第3章 尋問
それから、セイヤはまた入院部屋を抜け出し、治安局の制服に着替えて、3階にある心臓外科部長のサマー医師を訪ねた。
もう午後1時半過ぎ。サマーの勤務先が同じトウア国立中央総合病院で助かった。
セイヤは、サマーの診察室に入ると、午後の診察準備をしていた看護師に治安局の手帳を見せ、昼休み中のサマーを呼び出してもらった。午後の診察は2時からとなっているが、遅れるのが日常茶飯事で、この病院では患者は待つのが当たり前になっている。
――30分あれば充分だ。30分で落としてみせる。
セイヤは時計を確認する。
程なくして、サマー医師がやってきた。歳は50代、体格こそ小柄だが、どこかしら尊大な空気を醸し出していた。
セイヤは、3件の子どもの殺人事件について極秘捜査で来たと説明し、話を聞かせてほしいと人払いをさせた。そして自分が立てた仮説をもとに、サマー医師を問い詰めていった。
最初はシラを切っていたサマーだが、やっと子どもの心臓移植について、シベリカ国のある病院の仲介をしていることを認めた。が、あくまでも脳死者からの正当な臓器提供だと言い張り、違法行為はしていないと、ふてぶてしい態度を見せた。
いや、よく観察すると瞳の奥は戸惑いと不安、そして恐怖で揺れているのが見て取れた。この男は虚勢を張っているだけだ。
「どうしても気になるならシベリカへ行って捜査したらいかがですか。ま、他国の捜査権はありませんけどね」
サマー医師はイスにふんぞり、笑みをこぼした。
セイヤは冷徹に観察する。
――こいつは、シベリカ人の子どもの命など何とも思っていない。
――しかし、自分が診ていた三人の子どもが殺されたことについては動揺しているはずだ。
そこで核心を突くことにした。
「ところで、マオー氏とヤハー氏のお孫さんの情報を売ったでしょう。民主平和党と敵対する勢力に」
「いえ……患者の個人情報を外に漏らすようなことはしませんよ」
いきなりの質問にサマー医師の目は泳ぐ。思わずイスの背にもたれていた体を起こし、口に手をやっていた。
人間ウソをつく時、思わず口に手をやることが多い。体を起こしたのは緊張したからだ。セイヤはサマーが情報を売ったことを確信し、質問を続ける。
「東、北、西地区で起きた子どもが殺害された三件の事件について知っていますね?」
「ええ、ニュースは見てますから」
「三人は8年前に心臓移植を受けてますが、三人ともあなたが面倒を見ていたでしょ。このことはそれぞれの被害者の親御さんたちに確認済みです」
本当は2件しか確認していないが、当然3件とも関わっているだろう。
「ええ」
この件についてはサマーは認めた。
セイヤはさらに迫る。
「この三人の情報も一緒に売ったのではありませんか」
「……そんなことはしてません。何なんですか……失礼ですよ。もう帰ってください。こちらは答える義務はないのですから。強制的に事情聴取をしたいというなら証拠をそろえ、令状をとってきなさい。ま、証拠をそろえられるならね」
サマー医師は怒った風を装っていたが、決してセイヤに目を合わせようとしなかった。顔はセイヤに向けつつも、微妙に視線をずらす。
「こんなことが世間に明るみになったら、あなたも社会的制裁を受けるだろうから、そう簡単に本当のことを話してくれるとは思っていませんが……」
セイヤはサマーから視線を外さず、恫喝の色を口調に込める。
「正直に話したほうがいいですよ」
「正直に話してます」
サマーはあくまでもシラを切りとおすようだ。
「あなた、このままじゃ消されますよ」
突然、セイヤは声を落とした。
「え?」
サマー医師は虚を突かれた表情を見せ、強張らせた。
「あなたから情報を買った者は、あなたに本当のことをしゃべられるのを恐れているでしょうね。だから、あなたはきっと始末される」
「……」
「こっちは仕事上、そういう類の事件をたくさん見てきています。証拠がそろわないから表沙汰にならないけど、口封じを疑われる事件は数え切れません。けっこう多いですよ。ニュースにならないだけで」
セイヤはしれっと嘘を吐いた。
