2.瞳に呑まれて奪われる②
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それからというものの、自然と火星がいるのが分かると
無意識に見つめてしまうようになってしまった。
今まではクラスも離れているため、
そんなに見かけることもなかったのにも関わらず、
すぐに火星がいるのに気付くようになってしまった。
なんとも、不思議なものである。
(火星の行動パターンがあまり変わらず、ほぼ同じだからなのか…?)
そして遠い場所で見つめてる分には気づかれることはないのだが、
さすがに近い場所だと視線を感じるらしく、
すぐ火星に気づかれ、
そのたびに俺に対して不思議な表情を浮かべる。
その表情を見た瞬間に、
自分が見つめてたのだと、我に返る。
火星にしてみれば、意味が分からないし
下手したら、かなり不審者だろう。
そのため、生徒会で一緒になったときに、
お詫びも兼ねて一言伝えることにした。
「火星」
「?どうしたの?」
「最近…俺、ちょっとぼんやりしているから
もし視線ぶつかっても気にしないでほしい」
「うん…?? よくわからないけど…、
気にしないでほしいっていうなら…わかったよ」
不審なうえに、よくわからない発言をしても
気持ちを汲んで、了承してくれる火星は優しかった。
「…ありがとう」
「…!」
俺が普段あまりそういうことを
言わなそうだと思われているのだろうか、
感謝の言葉に、火星は少し驚いていた。
そして、そのあと少し不安そうな顔になった。
「何か、…あったの?」
俺が、悩んでいるのとでも思ったのだろうか。
火星は優しいので、こんな意味不明で
不審な行動をしている俺にでも、
心配の言葉をかけてくれるのだ。
「俺もよくわからないけど、
多分、心境の変化、…かな」
(火星に対しての、ね…)
目の前の相手にそう言いかけそうになったけど
さすがに、心の中で留めた。
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―――そんなこんなで、俺の無意識な行動は
数週間経っても変わらず。
どうしたものか、と自問自答していたある日。
俺は放課後、日直で日誌を提出しに職員室まで行き、
そのまま家に帰るはずが、教室に忘れものがあるのを思い出し、
二度手間だが、Uターンして教室に戻ろうとした。
(最近火星に気を取られているからか、忘れることが増えたな…)
こないだのことから、うっかり忘れものや
ミスすることが増えたように感じた。
今までこんなに誰かのことで、
普段の生活に支障が出たことがなかった。
最初は時間が経てばこういうことはしなくなるだろう、
とさえ思っていたのに、
以前の自分には戻れなくなっていた。
(水星があんなに興味をもっていたことを
小馬鹿にしていたのに、俺も人のこと言えないな…)
そんなことをぼんやり考えながら、
自分の教室に戻っていたときだった。
―――ガタンッ!!!
「~~~いい加減にしろよっ!!!!」
いきなり響いた大きい物音と、
身に覚えのあるような声に立ち止まってしまう。
(あの声、…火星?)
そう思った瞬間、気づいたら
物音や声が聞こえた方へ近寄っていた。
「ここって…」
火星が所属している軽音部の部室だった。
普段は完全に閉められているだと思うが
若干、部室のドアが開いていた。
だから、声や音が漏れたのだろう。
おそるおそる覗くように見ると、
一人の男と火星がその場にいるのがわかった。
そして、火星は目の前にいる男に
腕をつかまれているようだったが、
次の瞬間、バチンッ!と鈍い音が響く。
火星は目の前の男の頬に、平手打ちをしたようだった。
「…っ、俺のこと、裏切ったのに、
…よく、そんなことが言えますね」
(泣いてる…?)
あまりにも衝撃的なシーンに頭が追いついていないが、
火星が怒りながら涙をこぼしているのがわかった。
いつも落ち着きがあるし、
余程のことじゃ怒らなそうな、あの火星が。
普段の姿から想像もできないくらい
感情的になり、怒りをあらわにしている。
修羅場のような状況に出くわしてしまい、
第三者の関係のない俺が見てはいけなかったものだと、
一瞬で分かってしまった。
急いでこの場を立ち去らなきゃいけないのだが、
足が言うことを聞いてくれず、動悸が激しくなる。
(動揺、している…のか?)
今までの俺なら修羅場に例え遭遇したとしても
素通りだっただろう。
なのに、今回は相手が知っている人間だったからか、
―――それとも火星だったからなのか。
どうすればいいのか分からず、立ち尽くしてしまった俺は、
自分の背後に人が立っていたのも気付かなかった。
「あーあ…
見ちゃったね?」
耳元で囁かれて、心臓が止まるかと思うくらいに驚く。
おそるおそる後ろを振り向くと、
そこには、見たことがない男が立っていた。
意地悪い笑みを浮かべ、シーッと言いながら
俺の口元を覆うようにして、話すことを静止される。
「ここじゃあ、場が悪いなぁ。
…場所移動するぞ」
再度耳元で小声で、囁かれてぞっとするが
そのおかげで、少し冷静さを取り戻すことができたようだ。
その男は俺についてこいよ、と言い
その場を離れるように歩き出した。
(自業自得だけど、とんでもない状況に巻き込まれたな)
なんて、どこか客観的に思いながら俺は、
言われるがままに後に続いたのだった。
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