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人間としてのオワリ Ⅰ
バシャッ!!
低い音をたてながら、乙喜の横を車が通っていった。薄汚い水溜まりの水をお見舞いされた。
気分は最悪。
傘も忘れた。
学校の校門の前で、どうすることも出来ずに、乙喜は立ち尽くしている。
他の生徒たちは、友人や恋人の傘に入れてもらったりしながら、帰っていく。
「芦川さん、傘ないの?」
「うん。 家に忘れちゃって……」
「うわ~大変!! 結構これから降りそうだけど、風邪ひかないようにね」
「うん。 ……じゃあ明日ね」
「ばいば~い」
「………………」
一緒に傘に入る友達なんていない。
遠くうしろのほうからは、陰口が聞こえる。
「いれてあげたら?」
「いや~悪い子じゃないかもしんないけどさ、一緒に傘に入って、あたしまで憑かれたら……ねぇ」
「それに今時、見えるとかイタイっしょ」
「たしかにね~」
やっぱり知られている。
高校生になってからは、見えても見えないようにしていた。
3階なのに窓の外に人がいたことも。
すれ違った人の肩に落ち武者がついていたことも。
こっくりさんをしている人の横に、本当にこっくりさんがいたことも。
全部黙っていたけれど、中学生の頃の話が、高校まで回ってきているようだ。
嫌な雨だ。
単に陰口を言われたからとか、そういうことで嫌に感じたわけではない。
思い出す。
同じように雨が降っていた日。兄が死んだことを。