さっきの虚勢はどこへやら、サマー医師の体が小刻みに震え出し、動揺している様子を隠そうともしなくなった。
そう、サマー医師は自分が診ていた三人の子どもが殺されたことに不安を抱いているに違いない。もちろん、自分が情報を漏らしたことも関与していると考えている。後悔もしているだろう。恐ろしいことに関わってしまったと。
だからこそ、心の奥底では助けを求めているはずだ。
「あなたも自殺に見せかけられて殺されるでしょう。治安部隊は人員不足で忙しいから、本当に自殺かどうか詳しく調べません。だから口封じで殺されるケースが多いんでしょうね。自殺とみられる遺体には、実は他殺も疑われるケースがかなり含まれています」
セイヤのでまかせは続き、他殺遺体の惨さを脚色して語った。自殺に見せかけることができなくても遺体が発見されなければいい。事件と認知されず捜査されない。だからこそ口封じで殺される可能性が高い。そんな話をした。ついでに遺体の残酷な処理方法も教えてやった。
サマー医師の顔が蒼白になっていくのを見ながら、セイヤはこう諭した。
「殺されるのが嫌だったら白状したほうがいい。もしあなたの身に何かあれば、世間と警察は当然、あなたが情報を売ったとする人物を疑います。だから逆にその者はあなたに手出しできなくなります。殺人の罪は重い。そのリスクを背負ってまで、あなたをどうこうしようとは思わないでしょう。
もちろん、警察もあなたを守るために目を光らせます。情報を売った人物を公表したほうが絶対に安全です。
あなた自身の罪については、情報を売ったことについては世間から責められるでしょうが、刑事罰を問われても実刑を食らうことはないと思います。少なくとも執行猶予はつきます。ちょっと社会制裁を受けるか、恐怖と痛みをとことん味わいながら殺され、あげくに自殺で処理されるか、どっちがマシかよく考えてください」
セイヤは「このままでは殺されるのは確実」としてサマー医師に詰め寄った。
サマーは床に目を落とし、黙り込む。
室内に静寂がたちこめる。
セイヤは何も言わず、ただただじーっとサマーを見つめていた。サマーの額には汗がびっちりと浮かんでいる。
傲岸な者は意外と臆病だ。最初、サマーの尊大で威圧的な態度を見た時から、実はその瞳の奥が不安に揺れていたことから、ちょっと脅かせば容易く落ちるとセイヤは踏んでいた。
そのうち、張りつめた空気を破るように、サマー医師は大きなため息を吐き、ついに……共和党の大物議員の第一秘書官に情報を渡してしまったことを白状した。
セイヤは大きく頷くと、すぐにルッカー局長へ連絡を入れて、サマー医師を警護するよう要請した。
「今からあなたに護衛がつきます。安心してください」
今までの厳しい表情とは一転、セイヤはサマー医師に優しく微笑んだ。
が、その微笑みの実体は冷笑だった。
――本当のところ、護衛というより監視するためだ。万一、寝返られたら厄介だからな……。
そんなセイヤの心など知る由なく、サマー医師はさっきまでのふてぶてしい態度はどこへやら「お願いします」とすがるような態度を見せた。
そんなサマーをこちら側に引き入れるべく、セイヤは「私たちはあなたの味方です」とアピールし続け、その場限りの信頼を勝ち取った。
・・・
それからしばらく経った頃――サマー医師のもとへ護衛が到着するのを確認し、セイヤは公務員専用特別室に戻った。診察室では優しげな笑顔を振りまいていたセイヤの顔は、診察室を出た途端、無表情になる。
特別室には、すでにルッカーが来ていた。
公務員専用室は個室なので人払いの必要もなく、ルッカーには見舞客用のイスに座ってもらい、セイヤはベッドに腰掛け、詳細を説明した。
「なるほど、共和党党首が関わっていたか……」
セイヤの話を聞いたルッカーは腕を組み、考え込むように目を閉じた。
「臓器売買が疑われるシベリカで心臓移植したマオー氏およびヤハー氏の孫の話を、明日の党首討論で持ち出される可能性が高いということか。民主平和党にとっては大打撃だな」
「その代わりサマー医師の証言で共和党も追い込むことができます」
