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『Lume de soarta』  作者: Celi
191/194

190話『みんなと一緒に』セリ編

これは俺がいないところで、レイとフェイが話している内容である

「聞いてくれフェイ!良い事を思いついたんだ」

いつの間にか仲良くなって友人同士になった2人はよく会っているようだ

「さっきから何か真剣に考えていると思えば、どうしました?」

「セリの事なんだが」

「あぁ、しょーもない話ですか」

フェイの明らかなため息

「なんでだよ!?」

「レイはセリ様の事になると知能が下がるので」

「セリにはオレと香月さんと和彦さんとフェイがいるだろう?」

「(しょーもないと言われてお構いなく話すのか…)

えぇ、そうですね」

「みんなで寝る事になったら2人は地獄でしかない」

俺とは違う一面を見せる2人のコトは、友人でない俺は永遠に向けられるコトはないのかもしれない

「まぁ…そういう事があれば、香月様セリ様和彦様私レイの並びにはなりそうですが」

「セリの隣で寝れないのに男の隣で寝るなんて最悪だと思って考えたんだ」

「何を?」

「並んで寝るのが駄目なら、セリを囲むように四角になって寝ればいいじゃないか!!!」

「……はっ?何言ってんだこいつ」

「フェイは足好きだから足元で寝るって事で」

「そりゃ私はセリ様の足が好きですが…それは何か違うような……」

「もしくは4人並んで、その上にセリが横になって寝てもらう!!

もちろん足側はフェイで!!」

「絶対セリ様寝にくくて可哀想だろ!?なんで私はずっと足ばっかなんだよ!?

足フェチ軽く見すぎてないですか!?」

「おい、それなら文句ばかり言ってるフェイは何か良い案出してみろよ」

「いやそもそもこの話がしょーもないしどうでもよくないか!?

全員で一緒に寝る事ないですよ!?」

「ある時を考えて備えておくんだよ」

「やっぱりレイとセリ様の話をすると私まで知能下がりそうなんで、やめてもらえませんか?」

「オレはセリを受け入れようと理解して努力しているのにフェイは勝手だな」

「こいつと友達やめたい…

セリ様にその話をして感想を貰えばどうですか?」

レイが俺の部屋に来たかと思えば、契約に変わってほしいって

いいけど

ってコトで!契約の俺が表に出てレイについて行くんだぜ!!

レイについて行くとフェイの部屋でフェイが変な顔して待っていた

何この空気!?

そして、俺はレイからみんなで寝る時の良い方法を聞くコトに…

「えっ何それ!レイって天才!!誰も不幸にならない最高の案だね!!」

「だって?」

レイはふふんと勝ちましたって顔でフェイを見た

「それはズルだろ!!!??レイなら全肯定の契約に聞くのは反則ですよね!?」

「契約だってセリだ」

「レイの『妄想』の都合が良すぎるセリ様ですよね」

フェイの文句にレイが仕方ないなって俺に勇者と意識を代えてくれと頼んだ

レイのお願いなら俺は素直に引っ込むけど…

もしかしなくても、さっきの話を勇者に聞かせるんじゃねぇだろうな…

レイのコトは全肯定の俺だからいいが、普通は引くぞ…と思いながらも意識を勇者に戻した

ハッと意識を取り戻すと目の前にはレイとフェイがいる

さっきからそんなに時間は経ってないみたいだが、一体なんなんだ?

俺が状況に首を傾げているとフェイが説明してくれた

そして…

「うん…なんかレイらしいな……」

何言ってんだ???ってのが正直な感想だ

レイってこんなアホだっただろうか?

