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第十一話 二階層はひんやり冷たいはずだった

ようやくダンジョンに踏み込んだ僕たち。十回層のようだからゆっくり探索するらしい。

 階段を降りると、一気に気温が下がった気がした。いや、事実である。体は皆小刻みに震えて、吐く息は白い煙のように散っていく。指先はまるで氷水に触れているように感覚が鈍くなっていた。


「さむいわね……。」


 アンナがそうつぶやくと、みんなも釣られるように「さむいな。」「ああ。」「うん……」と弱音を吐く。しかし、僕は吐くつもりはない。なぜか?寒いと認めたら寒いんだよ。という精神で生きているからである。


 簡単に言えば逆張り男だが。


「そうですか?」


 そしてその逆張り精神がつい漏れてしまう。出すつもりなんてなかったが。それを聞いたケイルがぱあっと笑みを浮かべる。なぜ喜んでいるのだろう、この男は。バンッと強めに背中をたたいていった。

「お前、やるじゃねえか。この極寒に耐えるのか。期待してるぜ創作者?」

 やばい。意図してない期待値がぐんと上がってしまったようだ。熱くないのに冷汗が流れてきそうである。

「う、うん。期待してください。」

 声が裏返った、みんな気にしていないようなのでよかった。


 そうしてしばらくつるつるの冷たい二階層を歩いて行く。以外にも慣れてしまえばそうでもなかった。モンスターはほとんどいない。ただただ寒いだけかと思ったがそうではなかった。敵はいるらしい。


 それは、この寒さそのものだ。


 はじめに気づいたのは、リーダーのレオンだった。

「……まて。みんな。今からここの空気深く吸うな。布で口を覆え。内側から凍らせる気だ。」

 レオンは僕にマフラーをまいて自身は手袋で口元を覆っている。やっぱり、イケメンは中身もこうでなくては。

 みんなもそれぞれハンカチだの、スカーフだの取り出して口元を覆う。これで済むのかは定かではないが、まぁいいだろう。


 ジャリジャリと、霜を踏みながら先へ進んでいく。一向に階段も隠し部屋も見えない。……というか、殺風景すぎる。


 ふと、僕は思い立ちあのノートを取り出した。サラサラっと書き記す。一週間に一度ペースであることをやれと言われている。それを果たすときが来た。

【ダンジョンは意外と難しかった。】

 どうだ。具体的にしろと誰かに怒られてしまいそうだが、これには理由がある。

 何が難しいのかは完全にランダムになるのだ。それを僕が確かめたいというわけである。さて、魔物が強くなるのか、部屋の構造が複雑になるのか。はたまた、罠がではじめるのか。それは、この指示を受けた世界のみ知る。


 すると、僕らが歩いていたときグラリと視界が揺れた。みんな同時に揺れたようだ。ピタリと進行が止まる。

 ルマが不安そうに声を漏らした。

「うぅ、めまいがするよぉ。」

「なんだなんだ!?ダンジョンが動いてるぞ!」

 足場が動いている。うねうねと、まるで生き物のように。……この二階層。もともと生き物だったというのか?


 いつの間にか寒気が消えて、かわりにゾワゾワと鳥肌が立っていく。生き物なのか、そういうダンジョンなのか分からないままそこに立っていた。


 レオンが剣を地面に突き立ててみる。すると、さらに動きが激しくなった。波打つように、右へ。左へ。僕らを動かしていく。バランスを崩せば転んでしまうほどだ。


「くっ……さっさとこの階層でるぞ!」

 ケイルがそういうと、レオンは剣を引き抜く。コクリとうなずいた。アンナもルマも賛成、僕ももちろん賛成。だが、階段がどこにあるか分からない以上、当てずっぽうしか選択はなかった。


「ついてこい。」


 レオンが先導して歩いていく。彼もまた分からないはずだが僕たちを怖がらせないための戦術だろうか。レオンの表情はいつにもまして真剣だった。

「レオン、わかんないなら無理しなくていいからね?」

 アンナが不安そうにそう叫ぶ。レオンは歩きながらも「大丈夫、任せてくれ」の一点張りでグイグイ進んでいく。

 ケイルがなぜかため息をついた。

「あいつは、意地でも止まらないぜ。たぶん。」

「まぁ、そうでしょうね。」

 おそらく、いや"たぶん"。その大丈夫は大丈夫ではないときのセリフだろうと僕は推測した。大抵、主人公は無理をした際に大丈夫という曖昧な言葉でスルーしてきた。彼もまたその一人なのだろう。





 しばらく歩いていると、より、地面の動きが活発になり壁によりかからないと立っていられないほどだった。小柄な僕とルマは互いをささえるように二人三脚で進んでいた。それほど、大変だ。


 日本で例えるならなんだろうと思い、真っ先に思いついたのはランニングマシンだ。まるであのコンベアのように不規則にスピードと向きが変わっているような感覚だ。ところどころで走らされ、ところどころで休まされる。それを繰り返していた。みんなかなりへとへとである。あのノートの効果はやはり偉大だ。


「ねぇ……すこし、休みたいよ。」

 ルマがもう限界と言わんばかりに僕に体重を預けた。いや、僕に頼まないでほしい。そう困惑しているとズカズカとケイルが来た。


「ほら、ルマ。背中乗れ。」

 なんだよ、イケメンかよ。大柄で筋肉質なケイルの背中にルマが小さく収まった。効率こそ良くなったもののケイルの負担はでかい。それに僕も一人になったことでバランスが取りにくくなってしまった。それをどう改善するかは慣れが解決してくれるだろう。


 そう、客観的に考えてまえへすすむことにした。

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