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惑星サイダー  作者: あろ
地球と火星のお話
6/18

1.瞳に呑まれて奪われる①

━━━━━━━━━━━━━━━━━


地球side


━━━━━━━━━━━━━━━━━


初対面の時は、たどたどしくて

色んなことに困惑している感じだった。


徐々に慣れていくとそれは落ち着いてきて、

誰かが騒いだりして怒られたりすると、

一歩後ろで苦笑いしている。


いつ見ても、そんな感じだったから、

普段の姿はこんな感じなのだろう。


そして見た目は近寄りがたい感じなのに

考え方は地味で真面目だし、


感情の起伏は激しいほうじゃないから

大して気にも止めていなかった。




そう思っていたのに、最近気づくと

彼を目で追ってしまうのは、



何故だろう―――。



━━━━━━━━━━━━━━━━━



俺は高校から入学したものの、面白いこともないし

人と話すのもそんなに好きでないため


一人でボーっとして過ごしていた。


やることやっていれば教師にも怒られることもないし

テストの点数も、悪くなければとやかく言われることもない。


友達付き合いも必要でない限りしない。

もはやクラス内では空気みたいな存在だろう。



それでも別に良かった。干渉される方が面倒くさいし。




生徒会に入ったのも、特段想いがあって入ったわけではない。


後々のことを考えれば、入って良かったのだが、

当時は、なんとなくで生徒会に入ろうと思い、


結果的に生徒会に入れてしまった。



なので、生徒会長である木星が、

初めて2年に会ったときに話した言葉が


個人的には、かなり重く感じた。


(まあ、本来はあの考え方が理想で、模範なんだろうけど)



「なあ~、いつも何考えてんの?」



そんなことをぼんやり考えていると、

生徒会の中でもムードメーカーである、水星が話しかけてきた。



今、生徒会室にいる2年は俺と水星だけ。

火星は部活で、金星は特別講習を受けていると聞いた。



「別に、何も」


「ふーん…?お前たちって何考えてるか、わかんないよな」

   

「お前()()?」


「うん、お前と火星」




「…は?火星?」



意外な人物に俺は、疑問符を頭に浮かべる。


元々人に興味ないが、一般的に『何考えているかわからない』と言われる部類は

生徒会副会長である、土星なのではないかとは思う。



「うん!」



そこは土星だろ、と言いそうになったが

話が続きそうなので言おうとした口を止めた。


すると、何も言ってこない俺を見た

水星が話を勝手に続ける。



「だってよ、なんか距離?というか壁を感じない?」


「…誰もが水星のように、フレンドリーなわけないでしょ」



話が終わらなそうだと感じた俺は、

渋々会話を続けてやることにした。



「それは、金星にも同じこと言われたわ!」



ニカっと笑顔になる水星に、

いや褒めたわけじゃないけど、とボソッと吐く。


「え、ひどっ!そこは褒めてよ!!誰もがそうじゃないのは分かっているけど、


 なんか今までに関わったことないタイプなんだよね~、お前たちって」


自分で言うのもなんだが、傍から見れば

俺はかなり変わった部類に見られていて、


話しかけたらいつも驚かれる。



「それで俺たちが同じってこと?」


「同じタイプだとは思っていない!

 別に地球には壁を感じないし!」


「あ、そう…」


「そういう反応も金星と同じなんだけど?!

 もしかして金星の親族なの?!」


「…いや、お前が馬鹿なだけでしょ」


「ハア~?」


意味が分からない話をされ、

はあ?と言いたいのはこっちの方だ。


いつも金星はコイツの相手してんの大変だなと少し同情した。



「こら!!そこ、静かにしろ!!!」



水星は人より声が大きいので、

普段からガミガミとうるさい天王星に


目をつけられて怒られてしまった。



なので話はそこで終了、となった。



しかし、生徒会が終わり帰ろうとしていた俺に

水星は、また話しかけてきた。




「こないださ~、見ちゃったんだよ」




━━━━━━━━━━━━━━━━━



「…何、まだ話すの?」


「当たり前だろ!ちょうどいいところで止められたんだから」



生徒会は雑談する憩いの場だと勘違いしているのか?


