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惑星サイダー  作者: あろ
地球と火星のお話
16/18

6.足りない心を埋めてあげたい②




「それ…俺じゃなくて、直接火星に言えば?」


「でも、親しくないやつに

 いきなりこんなこと言われて嫌じゃない?」


「ハハッ、意外とそういうの気にすんだ(笑)」


「…うるさいな」



今までの俺なら他人にどう思われようが気にしないし、

他人が仮に悩んでいても気にも留めていなかっただろう。


でも火星のことになると、

今までのように素通りすることが出来ない。



こんなこと今まで経験したことがないから、

自分自身どうすればいいのか、分からないのだ。





「嫌なわけないだろ?」


「え?」


「自分のことそこまで考えてくれるなんて、

 普通なら嬉しいと思うぜ」



男の言葉に、そういうものなのか…と

少し肩の荷が下りたような感覚を覚える。



「お前だって、過去に心配されたことくらいあるだろ?」




そういえば最近、あった。





『何か、…あったの?』





火星が、不安な表情をしながら。




「火星が、してくれた」


「まあ、アイツ優しいしな~。


 で、悪い気はしなかっただろ?」


「…そうだね」


「それと同じだろ。

 




 …違うか?」




確かにそうなのかもしれない。

自分は好きな人だから、尚更だったけど。




「確かにね…」


「ま、自信もてよ~!少年!」


「いちいち腹立つな…」



言い方は癇に障るが、この男なりの励ましなのだろう。


そして『他人に変えてもらう』のではなく

『自分で行動を起こせ』と言われたような気がした。



「気が済むまで、自分が思うようにやってみろよ」



先ほどの茶化すような表情ではなく

自然な表情で笑う男に、地球は頷いた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━



地球は男にお礼を言い、帰ろうとしたが

火星に会っていかないのか?と聞いてきた。



「いや、また生徒会でも会えるし」


「多分、もう来るぞ?」


「…」



少しすると、噂の張本人である火星が部室に入ってきた。



「お疲れ様で、す…って、地球?!」




部室から出ようとしていたが、見つかってしまったのもあり

どこか寄ってから来たのだろうと思われる火星に声をかけた。




「…お疲れ様」


「なんでここに、地球が…?


 あ、ベスタ先輩お疲れ様です」


「お疲れ様~」




火星は、先ほどまで地球と話していた男

——ベスタと呼ばれた人間がいる事にも気づき、話しかける。




「地球と知り合いだったんですか?」


「まあね~、そういやお前の名前知らなかったな」


「…確かに。ということより先輩なのも今知った」


「ハハッ!いや、それはわかるでしょ~!」



会いに行ったのにも関わらず、他人に興味なさ過ぎて

名前やどこのクラスなのかも探ろうとしなかった。



(なんだかんだ、奇跡的に会えたからよかったけど)



「え???本当に知り合いなんですか?」



不思議そうに、俺とベスタを交互にみる火星。



「顔見知り程度だから」


「え~、つれないこと言うなって。

 あんなことやこんなこと…いっぱい話しあったじゃん?(笑)」



わざとらしく話すベスタに、すぐ睨むが

そんなことはお構いなしの感じでニヤニヤし始めた。



「そうなの?」



火星も冗談だと思っていないのか、俺に尋ねる。

否定するのも面倒くさくなり、深くため息をついた。






「火星」






そして話を変えるために、視線を火星に向ける。






「どうしたの…?」






真剣な眼差しで見つめられた火星は

【なにかあったのか?】と言わんばかりの表情をしていた。







「何か悩んでるなら…


 俺でよければ聞くからね」



「…!」



先ほどまで俺の事を不思議そうに眺めていた火星は、

一瞬にして目を丸くし驚いている。




「まあ、言いたくないなら無理には聞かないけど。



 

 …じゃあ、また」




「えっ、ちょっ…!」



そして火星の返事も聞かずに、

俺はそのまま軽音部の部室を後にした。




━━━━━━━━━━━━━━━━━




(はっず…!!!!)



部室を出た後、早歩き気味になる。

慣れないことをしたので、咄嗟に恥ずかしさがこみあげてきた。



しかし恥ずかしさはありつつも、

後悔はしていなかった。




そして火星が話すことで少しでも気が楽になるなら

俺は、何でもしたいと思う。


―――例えそれが、俺の役目じゃなかったとしても。





(話してくれると、いいんだけど…)




そもそも、火星が果たして俺に話をしてくれるのか?

―――分からないし、想像もつかない。



(普段の行いからは、普通に考えて無理か…)




しかし先ほどの一連の言動が無意味ではなく、

『俺が今出来ることはした』と自分に言い聞かせた地球は


自宅へ帰るため、校舎を出たのだった。




.


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