出逢い Ⅱ
5分くらいたったのだろうか。
霧の中に向こう岸が見えてきた。
先ほどの所とは違い、花畑はない。花どころか、草木の1つも生えていない広い荒野が広がっていた。
淀んだ風が吹きすさぶ荒野の中に、1人の男が立っている。
おそらくあれが、老婆の言っていた役人だろう。
軍服にも見える深緑の服を纏い真っ直ぐに立っている。
乙喜は船を降り、役人に近づいた。
「あの~・・・・・・」
「あ、はいはい。 名前と年齢教えてくれる?」
役人も、老婆と同じものらしき資料を持っている。
「芦川乙喜、17歳です」
「あしかわ~あしかわ~っと・・・・・・」
「川のお婆さんの所では、私の名前が載ってなかったんです」
役人もバラバラと資料をめくっている。
やがて最後までめくってしまった。
「あれ? 俺のも君の名前ないよ?」
「え?」
「ああ、大丈夫大丈夫。 こういうのたまにあるんだよね~。 ま、とりあえず上がって」
「上がるって・・・・・・どこに?」
上がるも何も、見渡す限り山さえもないこの荒野には今、役人と乙喜しかいない。
ほかに建物も何もない。
役人はしゃがみこみ、手を地面にあて、何やら唱えた。
「開け天の戸、王への門」
唱え終わった役人が地面から手を離すと、荒野一帯に地震とも思えるほどの揺れが起こった。
すると、乙喜の目の前に地面から土の塊が出てきた。
役人がコンコンとノックすると、土が剥がれ、扉が現れた。
2メートルほどの鉄の重たそうな扉だ。が、役人は軽く扉を押して開けた。
扉の先には、どこかへ登っていく階段があった。
「こういうのは上のミスだからさ、俺にはどうにも出来ないんだよね。 まあどちらにしろ閻魔様のとこには行かなきゃいけないから」
「えんまさま?」
「ほら、人間界でも聞かなかった? 死んだ人間は閻魔大王のもとで生前の所業を暴かれ、天国に行くか地獄に行くかを決められるやつ。 君をどうするかも最終的に決めるのは閻魔様だし、俺を通じていろいろするより直接話したほうが早いしさ。 とりあえず行ってみな」
「・・・・・・はあ」
(なんだかたらい回しにされてるような気がする・・・・・・)
正直面倒になってきたが、役人の言うとおり、直接閻魔大王とかいう人に話したほうがよさそうだ。
もしかしたら、自分を殺した奇妙な化け物たちのことも何か知っているかもしれない。
役人が、行け、と顎で階段をさした。
乙喜は足早に階段をのぼって行った。




