第十三話 シンプルイズベスト
生きるダンジョンと化した二階層から逃げ出すため、転がり込んできたのはまさかの幻の部屋だった。僕らは宝を目指してギミック攻略することになる。どんなシステムで動いたりするのか楽しみだ。
ルマは四つ角の一つに立つと、杖を構えた。ここで三度目の魔法お披露目だろうか。何度見てもCGのように見えてしまう。そう、今の僕まったくもって実感がわいていないのだ。四日目?三日目?とあやふやになるほどである。重症だ。
だから、目の前の魔法を見たところで危機感は感じない。ただすげえと思うだけである。
そんなことを考えているわけにはいかない。目の前の出来事を観察しなければ。
ルマはゆっくり杖を下ろす。
「まって。」
小さく待ち時間を要求してから振り返った。
「ここ何属性かわからない。」
「あー……」
レオンが頭を抱えてこちらを見た。いや、答えを知らないよ。僕は。だけど、気になったので近づいてみる。松明をともす部分、灯心というべきか燃焼部というべきか。とにかくそれが鎮座していた。そこに模様が書かれている。
ツタが伸びているようなものに、巻き付くように別の植物が生えているような感じ。なぞ解きならこういうところにヒントが書かれているようだけど。
ふと、気になった。他の場所はどうなっているのだろうか。
意外と自分の思いが体に流れるように、そのまま別の灯心へ足が動いていた。みんなの視線がこちらに来ていることを感じ取りながら。
もう一つのところには別の模様が書かれていた。先ほど、ツタに植物が巻き付いていたが、こちらはなぜかジャガイモと思わしき野菜がついていた。
全く関連性は見つけられない。
三つ目にはまたまた別の模様が書かれていた。今度は、タンポポの綿毛のようなもの。この世界にタンポポが存在するのかはわからないが、綿毛であるのは確認できた。というか、ジャガイモもさっきの花もこの世界の物なのか僕の認識内の物なのかはわからない。細かいところまで考えていたらきりがないだろう。いったん四つ目も確認しに行く。
四つ目はこれまた関連性のないものだ。ツタが消滅し、代わりに海藻がゆらゆら動いているようなものだった。そしてその周りになぜかデンキナマズが描かれている。明らかに僕の知識から引っ張り出してきているだろう。
結論。よくわからない。関連性は三つはツタってことだが、一つに関してはなぜか海藻だし。花、ジャガイモ、綿毛、デンキナマズ……。一体何を表しているのだろう。
「何かわかったんか?」
ケイルが背伸びをしながら近づいてくる。いや、何もわかってないよ。ジャガイモは焼いたらおいしそうだし、デンキナマズは電気流せばいいのか?って。そんな予想を言ったら絶対笑われる。
そう思っているとケイルも同じように動いた。四つ角の燃焼部を見て回る。
「へんてこな模様だな。まるで、誰かの意思が引っ張られたみてぇな。」
「誰かの意思ですか。」
あるとしたら間違いなく僕である。花言葉が好きだ。じゃがバターがとてつもなく好きだ。綿毛は……ああ、夢の中でそれをパラセール代わりに使っていたんだっけ。
デンキナマズに関しては、かっこいいと思って一時期買いたがっていた気がする。
……いや、めちゃくちゃ関係あるじゃないか。全部僕関係ってことだろ?それに結構精神的、思い出的なところからチョイス記してきたな。
「……もしかしたら、僕が関係しているのかもしれません。」
いや、今のセリフ間違いなく推理系の登場人物じゃん。間違えた。ああ、何してんだ僕。
そう自己否定を挟みながら続ける。
「恥ずかしながら、花もジャガイモも綿毛も、デンキナマズも好きなんです。」
「はえ~。」
「……はい。」
はえ~とはなんだ、はえとは。一瞬虫のハエを想像してしまって笑いそうになったぞ。でも、笑うような雰囲気がなくて安心した。
僕は指を一本立てて演じる。本当はみんなのこと見てた買ったけど、アドバイスというより物語修正をするのは作者の仕事である。それは十分理解していた。
「一つのパターンが、花の模様に水属性、ジャガイモに火属性、綿毛に風属性、デンキナマズに電気属性はどうでしょうか。基本属性以外に電気となってしまいますが一理あるとは思いませんか?」
皆は顎に手を当てて考える。一応、理解するためにしっかり情報整理をしてくれるようで安心した。
「……てか急にめっちゃしゃべるな。」
「失礼ですね。僕は無口であって、話さないわけじゃあないですよ。」
まあ、人見知りであるのは本当であるが。レオンは深追いはせず小さくうなずく。彼は賛成らしい。何だこの人、頼もしすぎる。
「ルマ。電気属性ってつかえたか?」
「うん。使えるよ。やってみようか?」
今はそれしか可能性がない。そう判断されて、実際にやってみることにしたらしい。お待たせしました。第一回回答の時間です。
ルマはまず、安直の火属性をともすジャガイモの模様の前に立ちふさがった。つえを構える。無詠唱でぼうっと火をともした。
すると、どうだろうか。ふつうに松明として機能し始めたのだ。まあ、火属性はあたりまえに松明となるんだろうけど。次に風属性を使う、綿毛の模様の前に立ち止まる。再度構えて発射。
僕の読みが当たっていたようだ。緑色の変わった松明の炎がゆらゆら揺れている。
「おお、あたりだな!すごいな!」
ケイルが関心そうにつぶやいた。僕をほめているのかルマをほめているのかはわからないが、いやな気持にはならない。
そして、デンキナマズと花の模様が書かれた松明も見事ともった。カラフルな炎がまるで歓迎してくれるかのように左右に揺れている。
ともってから数分後、目の前にあった壁がめりめりと動き始めて次の通路を示した。
「あら、意外とあっさりね。」
アンナが鼻歌でも歌いそうなぐらいご機嫌そうに歩き出す。僕らもそれに続いた。さて、一体何があるのだろうか。




