拓事業に着手したいものだ。


私は小さなため息とともにシニカルを浮かべる。気分はちょいワルオヤジなハードボイルド。強い酒をバーカウンターでロックでちびちびやってる的な。私酒飲まないけど。


「全ての魔術は魔力制御に始まる。いうまでもないことだが、強化術の日々の鍛錬は各自絶やさぬように。強化術の強度、ヒットポイントを上げに上げて、そうしたら今度は放出術の訓練だ。これから学んでいく様々な【奇跡の印章(リトグラフトーン)】は魔術の基礎であるが、言い換えれば基礎でしかない。知っていて当たり前のものとなるので、授業を終えたものに関してはしっかり習得しておくように。そうしておけば次の課題である操作術でも苦労を少なくできるだろう。そうして具現化術まで学びの工程を進められれば、諸君は晴れて卒業となる」


――ふむふむ、なるほど。魔法を具象化するための魔術か。意外に論理的なものだったのだな。


なんだよ魔法ってただのオカルトかと思ってたけど、意外と科学的じゃないの。もしかすると魔法技術って、工夫次第では理力フォースっぽく使えるのでは。ちょっと楽しくなってきたな。


などと気が付けば私も、主人にあやかりいつしか魔法学科の一生徒として教えを受け、アオイ中将のレポートを参照しつつ独自の考察を組んだり整理したり妄想したりでめちゃくちゃ学びを楽しんでいた。


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