夢の世界では「恥ずかしさ」を感じない+暗号の答え
語り手は明日谷大和君、変身をする前の一人称は「俺」で、
人前だと「僕」に、「キラナデシコ」に化けると「私」に代わります。
ではきらめく世界をお楽しみください。本日もお読みいただき、ありがとうございます。あなたに良きできごとが起こりますよう、心からお祈りします。
「すごい世界だった」
アルムの世界から地球に帰った俺たち。朝日が昇り始めていた。
「とても楽しい世界だった。やまにぃ、うらやましい。私もまた行きたい。女の子になったやまにぃ、きれいでムカッと来る」
「なんでだよ」
「だって、私たちよりかわいいもん、ね、留奈姉」
美鈴が言うと、姉はうなずいだ。
「あちらの世界でお風呂に入ったとき、色々な意味で驚いた」
「カナセのあそこ、大きかったもんね。やまにぃの大きなところ、見たことがない」
「見なくていいの、美鈴」
――風呂場で何があったか知りたいって?
ステージ出演を終え、俺たちはすぐにアルムの世界へ戻った。惑星シリウスで「お風呂に入りませんか」誘われたけれど、奴らはのぞくに決まっているから断った。
「大和君、ナデシコに化けなよ」
由良が俺の手を握り、うなずく。
「ちょっと、大和も一緒に入るの? あんたとカナ君は男風呂でしょ」
「男風呂ってなんだ、留奈」
カナセが尋ねる。
「あなたのような体格をした人が入るべきお風呂」
「大和のいる地球ではそうなっているのか?」
俺たちはうなずく。
「ふうん、おかしいの。男だろうが女だろうが、裸になれば皆一緒。どうでもいいだろ」
カナセは素っ裸になった。美鈴が顔を赤く染め、マナテの後ろに隠れた。
「やまにぃとどちらか大きいの?」
「輝け、私の希望――」
俺は美鈴の言葉を無視して、私に化けた。髪の毛を縛り、湯船につかる。留奈はただ立っている。
「どうしたの? 私の中にいる彼は目を閉じているよ、留奈、美鈴」
美鈴と留奈が服を脱ぐ。留奈の胸は美鈴より小さい。美鈴は私より少し小さい。留奈が後ろを振り向くと、ふっくらしたお尻にくびれていない腰、細い腕に脚、モデルとして活躍してもおかしくない。美鈴はむっちりな尻にくびれのある腰、姉より少し太い腕と脚。
「留奈ちゃん温か~い」
由良が後ろから留奈に抱き着く。
「由良はいいね、胸が大きくて」
「留奈ちゃんだって大きくなるよ」
「そうですよ、いい運動があるのですよ、留奈さん」
私は一人、湯船につかる。彼は耳をふさいでいるみたい。
「マナちゃん、このお風呂はどんな効能があるの?」
「体のあらゆる疲れをとるのですよ。美鈴ちゃんがあちらの世界へ帰ったとき、元気な姿で1日を送りますの」
「ふうん。私、一つ疑問があるんだけど、マナちゃんは好きな人、いるの?」
「大和さんです」
マナテは堂々と答えた。にやりと私を見る美鈴。
「やまにぃのどこがいいの?」
「本当だ、あいつのどこがいいんだか」
カナセはマナテの隣によって、尋ねる。
「かっこいいところ。大和さんはいざというとき、一人で前に進みます。そういう人、私の周りにはいないので」
「僕がいるじゃないか」
カナセは自分を指さす。
「カナセは何も考えないおバカさんだから」
「マナテよりはバカじゃないけどな」
マナテは微笑みながら、カナセの胸をつねった。
「カナセ、もしかしてマナちゃんが好きなの?」
「嫌いだよ。でも大和なんかには取られたくない。あんな優柔不断で須田愛良にも告白できない意気地なしに取られたくない」
じゃばあっ。留奈が由良と愛良に挟まれて、お湯が激しく暴れている。
「じゃあカナセ、お前はできるの?」
「できるに決まっている。僕を舐めないでほしいね。へっ」
カナセが見下すように美鈴を見ると、美鈴の眉毛が逆への字型になり、彼女の頬をつねる。
「お前さ、こういうことをされたいんだろ。だから私ややまにぃを見下すんだろ?」
「頬はやめろ」
「カナセはこっちのほうが効きますよ、美鈴ちゃん」
マナテがカナセの彼を足で踏みつける。
「二人とも、これで胸が大きくなるのね? なるのね!」
「ええ。私たちの世界ではお互いの胸を合わせて、バストアップを図るのですよ」
留奈は由良と愛良の胸をこすこすこすと合わせていた。
「その調子だよ、留奈ちゃん」
「ナデシコも混ざってください」
私の中にいる彼は耳と目をふさいでいる。素直に見ればいいのに。あなたもそう思うでしょ?
愛良が私の手を引っ張る。胸と胸が音を立てて重なる。あら、ふらっと意識がなくなっていく。もう、大和はだらしないんだから……。
……俺はあの時の出来事を、一つずつ思い出す。ズボンが張って、まともに立てない。あんたが男なら意味、分かるだろ?
「私、なんでカナセに『お仕置き』しちゃったんだろう。というか、男の人のあれを踏みつけて、握って……あの世界は、なんというか、私が私でない。私は意地悪な女の子じゃないのに」
美鈴が首を横に振った。
「私も普段言えないことを、堂々と言った。それにコンプレックスを人前でさらすなんて、とても恥ずかしい。おまけに女に化けた大和を見ても、違和感すら抱かなくなった」
姉の体から汗が逃げだした。
「時間がたつの、早かったね。一週間が早く過ぎたような気分」
美鈴が言うと、姉が顔を上げ、すたすた歩き、紙を持ってきた。俺と美鈴に出したクイズだ。
「この問題の答え、わかった? 美鈴がさっき言った言葉がヒントだよ」
「金でしょ?」
アルムの世界から普通に変えると、頭がさえる。
「どうして、やまにぃ?」
「漢字にそれぞれ月火水木金土日が隠れている。
早→日 有→月 灰→火 永→水 本→木 圧→土。
ある規則は『曜日』で、■の中には金曜日の金が入る」
「正解、金が入る漢字なら、それも正解よ。針とかね」
留奈が学習椅子に座る。
「大和、クイズの後は愛良ちゃんとどんなデートをしたのか、聞きたいんだけど。今更隠すようなこともないでしょ」
「やまにぃ、聞きたいなあ。聞かなければ、須田愛良ちゃんって子を見つけて、聞いちゃうぞ」
愛良ちゃんに危機が及ぶ。
「わ、わかった。今から話をするよ」
女はどうして人の恋に関心を抱くのだ。自分の恋について、まともに話をしないくせに。
お読みいただきありがとうございます。
次回は大和君が好きな女の子、須田愛良ちゃんの語りから始める予定です。
デートごっこをするのですが、不思議な世界へ引っ張られていくのですねえ……
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