と思いながらも、早く終わらせて帰りたいので

また渋々話を聞くことにした。


「…で、何を見たの」


興味はないが、水星が話したそうにしているから仕方ない。



「火星の笑ってるところ!!!」



でも、聞いた俺が馬鹿だったかもしれない、と思い

呆れてそそくさと帰ろうとした。


「おいおい!まだ終わってねぇよ!!」


「何、しつこいんだけど」


帰ろうとした俺に水星は、静止の言葉を投げかけて

さらに大きい声で、問いかける。


「地球は見たことあったのか?!」


「声でか…。ないけど、…別に興味ないし。


 というか、よくそんな大事件みたいな感じで話せるね」



仕方なく、帰ろうとしたのを止めて水星の方へ向き直す。



「だってさ~、想像つかないくらい笑ってたんだぜ?

 あれが本当だとしたら俺らがみてるのは、隠している姿ってことじゃん」


「…まだ馴染めてないだけじゃないの?」


「え~、だとしたら落ち着きすぎてる気がするんだよな~」



正直俺はそんなことはどうでもいいんだが

水星的には、かなり驚いた出来事だったんだろう。



確かに、火星は黙っていればクールだ。



特にイレギュラーなことがなければ

同世代の方でも、普段は落ち着いている方だと感じる。


しかも小柄で中性的な顔立ちなので、

見た目が少しだけ派手だが、威圧感もない。



いたって普通の男子高校生だと思う。



「水星が、誰に対しても接し方が変わらなすぎなだけでしょ…


 むしろ火星が普通なの」



普段の表情や様子に変化があるからといって

興味が沸く水星に、俺は理解できなかった。



「ふ~ん、そういうもんなのかな」


「そういうもんなの」


「でも、地球は変わらないよな~」



水星と同じように俺も、他人に対して接し方を変えたりしないが、

本来は親しい間柄にしか、見せない顔や姿だってあるだろう。



ただ、俺たちを含め、生徒会に対しては

まだ信頼関係を構築していないだろうし。



そもそも生徒会に入ってから、まだ2か月しか経っていない。




「とりあえず、火星が何考えているかなんて、


 俺たちには関係ないでしょ」



すぐ他人に心を開けるか、なんて人それぞれなのだ。




━━━━━━━━━━━━━━━━━



翌日。午前の授業が終わり、お昼休み。


移動教室があるので、自身の教室ではなく

近くで弁当と教科書類を持って移動しようと準備していた。



(あれ、箸忘れた…?まじか…)



家から箸を持ってくるのを忘れたようだ。


食堂でお箸をもらうしかないか、と思ったが

移動教室の場所から少し離れているので急がないといけず、

どうしたものか、と一瞬考える。



「仕方ない。今日はなんか買うか」



お昼休みだけ、おばちゃんがパンを売りに来る。



それは昇降口近くで行われ、自分の教室からは離れているが

移動教室の場所からはそんなに離れていない。



せっかく用意してくれた親には申し訳ないが、

弁当は破棄するか持って帰るかして



今日はパンを買ってそのまま近くで食べるか、なんて

ぼんやり考えながら購買へ向かっていた。



廊下を早歩きしていると、



「あはははっ」



―――ふと、笑い声が聞こえる。



いつもなら気にも留めないのだが、

なぜかその時はその声に反応してしまった。



横を向くとちょうどそこには

教室の入り口付近に2~3人いて、


その中に火星がいた。




友達と笑っている、火星。



ただそれだけの光景なのに。

それを見た瞬間、立ち止まってしまった。




いつもと違った笑っている姿に驚いたから、

立ち止まってしまったわけではない。





「…」






―――笑っている姿に思わず見入ってしまった、

というのが正しかった。



(水星が、大袈裟に言ってると思ってたけど…)






「…あれ、地球…?」



急いでたことなんて忘れてしまうくらい、

気づいたらジッと見つめてしまっていたようだ。



視線に気づいた火星が、俺に気づく。



「!」


話しかけられて、ハッとした。


黙ったまま見つめてきた俺に、不思議に感じたのであろう火星は

少し困惑したような顔で、俺に話しかけている。



「なにか、用事でもあった…?」


「いや、別に…ない……


 ごめん、急いでるから、また」


「え、ちょっと…!」



呼び止めようとした火星の声を背に、

急ぎ足で逃げるように立ち去る。


かなり失礼だったが、親しい間柄でもない上に

自分のあの状況を説明することは


今の俺では不可能に近かった。



(というか、水星が余計なこと言うからじゃん…)



自分でも意味が分からない行動に、

あんなことをしてしまったのは水星のせいだ、


と心の中で責任転嫁しながら

本来の目的である場所へ向かった。



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