もっとカッコ良かったような記憶なんだけど、俺の中では

「オレらしいだろう!」

「レイはポジティブに受け取ってますが、セリ様はめっちゃ気を使ってめっちゃ引いてますけど!?」

「うるさい奴だな」

「セリ様もはっきり言ってやらないとレイはどんどん暴走しますよ

それでなくてもストーカーって危ないんですから」

「誰がストーカーだ!?」

レイは人に言われると認めないけど、自分ではストーカーって自覚はあるんだよな

「確かにストーカーで危ない奴だけど、でも俺はそんなレイも嫌いじゃないかな

ってか、危なさで言えばオマエも変わらねぇだろフェイ」

俺から見ればどっちもどっち

危ない種類が違うだけで、取り扱いは超注意なんだから2人とも

「この人よりマシだと思ってます」

「人に指差すな」

フェイが差す指を曲げようとするレイ

「そんな危ないフェイも嫌いじゃないし

まぁやりすぎの時はキツいけど」

「危ないって言うのは…」

フェイは俺の左腕を掴み、レイは俺の右腕を掴む

「私達がセリ様を引っ張り合ったら腕が取れるくらいの痛みで泣いてしまうからですか?」

楽しそうにフェイが笑う

ちょっと前の俺ならそれで泣いてたかもな

でも、俺だって成長してるんだぜ?

俺は2人に微笑み、ぐっと自分の方に引き寄せた

2人の吐息が頬にかかるくらいの距離

「残念だけど、俺は1人しかいねぇから

どっちと先にキスしようかなって迷うな

フェイは酷いコトしようとするから、やっぱりレイが先かな?」

「なんか知らんけど勝手にポイント下げてもらってラッキー!!

セリはフェイよりオレの方が好きなようだ!!」

レイの異様なほどのテンションの上がり方

そのテンションいつまで続くんだ!?いつものクールでカッコ良いレイはどこ!?

「ちょっと待ってください!ポイントで言うなら、先ほどレイに対してドン引きしていたではありませんか!?

私がレイより下とは思えません!!」

「見苦しいなフェイ、現実を受け止められないなんて男らしくないぞ」

「それお前な!?一時期嫌われていたくせに受け入れなかったのはどちら様で!?」

「それはあんたもだろ!?しかもオレは最初はセリと大親友っていう最高の好感度に対して、あんたの最初は地の底の死ぬほど嫌いだって話じゃないか」

早く部屋に帰りたい…

俺の頭の上で言い争うんじゃねぇ

だから2人と一緒に3人で会うのは嫌なんだよ…こうなるからさ

1人ずつ、俺と2人っきりの時の方がいいんだけど

「なんだそれ自慢か!?いつも同じ話しやがって!!上等だ!表出ろ!!」

「ぽっと出の脇役がでしゃばるな!!いいだろう!表で決着つけてやる!!」

「私から見たら後から出てきた脇役はお前な!!」

「いやオレから見たらあんただから!!」

そんなコトを言い合いながら2人は部屋を出て行った

暫く廊下から騒がしい声が聞こえていたが、そのうち静かになった

近所迷惑すみません…

さて…俺は部屋に帰ってゆっくりしよう

どうせ数時間したらまたアイツら仲良く話してるんだし、いつも通りほっといていいだろ


そして、1時間もしないうちに部屋のドアをノックする音が聞こえて開けると

ボロボロのレイが倒れ込むように部屋に入ってきた

俺はそんなレイを支えながら回復魔法で傷を治す

「レイが勝つなんて珍しいじゃん」

レイは強さを失ってるから、いつもあぁなってここに来るのはフェイの方だった

「目潰しで勝った」

「卑怯!?」

「フェイが男らしくない卑怯者とか叫んでいたような気もするが、知った事か

好きなもの手に入れるのにルールなんてない」

最低だよアンタ……

いや、レイは最初からルールねぇ奴だった

あったら俺が嫌がるコトしないもん

それでも…レイのコト好きなんだよな俺…

「強さを失ってからフェイに勝てた事はなかった…

いつもこの部屋に来るのはフェイだろう?

たまにはオレもセリに触れたい…

卑怯者と言われようとも…どんな手を使ってでもここに来たかったんだ」

レイは俺の頬を優しく包み込む

「……それだけ俺のコト好きなんだって良い風に取っとくよ…」

「もう時間がないか…」

窓の外に目を向けて夕方の色を知って呟く

夜は会えないから、今のレイと一緒にいる時間は限られるんだ

レイは俺を抱き寄せてキスしてくれる

短くて軽めのキス……

深くて長いキスをしちゃうと…離れたくなくなるもんね…

「おやすみ…セリ」

「またなレイ、おやすみ」

そうしてレイは部屋を出て行った

静かな部屋に…慣れない寂しさと切なさが襲う

小さな息を吐くと、ドアがノックされて開く

そこには目を押さえたフェイの姿があって、レイと同じくらいボロボロだった

倒れ込むように入ってくるフェイを支えながら回復魔法を使う

「卑怯な手を使われたとはいえ、負けは負けですからね…

邪魔せずに待っていましたよ」

「だと思った

フェイなら反則だ!無効だ!って乗り込んでくるかと思ったけど、いつもレイが負けるから勝ちを譲るタイミングもほしかったんじゃねぇか?」

「私がそんなに優しい人間に見えますか?

