1.瞳に呑まれて奪われる①
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地球side
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初対面の時は、たどたどしくて
色んなことに困惑している感じだった。
徐々に慣れていくとそれは落ち着いてきて、
誰かが騒いだりして怒られたりすると、
一歩後ろで苦笑いしている。
いつ見ても、そんな感じだったから、
普段の姿はこんな感じなのだろう。
そして見た目は近寄りがたい感じなのに
考え方は地味で真面目だし、
感情の起伏は激しいほうじゃないから
大して気にも止めていなかった。
そう思っていたのに、最近気づくと
彼を目で追ってしまうのは、
何故だろう―――。
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俺は高校から入学したものの、面白いこともないし
人と話すのもそんなに好きでないため
一人でボーっとして過ごしていた。
やることやっていれば教師にも怒られることもないし
テストの点数も、悪くなければとやかく言われることもない。
友達付き合いも必要でない限りしない。
もはやクラス内では空気みたいな存在だろう。
それでも別に良かった。干渉される方が面倒くさいし。
生徒会に入ったのも、特段想いがあって入ったわけではない。
後々のことを考えれば、入って良かったのだが、
当時は、なんとなくで生徒会に入ろうと思い、
結果的に生徒会に入れてしまった。
なので、生徒会長である木星が、
初めて2年に会ったときに話した言葉が
個人的には、かなり重く感じた。
(まあ、本来はあの考え方が理想で、模範なんだろうけど)
「なあ~、いつも何考えてんの?」
そんなことをぼんやり考えていると、
生徒会の中でもムードメーカーである、水星が話しかけてきた。
今、生徒会室にいる2年は俺と水星だけ。
火星は部活で、金星は特別講習を受けていると聞いた。
「別に、何も」
「ふーん…?お前たちって何考えてるか、わかんないよな」
「お前たち?」
「うん、お前と火星」
「…は?火星?」
意外な人物に俺は、疑問符を頭に浮かべる。
元々人に興味ないが、一般的に『何考えているかわからない』と言われる部類は
生徒会副会長である、土星なのではないかとは思う。
「うん!」
そこは土星だろ、と言いそうになったが
話が続きそうなので言おうとした口を止めた。
すると、何も言ってこない俺を見た
水星が話を勝手に続ける。
「だってよ、なんか距離?というか壁を感じない?」
「…誰もが水星のように、フレンドリーなわけないでしょ」
話が終わらなそうだと感じた俺は、
渋々会話を続けてやることにした。
「それは、金星にも同じこと言われたわ!」
ニカっと笑顔になる水星に、
いや褒めたわけじゃないけど、とボソッと吐く。
「え、ひどっ!そこは褒めてよ!!誰もがそうじゃないのは分かっているけど、
なんか今までに関わったことないタイプなんだよね~、お前たちって」
自分で言うのもなんだが、傍から見れば
俺はかなり変わった部類に見られていて、
話しかけたらいつも驚かれる。
「それで俺たちが同じってこと?」
「同じタイプだとは思っていない!
別に地球には壁を感じないし!」
「あ、そう…」
「そういう反応も金星と同じなんだけど?!
もしかして金星の親族なの?!」
「…いや、お前が馬鹿なだけでしょ」
「ハア~?」
意味が分からない話をされ、
はあ?と言いたいのはこっちの方だ。
いつも金星はコイツの相手してんの大変だなと少し同情した。
「こら!!そこ、静かにしろ!!!」
水星は人より声が大きいので、
普段からガミガミとうるさい天王星に
目をつけられて怒られてしまった。
なので話はそこで終了、となった。
しかし、生徒会が終わり帰ろうとしていた俺に
水星は、また話しかけてきた。
「こないださ~、見ちゃったんだよ」
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「…何、まだ話すの?」
「当たり前だろ!ちょうどいいところで止められたんだから」
生徒会は雑談する憩いの場だと勘違いしているのか?