「このことが公にされれば……シベリカ人の暴動が心配だな……戒厳令を敷くはめになったら選挙を行うことが難しくなる」
「戒厳令によって選挙が延期になってでも、共和党は、民主平和党に打撃を与えるほうを優先するでしょう。何もしないまま選挙に突入すれば、民主平和党が大勝してしまいますから」
「そうだな……」
ルッカーは目をつぶったままだ。
「あるいはサマー医師を民主平和党に引渡し、共和党と取引させますか? マオー氏とヤハー氏の孫の心臓移植の件について口外するなと。もし口外すれば、サマー医師を使って公の場で証言させ、共和党を叩くと。そうすれば共和党を引かせることもできるでしょう」
言葉を選びながら、セイヤは続ける。
「その場合、サマー医師は大事なカードですから、民主平和党がサマー医師を護るでしょう」
そこでようやくルッカーは目を開けた。
「お前はどうするべきだと思う?」
ルッカーの射るような視線に臆することなく、セイヤは自論を述べる。
「トウア国民のためを思えば、これ以上治安を悪化させず、選挙は速やかに安全に行ったほうが望ましいですが……しかし我々の捜査情報を、ある特定の党のために利用させるのは問題です。この場合、サマー医師という強力なカードを得た民主平和党は、共和党を牛耳ることができるでしょう。我々は共和党と直に取引する立場にありませんから、民主平和党に任せることになります」
ここで一旦、話を切り、しばし考えた後、こう続けた。
「……すなわち、サマー医師を民主平和党に引き渡すという行為は、我々が民主平和党という特定の党のために動いたことになります。
これは、選挙まで心臓移植の件を極秘扱いにし、マオー氏とヤハー氏の孫を警護する任務とは意味が違ってきます。こちらの任務は、あくまでもシベリカ人が暴動を起こすきっかけになるようなことは公にせず、選挙を安全に行うため……つまり国と国民のために動いてました。民主平和党のためではありません。
しかし捜査によって得た『サマー医師というカード』を民主平和党に渡し、共和党と取引させるのは、特定の党に肩入れしたことになります。公務員がそんなことをすれば、やがて国に歪みが生じます」
セイヤは言い終えたとして、ルッカーに軽く頷く。
しかし、ルッカーはさらにその先の答えを促した。「つまり?」
セイヤはちょっと言葉に詰まったものの、このように結論付けた。
「民主平和党と共和党を取引させるべきではないと思います。サマー医師というカードを民主平和党に渡すべきではありません」
そして、こんな提案をした。
「その代わり、サマー医師には選挙前に公の場……党首討論会で証言してもらうのはどうでしょうか?
おそらく共和党は、党首討論会で心臓移植の件を持ち出し、民主平和党を追い込もうとすると思われます。シベリカ国の臓器売買が疑われる心臓移植は個人が関わったことで、本来、民主平和党は関係ありません。
しかし、政敵を陥れようと画策し、犯罪行為を働いた疑いがある共和党のことは、選挙前に追及しておいたほうが公の利益に適うと思います」
ここまで一気に話した後、セイヤは目線を下げた。
「ま、サマー医師を公の場で証言するように促し、それを手助けすることも公務員としてやってはいけないことですが……それは私個人が私的に行ったということで、後で始末書を提出し、処分も覚悟します」
そう言いつつ、もし減給処分になったらリサを怒らせるかな……とちょっと心配になった。
そんなセイヤを見やり、ルッカーは苦笑する。
「処分を食らってでも、それをやるか……。お前って意外と正義感が強いんだな。もっと損得勘定で動くヤツかと思ったが」
「いえ……何が正義かどうかは自分には分からないです。
ただ、これだけえげつない手を使った共和党が一方的に民主平和党を陥れ、共和党が選挙に勝ってしまった場合……いずれサマー医師のことが明るみになれば、共和党は国民から激しく非難されます。そこで再び解散総選挙となれば、いつまで経っても国の立法府は正常化しません」
セイヤは声のトーンを落としながらも、決然とルッカーに視線を合わせる。