貴方もいつもおっしゃるように私は酷い男ですよ」

「なんだかんだ言ってオマエにも優しさはあるよ」

「………泣かしますよ」

フェイは照れてるのかそっぽ向く

本当にフェイも丸くなったよな

「…俺は…オマエが羨ましいよ」

今のフェイを見てると、そう思うコトがある

たまに過るんだ

「急に何を、セリ様が私を羨ましいと?心当たりはありませんが」

「レイと友達になれるフェイが羨ましい」

俺の言葉にフェイはちょっと考る素振りを見せて首を傾げた

「……たまに、何でこの男と友人やってるんだろうと思う時はありますがね」

最初はお互い印象も好感度も最悪の最悪だったのに、なんでか仲良くなってたよな

たまにの迷いはレイの暴走からはじまるんだろうけど、でもなんやかんや仲良く見えるぜ

ってか、レイは普通の人じゃついてけないだろうし無理だろ

だから、俺はフェイがレイの友達になってくれて嬉しい気持ちもあるが

「俺はレイと大親友だった

もうその時のような関係には戻れないけど、俺は友達ほしかったから

なんか…寂しさもあるような、複雑な感じ」

「セリ様は友達いませんもんね」

フェイは嫌な顔して笑うが、本当のコトすぎて怒る気もない

「そうなんだよ、みんな俺のコト好きになっちゃうからさ」

「何こいつ…」

俺も自分で言ってて何自分って思うぞ!?

いや…みんなじゃねぇか

前の世界の幼なじみの親友は逆だったし

「まぁ…そうですね、私もセリ様の友人にはなれませんし

私もレイがはじめての友人で、それ以外の友人はいません

それでも、友人って勝手にできるものだと思います

セリ様にもきっと良き友人が現れるでしょう」

「珍しく励ましてくれるじゃん」

意外だなってちょっと驚く

でも、フェイの気遣いに笑みを浮かべた

「……別に…

私は貴方の泣く顔が好きですが…たまには、私だけに向ける笑った顔も見たいと…言いますか…」

目を逸らして呟くフェイの顔が赤い

「なんて…?聞こえないんだけど?照れてんのか?」

ふふって、わかってて俺はフェイとの距離を詰める

「それ以上近づいたら痛い事しますよ!?」

フェイは押しに弱いのかも?って、またフェイのコトわかったような気がする

でも、やりすぎると痛い目みるの俺だからこれ以上はやめとこう

「友達いないって言えば、和彦もいねぇよな?」

「和彦様に友人ができると思いますか…?

セリ様にはわからないでしょうが、和彦様と同じ空間にいると普通は息が止まるんですよ」

息苦しいじゃなくて止まんの!?

いや、でもなんとなくわかるかも…

前の世界で再会した時から和彦は俺を気に入ってくれてたけど、どことなく雰囲気というかオーラというかが恐いって感じはあったかも

今はもう和彦は俺にベタ惚れだから、俺といる時の雰囲気はそんなんじゃねぇけど

雰囲気が恐いといえば、香月もか

香月も普通の人はその場にいるだけで恐怖のあまり死んでしまうってくらいヤバいもんだ

勇者の俺ですらそれは少なからず感じる

でも、香月も俺にベタ惚れだから恐さはそんなに感じるコトはねぇけど

「長年お仕えしている私でも気を抜けません

恐ろしいのですよ、和彦様は」

「ほえー」

「そんな和彦様なのに、何故このようなアホ面した見た目が良いだけの無能な雑魚をお選びになったのか……信じられません

正直、和彦様と貴方が釣り合ってるとは思いませんね」

「失礼すぎねぇ!?オマエと違って和彦は俺の人としての良さをちゃんとわかって選んでくれてるんだよ!!……た、たぶん……」

いや!自信はある!!全部好きって言ってくれたもん!!