と思いながらも、早く終わらせて帰りたいので
また渋々話を聞くことにした。
「…で、何を見たの」
興味はないが、水星が話したそうにしているから仕方ない。
「火星の笑ってるところ!!!」
でも、聞いた俺が馬鹿だったかもしれない、と思い
呆れてそそくさと帰ろうとした。
「おいおい!まだ終わってねぇよ!!」
「何、しつこいんだけど」
帰ろうとした俺に水星は、静止の言葉を投げかけて
さらに大きい声で、問いかける。
「地球は見たことあったのか?!」
「声でか…。ないけど、…別に興味ないし。
というか、よくそんな大事件みたいな感じで話せるね」
仕方なく、帰ろうとしたのを止めて水星の方へ向き直す。
「だってさ~、想像つかないくらい笑ってたんだぜ?
あれが本当だとしたら俺らがみてるのは、隠している姿ってことじゃん」
「…まだ馴染めてないだけじゃないの?」
「え~、だとしたら落ち着きすぎてる気がするんだよな~」
正直俺はそんなことはどうでもいいんだが
水星的には、かなり驚いた出来事だったんだろう。
確かに、火星は黙っていればクールだ。
特にイレギュラーなことがなければ
同世代の方でも、普段は落ち着いている方だと感じる。
しかも小柄で中性的な顔立ちなので、
見た目が少しだけ派手だが、威圧感もない。
いたって普通の男子高校生だと思う。
「水星が、誰に対しても接し方が変わらなすぎなだけでしょ…
むしろ火星が普通なの」
普段の表情や様子に変化があるからといって
興味が沸く水星に、俺は理解できなかった。
「ふ~ん、そういうもんなのかな」
「そういうもんなの」
「でも、地球は変わらないよな~」
水星と同じように俺も、他人に対して接し方を変えたりしないが、
本来は親しい間柄にしか、見せない顔や姿だってあるだろう。
ただ、俺たちを含め、生徒会に対しては
まだ信頼関係を構築していないだろうし。
そもそも生徒会に入ってから、まだ2か月しか経っていない。
「とりあえず、火星が何考えているかなんて、
俺たちには関係ないでしょ」
すぐ他人に心を開けるか、なんて人それぞれなのだ。
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翌日。午前の授業が終わり、お昼休み。
移動教室があるので、自身の教室ではなく
近くで弁当と教科書類を持って移動しようと準備していた。
(あれ、箸忘れた…?まじか…)
家から箸を持ってくるのを忘れたようだ。
食堂でお箸をもらうしかないか、と思ったが
移動教室の場所から少し離れているので急がないといけず、
どうしたものか、と一瞬考える。
「仕方ない。今日はなんか買うか」
お昼休みだけ、おばちゃんがパンを売りに来る。
それは昇降口近くで行われ、自分の教室からは離れているが
移動教室の場所からはそんなに離れていない。
せっかく用意してくれた親には申し訳ないが、
弁当は破棄するか持って帰るかして
今日はパンを買ってそのまま近くで食べるか、なんて
ぼんやり考えながら購買へ向かっていた。
廊下を早歩きしていると、
「あはははっ」
―――ふと、笑い声が聞こえる。
いつもなら気にも留めないのだが、
なぜかその時はその声に反応してしまった。
横を向くとちょうどそこには
教室の入り口付近に2~3人いて、
その中に火星がいた。
友達と笑っている、火星。
ただそれだけの光景なのに。
それを見た瞬間、立ち止まってしまった。
いつもと違った笑っている姿に驚いたから、
立ち止まってしまったわけではない。
「…」
―――笑っている姿に思わず見入ってしまった、
というのが正しかった。
(水星が、大袈裟に言ってると思ってたけど…)
「…あれ、地球…?」
急いでたことなんて忘れてしまうくらい、
気づいたらジッと見つめてしまっていたようだ。
視線に気づいた火星が、俺に気づく。
「!」
話しかけられて、ハッとした。
黙ったまま見つめてきた俺に、不思議に感じたのであろう火星は
少し困惑したような顔で、俺に話しかけている。
「なにか、用事でもあった…?」
「いや、別に…ない……
ごめん、急いでるから、また」
「え、ちょっと…!」
呼び止めようとした火星の声を背に、
急ぎ足で逃げるように立ち去る。
かなり失礼だったが、親しい間柄でもない上に
自分のあの状況を説明することは
今の俺では不可能に近かった。
(というか、水星が余計なこと言うからじゃん…)
自分でも意味が分からない行動に、
あんなことをしてしまったのは水星のせいだ、
と心の中で責任転嫁しながら
本来の目的である場所へ向かった。
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