第二十四話 創作者は異世界では主役のようです
天音風馬、こいつがなぜか、僕の代わりに魔王討伐への道を書くとか書かないとか言っている。僕としては……まあ、時の流れに任せるとしよう。
さて、話を戻そう。いま、目の前にいるおかしなやつは、僕の代わりにあのノートを書いてくれるといっている。それは何を意味しているのか。
僕、創作者が異世界では主役にならないといけないということである。確かに書きながらの冒険では、僕の頭はパンクする。
書きおえたら、冒険。冒険終わったら書く。たまに予想外なことが起きて、驚くだけ。ぶっちゃけ、僕でなくても完結するのである。
しかし、そうなると僕がここに来た理由がわからなくなる。元は、ここを作った作者なのだから責任をもってこの世界を終わらせろ、というものだ。
まあ、冒険しなくてもそれは可能だと思うがそれをしなかったのは僕も息をしているからだろう。
つまり、ノートを奪われれば僕のとりえは一切なくなるというものだ。それでも、書かなくて済むと冒険に集中できるメリットがある。
しばらくそういう感じで悩んでいると、風馬は言った。
「お試しでもいいから、やってみない?」
「……でもまて、なんでお前なんだ。」
そこが疑問である。だってこいつ、小説書けるような見た目していないんだ。決めつけはよくないが、スポーツもできて、頭もよくておまけにイケメン。そんな奴が机に向かってファンタジー小説まで書けるなんて。……普通に悲しくなる。
僕の存在意味とは。
「でも。僕はこの世界を作り上げなきゃいけないんだ。」
「そんな義務、どこにあるんだい?」
確かに――と心が揺れかけた自分を恨みたい。ここは没にしてずっと眠らせてしまった作品である。それを放置していた自分の罪滅ぼしとしてここにいるのだ。だから、義務でも何でもいい。ここで彼らを見守りたい。
ずっとだんまりしていると、館から誰かがやってきた。
「……おい。」
われらがリーダー、レオンである。僕をかばうように前に出てきてじろりと風馬を見る。風馬はへらへらしていた。危機感はどこへ行ったのだろうか。
「やあ、レオンさん。理人君がお世話になっています。」
「……。」
レオンは若干後ろに下がり、さらに盾代わりになってくれた。そこまでは大丈夫だぞ、リーダー。
「レオンさん、彼は敵ではないと思います。おそらく。」
おそらく。
だってこいつの出方が、中盤あるいは序盤で出てくる敵そのものだもん。キャラクターをたぶらかして最後裏切る系のセリフ言っているし。
「お前は、こいつのなんだ?知り合いか?」
「それについては、シンプルだ。クラスメイト。それ以上でもい以下でもない。な?」
「……うん。」
そうだよ。こいつはただ、クラスが一緒なやつだ。なのに、どうして僕の作品にいる?
レオンは僕と彼を交互に見てから首を傾げた。
「くらすめいと?」
そうだった。この世界ではそういうシステムはない!僕は説明することにした。
「ようするに、知り合いです。」
「ふーん。それで、何か用?」
レオンがじっと風馬を観察する。見過ごすわけにはいかないのだろう。だいぶうれしい。
「あの、物語を進めるために必要なノートを俺が代わりに書こうかって提案しに来たんです。」
「へえ?」
何その反応。賛成しているのか、反対しようとしているのか全く分からない。何だこれ。
「それって、リヒトの負担をなくすため?それともバカにしてんのか。」
すこし、声のトーンがいつもより低い気がした。
――この人怒ってる?
二人がにらみ合いしている間に、ほかのみんなもやってきた。埃まみれのケイル。モップを手にして駆けつけてきたアンナと、相変わらず杖を胸に引き寄せているルマ。
えと、今から戦闘でも始まる?レオンが三人に説明した。僕のノートを代わりに書くとかいう若者がこいつだって。雑すぎたし、自己紹介を互いにしていない。なんとも不思議な空間だった。
「それで、どうする?賛成か反対か。」
風馬はみんなに話を振った。四人はいまだ警戒を解かずにじっと見ながら各々いう。始めに来たわれらがリーダー、レオンは言う。
「反対。お前胡散臭い。」
バッサリ言い切ってしまった。あいつ、大丈夫だろうか。
次に、ケイルがむすっとしながら言う。
「俺は反対かな。リヒトが決めなきゃダメだろ。」
もっともらしい話ではあるが、優柔不断である僕にとってはきつい話である。まあ、結論は天秤のように傾きかけているのだけど。そしてその次にモップを立てかけてアンナが言った。
「話の流れが見えないけど、私は賛成ね。文章を書くだけが”創る”とは言わないもの。リヒトが楽しめればそれこそ最高の創作じゃない?」
「僕も、そう思うよ。」
つえを抱えながら、ルマもボソッと賛成だといった。ちょっとまって、アンナさんいいこと言ったんだけど。いつも面倒くさそうに話をする人かなって思っていたが。僕が楽しむことこそ、創作。確かにそうかもしれない。
作品は、作者が描きたい世界線を書き紡ぐ。その中でいかにキャラクターを活かすのかが決まる。
「ふむふむ、多数決では反対。で、リヒトはどうしたい?」
その質問は僕にとって、この世界にとってとても難しい課題となるだろう。もっとも、僕が当事者なのだが。