「っつーか!!そんなボロカスに言ってるが、オマエだって俺のコト好きじゃん!?」

「だから、貴方は私で十分と言ってるのです

完璧で最強最高の和彦様より、私くらいにしておけと言ってるんですが?」

「………何、独占欲持ってんだよ……(何か照れる…)

それフェイも無能な雑魚って自分で言ってるようなもんだぞ」

「和彦様から見たら誰でもそうでしょう」

「そういやオマエはなんでも和彦基準だったな

それで言うなら、香月なら和彦と対等じゃね?」

「和彦様と香月様が友人同士になれると思いますか?」

「………無理だな」

どっちもやべぇけど、友達になるのは絶対無理だ

性格的にも

そうして話していると、噂をすればなんとやら

ドアがノックされたかと思うと珍しく早い時間に和彦が帰ってきた

「ただいまセリくん」

「あっおかえり和彦!って今日めっちゃ早いじゃん、暫くは帰れないくらい仕事忙しいって話だったのに」

和彦の姿を見ると俺は駆け寄った

今日も帰らないか俺が寝た頃に帰ってくると思ってたから会えて嬉しい気持ちからだ

「セリくんとデートしたかったから今日は早く帰れるようにした」

「マジ!?ヤッタ!じゃあすぐ着替えるよ」

和彦はいつも忙しいから夜にデートするコトが多い

今日は何着ようかな~?ってクローゼットの中を眺める

「お邪魔しています、和彦様」

「フェイもこの後の予定がないなら一緒に来るか?」

「よろしいのですか?」

和彦と2人っきりも良いけど、たまにはフェイと3人でってのもありだな

「俺は全然オッケー」

クローゼットの方を向いたまま返事をする

じゃあこの服にしようかなって手に取ると

「今夜は3Pで決まったな」

和彦が不穏なコトを言って、俺の動きが止まる

「いいんですか!!!???」

フェイの物凄い食いつきに俺はそのまま静かにクローゼットの中に隠れて息を潜めた

静かにクローゼットの扉まで閉めて…

………勝手に決めんじゃねぇ!!!??

いや…前からその話はあったけど……

いつも俺だけがしんどいやつな!?

香月と和彦と俺の3人は何回もあったけど……和彦とフェイと俺の3人ははじめてだし…

なんか、このままいくとそのうち1人増やして4人で……最終的には5人でってなりそうなのが怖い

その時って絶対俺死ぬよな…って震える

和彦はやりたがるけど…

限界は2人…それでもコイツら相手は死にかけるぞ

「めちゃくちゃその日を楽しみにしていました!!

今夜は張り切りますね!!!」

張り切るな!!?いつもより大人しくしとけ!!

フェイの楽しみでたまらないって声がしんどい

「オレも久しぶりだからセリくん寝れないかも」

今からもう寝たい

楽しみなのは和彦とフェイだけで俺だけなんか無

2人のコトは好きだけど、好きと大変なのは違うと思うんだよ!!

好きだからってできるコトの限界はあるって!!

「そういう事だから、隠れても逃げても無駄だよセリくん」

和彦はクローゼットを開けて俺を引っ張り出す

「……わかった、いいけど

2人相手は大変だから手加減して…優しくしてくれよな」

今夜…って考えただけで耳まで真っ赤になって声が小さくなる

「無理です」

「俺だって無理だから!?死ぬよ!?」

「無理ですよ!?私は寝取るのが大好きですから!!?

主人の目の前で主人の恋人を寝取るなんて最高のシチュエーションで理性保てると思いますか!?」

……む…無理そう……

そうだった、フェイは寝取りフェチで自分の主人である和彦の恋人の俺を和彦の目の前で寝取るなんてコイツの1番の夢みたいなもんだ

和彦は和彦で寝取られフェチだから、寝取られ相手が自分の部下とかめっちゃ楽しみそう!!?

ここにいるのは俺の味方のハズなのに、誰も俺を助けられない…みんな敵だ…

「まぁ…落ち着けよフェイ…まだ気が早いって

まずはこれから3人で出かけるんだから

外の空気で頭冷やしてもらって…」

「この夏の暑い夜に冷えないですよ」

冬でも冷えないんだろうな…

とりあえずこのコトは忘れて、まずは普通にデート楽しむか!ってコトで着替えて出掛ける準備はオッケーだ!

