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第九話 新たな冒険

三日目を迎えた。正直、異世界転移したという実感はあまりない。でも生きている。

 三日目が訪れた。今日からいよいよ、魔王討伐に行くための”レベルアップの旅”が始まる。同時に、僕の冒険譚を書くのもはかどるというわけだ。窓の外では日が高くなっており、じんじんと肌を焼くような暑さがやってきた。


 四季に関してあるのかどうかはわからないが、昼はあつい、笹と夜も寒いというのは変わらない。昨日買ってもらった冒険服に身を包み、廊下を出る。


 今日は、一人だけいた。水色の髪をした女性。ルマだ。杖を手にしてこちらを見ている。ひとまず、挨拶をしておこう。

「おはようございます。」

「……おはよ。」

 ルマはまだ僕のことを警戒しているのか、じーっとこちらを見ている。警戒しているというよりも、観察しているようだったのはここだけの話だけど。

「レオンたちはもう、依頼受注に行ったよ。案内するからついてきて。」

 ただの案内人だったらしい。「はい」と返事をしておいた。二人で宿の廊下を歩く。ブーツ越しではあるものの、絨毯のふわふわ加減が心地いい。


 ふとルマが言う。

「ねえ、創作者さん。実際どうなのあのランク。嘘とは言わないけど何か別のこと隠してるよね。」

 流石魔法使い。魔法を使う上で相手を見極めているのは長けているようだ。Bランクとは言えさすがの腕前だ。

「はい、そうですね。」

 ルマは目を真ん丸にしてぱちくりさせる。

「ああ、認めるんだね。で、実際どうなの?」

「なんだか、期待値がSランクだったんですよね。」

 ルマはぴたりと足を止めた。そしてゆっくり振り返る。なんだか嫌な予感がした。僕は無意識のうちに一歩後ろに下がっている。


「……ほんとに?」


 目を思わず背けて、言う。


「はい……本当です。」


 ルマは先ほどのジト目ではなく、キラキラとした目でこちらを見ていた。なんともまぁ、純粋な瞳だ。

「すごいっ……!リヒト……くんだっけ?」

 初めて、いやレオンに呼ばれて二度目だが面と向かって名前を呼ばれた気がする。

「はい……ありがとございます。」

 謎に感謝していると手首を掴まれそのままぶんぶんと握手を交わされた。

「私も、期待値Sランクなの。みんなはAね。すごいすごい!」

 彼女は嬉しそうにニコニコと笑みをこぼしながら、腕を振る。なんだか、かわいらしいが昨日酒をがぶ飲みしていたのを思い出すとなんともいえなかった。


「一緒に頑張ろうね?」

「……はい。」


 その言葉に背中を押されるように僕は返事してしまう。無意識だった、やられたものだと思うことにしたが……これはさすがに本心だろうなと改めて思った。




 二人で向かった先には、宣言通り三人が揃って待っていた。

「あーきた。遅いわよ。」

 アンナが腕を組みこちらを見下している。そりゃそうか。僕は寝坊したのだから。ペコペコと謝りつつ、近くに行くとアンナがさらっと説明した。

「今から直行するわ。ざっと一時間歩くことになるわね。でも、創作者くんに体力がないからゆっくり行って二日かけるわ。」

 二日?つまり、野宿をするのだろうか?「ありがとうございます」と社交辞令のようにあいさつをしながら考えた。往復も考えれば四日なのだろうか。

「創作者くんは私たちについてきなさい。冒険の極意を教えてあげる。」

「いつもながらありがとうございます。」

「いいってことよ。さあいきましよ。」

 なにげに、これが僕にとって初めての冒険になるかもしれない。装備を整えてからの第一歩だ。


 ファンタジーの世界で題材にする事がおおい冒険の理由がよくわかった気がする。何が起こるか分からないハラハラ加減を楽しめるのだ。例えば先ほど起こったスライム乱射事件。


 スライムが群れで行動する個体に出くわすと、こちらに向かって何体かが突進してきたのだ。仲間思いのいいやつだったよ。


 ゴブリンはよく見るのであれだったが、オークが見えた瞬間別の道を選ぶことにしたよ。でもかっこよかったと気がする。鬼だからかな?


 そんなこんなで小さな戦闘を続けている時だった。

「みて、滝よ滝!」

 先頭をいっていたアンナがそれを指さした。ざっと十m先かは振ってきている滝。それに近づけば僕なら貫通するだろう。グロいし痛そうだし勘弁しておこうか。

 レオンが地図を皆から言う。

「この滝の裏だ。」

 なんともまあ、ロマンチストな洞窟……いやダンジョンだなわレオンは迷うことなく湖に足を踏み入れた。

「おまえ!?」

 近くにいたケイルが目ン玉を落としそうなほど目を丸くして天を仰いだ。

「はぁ……着替えはないっつったのに。」

 たしかにそうである。帰りの荷物のほうが大きくなるからと、この世界でもコンパクト化がさかんなようだった。化粧品を一つのバッグに詰めるように、みんなかなりぎゅうぎゅうに、パンパンにリュックに詰めている。そこだけは異世界でも共通の文化のようだ。


 そんなケイルの落胆を聞きもせずズカズカと奥へと進んでいく。そして、迷うことなく滝のなかに手を伸ばすと何かを引いた。


 扉である。大きく、石でできた扉がレオンによってあけられたのだ。さすが勇者候補だ。……と言ったら絶対殺されるので言わないでおく。


 さて、ここからどんなモンスターとお宝が眠っているのだろうか。

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