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第七話 できれば知られたくなかった。

子供のことを助けてから、僕たちは食堂に行った。その後、本命のギルドに行くことになる。果たして、無事登録できるのだろうか?

 街は思ったよりも広く、人も多く、ごみも多かった。あのごみを片付ければきっと金持ちになるだろうと言うほどなぜか金目のものが落ちていた。


 アクセサリーに、剣。防具までもが散乱している。つまり、ここは物価が安いのだろう。だから、使い古した装備はすぐに廃棄……いやポイ捨てしても構わないという認識らしい。今の僕らにとってはちょうどいいかもしれない。だって、まだギルド登録もしてないから稼げないのだから。


 しばらく歩いていると腕を組んで歩いていたケイルがこちらを見た。

「なぁ、創作者。あんた、魔法は使えるのか?」

 いきなりその質問か。ただ、僕も疑問に思っていた。二日目にもなって、"ステータス表示"も"チートスキル"もなく、あるとするならこのヘンテコなノートだけ。これがチートスキルだとするならば僕は非力な人間だろう。せめて、痛覚無効だけは欲しいものだが。


 隣を歩いていたルマがぼそっと言う。

「見た目は魔力少なめだね。というか、ほぼない。」

「やっぱりそうなのね。」

 みんな僕に期待していないようだった。それは、逆に助かります。なんせ、魔法が使えたところで体力測定のハンドボール十一メートルの僕に何ができるのだろうか。きっと使えるのはそよ風程度の風魔法だろう。


「でも、どうするのよ。完全な足手まといになるわ。」


 アンナはぐさりと僕のこころに刃を突き立てる。悪気はないのは分かる。僕が足手まといなのも十分理解してるが、直接言われるとくるものがあった。

 しかし、また拾い上げてくる人がいる。僕の心情はやはりジェットコースターのようなものだ。

「いや、こいつがいないとつまらない。」

「まぁ……そりゃそうね。」

 カウンターパンチ。だが、まったくもってうれしくなかった。ありがとうございますという感謝の気持ちはふさわしくないなと思いながら、歩みを進める。


 しばらくすると、ようやくギルドにやってきた。先ほどよりも一段と人波が増えて、圧迫されそうだ。満員電車が開放的になったあの瞬間のようで息が詰まる。だが、地元のみんなは慣れているようでするりと抜けるようになかに入っていく。僕はレオンとアンナに手を引かれるまま建物に入った。


 中は至って普通のギルドの建物だった。壁一面に張られる依頼書。カウンターでやりとりする冒険者たち。疲れ切っているのか席に座って酒を飲む人、それを起こそうとするスタッフ。どれもが僕にとって現実離れしていてワクワクする。


 さらに引かれるままたどり着いたのはギルド登録限定のカウンターだ。スタッフがこちらに目線を向けて言う。

「いらっしゃいませ。新規加入の方々ですか?」

 スタッフの言葉にケイルが言う。


「こいつだけだ。俺たちは加入済みだ。」


 ぽんぽんと背中を押されて前に躍り出る。スタッフは目をぱちくりさせて尋ねた。


「お名前と職業を教えてください。」

「黒神琥珀です。学生です。」 


 僕は無意識にそのまま伝えてしまった。だが、大丈夫たろうか?この世界に学生は学院生しかいないかもだが……。そう思っているとスタッフはこくりとうなずいた。

「そうですか。ちなみに得意属性や、得意武器は把握しておりますか?」

「いえ。わかりません。」

「かしこまりました。適応検査が必要となりますのでこちらの番号をご確認の上お待ちください。」

 渡された木の板をじっと眺めていると、ケイルに案内されるように席に着いた。ここからはしばらく待つらしい。


「しっかし、魔法とか使えるのかね?魔力があったとしてもなかったとしても、戦えなきゃあ、これからの旅が大変じゃないか?」


 ごもっともな意見だ。だが、一つ言いたい。僕は学生。自衛隊にいきたいという願望も警察になりたいという願望もなく、休日も家出ゴロゴロしているような男だ。そんな僕に戦えと言われましても。ギリギリ犬に勝てるかぐらいの実力だろう。


「せめて自衛できるようにしないとな。」


 腕を組みながらあたかも簡単だと言わんばかりにそういい切るレオン。イケメンだが、きつい話だ。子供に今から料理を作れと言っているようなものだろう。もう少し、現実的に考えてほしいな。




 しばらくして、僕の番号が呼ばれて別室に移る。久々にあの四人と離れる事となった。ホテル以来だろうか?スタッフさんが僕の目の前にある水晶を必死に磨いている。キュッキュッと、窓の擦れるような音が鳴り響いた。


「それでは、ホウジョウ・リヒト様。こちらの水晶に触れてください。」

「はい。」


 初めての、魔法検査水晶にそっと触れる。元の世界なら一度も経験したことがないだろう。じわじわと身体から何かが抜けるような気がした。その瞬間、みるみるスタッフの目が丸くなり、動揺が強くなっていく。つよいのか、弱いのか。それは、僕の身体を見れば一目瞭然だった。


「あの……やっぱり弱すぎましたか?」


 しかし、その質問に対してスタッフが言ったのは全く想像ができなかったことだ。


「いえ。その逆でございます……Sランク相当の魔力量がございますよ。」

「Sランク?」


 テストでも運動でも平均的だった僕が、魔法適性に関してはSランクだったらしい。だが、僕は嬉しさよりもじわじわと絶望が押し押せてくる。


 期待には応えられない。


 例え、Sランクだったとしても。

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