「今日はどこ行くんだ?」

「プール貸切にした」

「おっ!いいね!暑いし、ナイトプール楽しみじゃん」

部屋を出るのにドアを開けようとすると何かに引っかかった

ん…?鍵掛かってないのになんで開かない…?

と思ったら、ドアの前にいた何かがどく

そのままドアを開けるとセレンが最高の笑顔で居座っていた

また盗み見と盗み聞きしてやがったな!?

「さ…最高ですわ……今夜…セリ様が和彦様とフェイ様から………祝!!お祝いですわ!!

初の組み合わせに歓喜!!!

一体どんな凄いプレイを……セレンは…セレンは……意識を保てるか怪しいですわ!!」

この世界一の腐女子セレンは興奮のしすぎで現実に戻ってこれない

「見せもんじゃねぇぞ!!??覗くな変態!!!」

「ご安心くださいな!もちろん今夜の戯れを覗くなんてそんな雰囲気を壊すような事はなさいません

和彦様もフェイ様もセレンの気配に気が散るでしょう

ただ!セレンは!!今夜の情報を知り、後は妄想で次の新刊に描き下ろすだけですの!!」

それで世界中の腐女子仲間に一瞬でその情報が広まるんだよな

いつも俺をおもちゃにしやがって…

「叶うならセレンは天井になりたいですわ!!壁でもいいんですのよ!?いや…ベッドに転生したい!!ベッドに転生できるならセレンは何でもします!!お願いします神様!セレンのお願いを叶えてくださいまし!!」

神様って自分のコトじゃ…腐ってもセレンは女神、腐ってもこれでも神族…

セレンはお願い!って言う時に手に持っていた袋を手放して手を合わせて指を組む

その手放した袋から流れるように綺麗な封筒が何通も零れた

「おいセレン、なんか落としたぞ」

零れた封筒をかき集めて袋に戻してセレンに渡す

「まぁ!ありがとうございますセリ様

こちらを焼却炉に持って行く途中で、つい我を失って立ち聞きしてしまいましたわ」

「封が開いてなかったけど、中身も見ずに捨てるのか?

大事な仕事のもんとかじゃねぇだろうな…オマエさぼり癖あるし…」

「セレンはサ、ささサボってなんて……いませんわぁ…」

めっちゃ視線が泳いであっち向いた

セレンがサボってんのなんてみんな知ってるけど

「サボってる事は置いておいて…」

やっぱサボってんじゃねぇかコイツ

「この手紙は仕事に関係ございませんわ

全てセレン宛てのラブレターですもの」

「ラブ…レター……だと?

俺は一度も貰ったコトねぇのに!?そんな大量のラブレターをセレンが……」

中身はともかく…外見は誰もがイメージする女神様だからセレンってめっちゃモテるんだよな

お見合いの話とかもよく来るし、セレンはいつも断ってるけど

みんな見た目に騙されすぎてる……

「私でよければセリ様に書きますよ?」

「フェイのラブレター見てみてぇけど、怖いコトしか書かないの想像できるからいらねぇ」

ドキドキの意味違いそう

女の子からラブレターをもらうって憧れてたな~……そんなコトなかったけどな!!

「待て、ラブレターなら断るにしてもちゃんと返事してやれよ

読まずに捨てるなんて失礼だろ」

「興味ありませんわ、読む時間も断る返事を書く時間も無駄ですもの

セレンにとって、セレンの事が好きな殿方は虫ケラ以下ですわね」

「どうしてそんな歪んでんだよオマエは!?

みんな目を覚ますべきだ…」

セレンはドンッと俺の顔の横に手を伸ばしてそのまま壁につけた

壁ドンからの上から覗き込まれるように見下ろされる

えっ…怖い…

「そうなんですの!!皆様は目を覚ましてほしいんですの!!

この世界の殿方全てはセリ様を愛するべきなんですのよ!!!

全世界の男達から狙われるセリ様……あぁ…最高ですわ…凄いですわ!!」

………。

和彦が…とか…フェイが…とか……

そんなのと比べものにならんくらいの狂気が目の前におった……

「イカれとんのかオマエは!?」

「イかされるのはセリ様ですわーーきゃあーー!!!」

「俺のコト嫌いだろ!?殺す気か!?」

残酷すぎる…俺はいつもセレンのおもちゃ

「セリ様はセレンの最推しですわ!!そして最推しカップルはレイ様とセリ様ですわ!!