「後はシベリカ人たちの怒りが心配です。暴動が起きて戒厳令が敷かれたら選挙どころじゃなくなります。ですから予め治安部隊や軍を出動させておいて牽制するしかありません。選挙は行うべきです」
「そうだな」
頷きながらルッカーは席を立ち、こう続けた。
「……それにしても、よくサマー医師を白状させたな。お前のことだから上手く脅して真相を引き出したんだろうな」
「脅しただなんて……せめて説得したと言ってください……」
セイヤが真っ先にサマー医師に注目したが、警察捜査隊も3件の被害者に共通点があると知れば、いずれはサマー医師にたどり着き、事情聴取を行っただろう。が、シラを切られれば、証拠がない限り、それ以上追及しようがない。裏ワザは必要悪だ。
ルッカーは顔では笑っていたが、相変わらず鋭い視線をセイヤに投げかけていた。
「マオー氏とヤハー氏および三件の殺人事件の被害者、そしてサマー医師への事情聴取も、お前の勝手な行いになるが、私が命令し、極秘任務でやらせたということにする。かかった経費はこちらが持とう。それから、党首討論会へ出かける時はお前がサマー医師につき添うことを邪魔しないように、サマーを護衛する隊員らに言い含めておく」
「ありがとうございます」
セイヤも立ち上がり、頭を下げた。
「今はとにかくゆっくり休んでおけ。ご苦労だった」
ルッカーは片手を上げ、立ち上がったセイヤを座るように促すと、部屋を出て行った。
・
その後、午後の診察が終わった頃を見計らい、セイヤは再び、サマー医師のもとを訪れ、公の場で共和党との関係を証言するよう求めた。
「明日、党首討論会が公共放送局で生放送されます。おそらく共和党は、マオー氏とヤハー氏は孫の件でシベリカ国で臓器売買に加担したとし、そのことをクジョウ首相は知っていて隠そうとしたと追い込むでしょう。
そこで、あなたは共和党との関係を告白し、全てを公表するのです。生放送ですから、テレビは余すことなく世間に伝えるでしょう。これで共和党はあなたを口封じできなくなります。あなたの身の安全は保障されたも同然です」
「……党首討論会へ乗り込むのですか? そんなことができますかね……」
「それについては、こちらで何とかします。必ずあなたをお守りします」
「……分かりました」
最初の頃の不遜な態度はどこへやら、サマー医師はしおらしくうなだれた。そんなサマーを冷やかに見つめながら、セイヤの口許は笑みをたたえ続けた。
部屋の外ではルッカーから派遣された隊員らが患者を装い、サマーを護衛、監視していた。
・
そして今――
公共放送局の党首討論会が行われているスタジオでは、サマー医師が『シベリカ国で心臓移植を受けたマオー氏とヤハー氏の孫の情報』を3年前、共和党党首の秘書に渡したことを告白していた。
さらにその2年後、つまり今から1年前、マオー氏とヤハー氏の孫と同時期にシベリカ国で心臓移植を受けた全ての子どもの情報が欲しいと言われ、渡したという。
なぜ、政界とは関係ない一般人のそのような情報を欲しがったのかは知らない、と述べた。
ちなみにマオー氏・ヤハー氏含めこれら心臓移植を受けた5件の家族については、個別に対応し、お互い知り合いになることを避けさせたという。
移植を受けたシベリカ国の病院も5件ともそれぞれ異なり、トウア国立中央総合病院での診察もニアミスさせないよう注意をしたとのことで、5件の家族はお互いを知る機会がなかった。
「では、共和党は先に起こった3件の、子どもが次々殺された事件について、その被害者たちの共通点をすでに知っていたということですね。そして、マオー氏とヤハー氏のお孫さんも同じ共通点を持っていたことも」
今度はクジョウ首相が共和党党首に詰め寄る。
共和党党首は言葉を失っていた。
「ひょっとしてマオー氏とヤハー氏を脅迫したのは共和党ですか?
共和党は、臓器売買が疑われるシベリカで心臓移植を行った一般人の子どもの情報をも持っていたのでしょう?
先の3件の事件について、被害者の共通点に気づいた共和党が、マオー氏とヤハー氏に孫の殺害予告を仕掛けたのではありませんか?
