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第二十三話 掃除は苦手です

一つに重なったスライムを退治し終えた僕たちは、スライムを除去することとなった。役割分担なんていう概念はなくなり、みんなで掃除する。

 ゴシゴシ、ゴシゴシと。はて、ここは異世界なのだろうか。ここでもこんなことをするなんて思いもしなかった。

 ちなみに、掃除は苦手な方だがほかの場所を掃除するのは得意というひねくれだと思う。今更だが、転移した僕の世界はどうなっているのだろうか。停止している?動いている?それとも僕の存在自体が消滅している?


 そうなってくると、なんだか故郷が恋しくなってきた。


「それにしても、このスライムったら、ねばりっこくてやーなっちゃう。」

「うん。ほんといや。」


 この世界の魔物はスライムしかいないんだろうか。もっとこう、棍棒を持ったゴブリンとか、ドラゴンとか出てもいいと思うんだけど。


 それでも、異世界離れしたこの掃除をしないとお金を稼げない。皮肉な話である。世界はどこまでたっても金が必要だ。スローライフとか憧れていたんだが。


 まあでも、これもいい思い出だと思うことにした。ひたすら、そこら辺の草で作った雑巾で汚れを拭きながら。


 夕暮れになりかけており、肌寒い風が流れている。それでも僕らは手を止めなかった。


 ふと、カツカツと音を立てて、レオンが僕に影を落とす。そちらに目をやると、なにかを持っているではないか。


「夕飯だ。パンとこれだ。」


 あたたかな黄色のスープ”コーンポタージュ”が注がれた期の器をもらった。うわあ、支給だ。


「ありがとうございます。」

「ん。ちゃんと休めよ。」


 それだけいうと、ほかの人に配りに行ったらしい。流石リーダー。さっきの戦闘で前に出てもけろっとしている、主人公タイプだ。ちゃんと休んでほしいものだ。


「いただきます。」


 ひとまず。これで今日は終わる。明日もきっとしばらく掃除をして、街に行くんだろうな。というか、魔王城へのヒントはどこ行った?


 まあいいだろう。僕はまだ生きている。それだけは確かなのだから。


 そういえば、みんなはどう思っているのだろうか。これまで僕が来るまでの間はなにもない空白が続いていたらしい。メインキャラも、ステージも、金銭設定もまともに終わらせていないこの世界で当てもなく歩き回るのは至難の業だ。


 僕だったら絶対途中で飽きちゃうもんね。


 人が多いと飽きないということもあるけど、絶対途中で喧嘩をしたり、はぐれたりするだろう。


 でも、所詮キャラクターなのだろうか?


 さて。変な話はそれまでに掃除の続きをしようか。僕は夕食を食べながらそう思う。たとえ僕が主役になっていたとしても。




 次の日。館の外でキャンプのように野宿した僕らは、再度掃除をし始めた。僕はまた外の草むしりを任されている。

 はあ、なんか異世界感がないなと何度目かの言葉を漏らした。みんなは室内でスライム掃除と家具の清掃をしているんだろう。なんともまあ、依頼にしては庶民的だ。


 そう、一人で思っている時だった。


「やあ、北条理人。」

「……え?」


 いきなりフルネーム?そう思い振り返ると、そこにいたのは……え、なんでいるの?


 そこにいたのは僕の高校のクラスメイト。よく、僕にくだらない話をするお調子者だった。


 いやいや、予想外すぎて目が点になるんだが。


 僕が困惑していると、そのクラスメイト”天音(あまね)風馬(ふうま)”はケラケラ笑った。


「いやあ、傑作傑作。異世界ライフいかがお過ごしかな?」

「いや……お前、何もんだよ。」


 それが一番聞きたかった。いきなり話しかけて傑作、傑作って……絶対悪役かゲームキーパーのセリフだろ。


「俺はこの世界の神だ。」


 あたりが静まりかえる気がした。ええと、このひと中二病患ってたっけ?そう頭を悩ませていると風馬は言う。


「おい!失礼なことを考えているな?把握しているぞ!」

「うるさいな……。」


 安心するのか、なんだかうざいと思うのか、とにかくまとめるのならこれは確かに転移点だ。こいつが何かをしでかすのか、あるいは僕が何かをしでかすのか。


 その前にこいつの説明をしておこう。こいつは何者か。




 天音風馬。僕の高校のクラスメイト。いわゆる一軍だが、三軍ほどの僕にも優しくしてくれるおかしなやつだ。そして何より、アニメやゲームが好きなわかるやつである。困ったときはいつも助けてくれるが、その代わりに宿題を見せろと言ってくる。


 僕は毎度思う。自分でやれ、答えでも見て写してしまえ。

 後者は悪い例だけどね。


 だからまあ、嫌いでも好きでもないやつになんで合わなきゃいけないんだと疑問に思う。うん、しかもなんでこいつなんだろ。


 そう思っていると、本人から返信が来た。


「お前は、自分で旅をしながらノートを書くという二重生活をしているな?それじゃあ、退屈していないかい?」

「……まあ、そこそこ。だけど予想外のことが起きていて面白いよ。」


 僕はため息交じりにそう伝えた。確かに、ノートを書いてそれを実際に目の当たりにして。そしてみんながどうはんのうするかを見るのはとても興味深いデータだ。


 といったものの、自動化される方が助かるのも事実。結局、創作者は自分で動かすのならすでに完成されてある作品を見たほうが、人生の経験になる。


「まあ、しいて言えば。そうかもしれない。」


 もしかしたら、この瞬間。この時。初めて僕は自分の言葉を自分の気持ちで話したかも知れない。そうひそかに思っていた。

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