マオー氏やとヤハー氏が騒ぎ立てれば、世間が注目し、民主平和党関係者がシベリカ国で心臓移植を受けたことが取り沙汰され、臓器売買に関わったとし、民主平和党のイメージを落とせます。共和党はそれが目的だったのでしょう?」
「いえ……そんなことは決して……」
「脅迫者は、先の三件の殺人事件の被害者がシベリカで心臓移植を受けたことを示唆しました。だからマオー氏もヤハー氏もこの殺害予告を単なる悪戯ではないと判断したのです」
「いえ……殺害予告などしてません。マオー氏とヤハー氏が脅迫をされ、治安局に極秘に警備を頼んだらしいという話を秘書から聞いただけです」
共和党党首はさっきまでの勢いはどこへやら、その声には全く力が感じられなかった。
「先日、マオー氏のお孫さんへの襲撃未遂事件が起きましたが、共和党がやらせたのでは?」
「違います」
共和党党首は脂ぎった顔を歪ませ激しく否定した。
「まさか、三人のお子さんを殺害したのも、共和党ですか?」
「違います。そんなことをするはずないでしょ」
さすがに共和党党首は声を荒げた。
だが、クジョウ首相は攻撃の手を緩めなかった。
「ところで、なぜシベリカで心臓移植をした一般人である子どもたちの情報を欲しがったのですか? 何が目的だったんですか?」
これはセイヤも知りたかったが、目的はおそらく……シベリカ工作員であったあの少女を取り込むためだったのだろう。
そう、共和党はシベリカ工作員がいると疑われる組織へ仲介者=スパイを送り込み、そこで工作員の少女をターゲットにし、少女の欲しがっているものを探り、それが「8年前のある時期にシベリカで心臓移植を受けた子どもの情報だ」と知り、取引を持ちかけた。
共和党にとっての見返りは工作の情報だ。それでシベリカ工作員による国会襲撃作戦を知ったのだ。
だから国会が襲撃されたその日、共和党党首は欠席した。一日通して、重要案件を審議し、採決する大事な場なのにだ。病欠扱いということだが、もちろん仮病を使い、診断書はサマー医師にでも書かせたのだろう。
ただ、さすがに共和党議員全員が欠席するのはおかしいので、ほかの共和党議員は出席していた。しかし、銃撃され犠牲になった共和党議員はいない。対して、一番多く犠牲者を出したのは民主平和党だ。
襲撃犯と思われた少女は、実は『共和党の議員連中を守るため』にあの場にいたのかもしれない。それも少女に求められた取引内容だった。
そして少女が逃走を果たせるよう、共和党側が手はずを整えていたのだろう。
国会が襲撃され、多くの死傷者を出したが、欠席していた議員や生き残った議員について目を留める者などいなかった。
セイヤもサマー医師にたどりつくまで、共和党に一人も犠牲者が出なかったことに疑問を抱くことはなかった。
その共和党はさらに『少女の復讐』を利用して、政敵を嵌めることを考えた。
まず先の三人の子どもらが先に殺害されるように仕向け、それからマオー氏とヤハー氏を脅した。
選挙前ということで、マオー氏とヤハー氏は必ずクジョウ首相に相談する。首相は、自分の秘書と党の重鎮の親族がシベリカ国で心臓移植したことを選挙が終わるまで隠そうとするだろう。
それを共和党は狙った。「保身のために公にすべき情報を隠そうとした」とクジョウ首相を責めることができる。世間がこれを知れば、クジョウ首相のイメージは相当悪くなる。
が、共和党の目論見は失敗した。それどころか共和党はもう終わりだ。
――でも、これって結局、クジョウ首相率いる民主平和党に肩入れしてしまったことになるんだろうか?
自分がやったことは正しかったのか、セイヤにはよく分からなかった。そもそも、シベリカ内紛工作に加担した自分に、共和党の悪事を責める資格はない……。
そう今回、処分覚悟で動いたのは……罪滅ぼしのため、自分の罪悪感を軽くするため、つまりただの自己満足のためだったのかもしれない。
それに共和党と違わず、民主平和党だって裏では相当えげつないことをしているだろう……。
と、ここでふとセイヤは違和感に捉われる。
――本当に共和党党首が黒幕なのか?