全世界の男達から追われるセリ様を守りながらレイ様と愛の逃避行…なんたらかんたら」

セレンはもう暫く現実には戻ってこれない

目の焦点がどっか行ってる

っていうか、コイツにも好きな殿方いるんだよな…

たぶん、その人は省くなんだろうな

今のところ、望みはなさそうでセレンの片想い…

「で、どこ行くんだっけ?」

俺はセレンの存在を目の前から消して和彦とフェイと一緒に出掛けるコトにした


貸切ナイトプール!!イエーイ!!

ひゃ~!冷たい!!最高!!

プールに浸かりながら冷たいジュースを飲む

贅沢だ~…浮き輪に身を任せていると

「セレン様って面白い方ですね」

フェイがさっきの話を掘り起こす

「忘れろ、あれは俺達の手に負えねぇよ」

「前にレイから見せてもらった事があるんです

セレン様の一押しの漫画を」

同人誌な、フェイにそういう知識は与えたくないから黙っとく

ってか、結局貰ったのか買ったのか、レイの奴

「私もほしいので今度セレン様にお願いします」

「まぁ…めっちゃ絵綺麗だし、ちゃんと特徴掴んでるし、ビビるくらいエロいし(グロいのもある…)

凄いとは思うけど、全部俺!?ってところがちょっと…」

もう諦めて好きにさせてるところはあるけど

「死者の国で1番売上あるのがセレンだったりする」

「マジ!?やべぇ!?ホンマか!!?セレンとその仲間達凄すぎる!!」

仕事してないのに趣味で稼いでる!!

死者の国って何もないもんな

でも、死者の国の資金の大半がBL同人誌の売上っていうのどうなん…

死者の国がどんどんよくなるのはセレンのおかげなのか…

俺の同人誌で…ん?あれ?俺達のおかげでもあるんじゃ…?

「漫画の中の事が現実で出来るのはオレ達だけだな」

そう言って和彦は俺の浮き輪を掴み引き寄せると、唐突にキスしてきた

「いきなり何!?」

和彦まで同人誌のコト漫画呼びなん笑う

なんでも知ってる和彦でも、その辺の知識はないみたいだ

「ジュース飲んでキスが甘くなってる」

ふふっと笑う和彦に、仕方ねぇなって許す

「私も甘いキス貰っていいですか!?」

「はっ!?甘いとか、なんか恥ずかしいんだけど!?

あっ!そんなコトよりカキ氷食べるぞ!!」

頼んでいたイチゴ味のカキ氷がやってきて笑顔で受け取る

やっぱ夏と言えばカキ氷は食べないとだよな!

パーカーの袖をちょっと捲ってからスプーンで氷をすくい口の中に運ぶ

「うー!つめた~い!美味しい!!」

「ひとくち」

和彦が俺の隣にやってきて口を開けるから、スプーンですくって一口あげた

「俺も味見したい」

と言ったら和彦が頼んだブルーハワイ味のカキ氷を一口くれる

カキ氷のシロップは同じって言うけど、なんか味違うの不思議だよな

「私まだもらってないんですが!?」

「そんな大きな声出さなくても、ひとくちや…っ」

カキ氷をスプーンにすくおうとする手をフェイの左手で掴まれ、俺の顔を右手で掴んでキスをする

和彦に見せつけるように、和彦より長く深く…息苦しくなるくらいの

フェイの舌が…いつもより、熱い……

「……私も甘いの、もらえましたね

カキ氷を食べたセリ様の口の中冷たくて気持ちよかったです」

「…せっかく冷やしたのに」

また熱くなった身体を冷やすようにカキ氷を食べる

フェイもカキ氷ほしいと思ってたから油断した…

「確かに…和彦様の言う通り、現実でセリ様にキスできるのは私達だけですね」

冷たいプールの中とカキ氷を食べても身体は冷えない熱くなる…

本当に…今夜は寝れそうにないな

プールでまったりしたり、急に全力で泳いでみたり満喫しまくった

「セリ様って泳げるんですね」

「得意じゃねぇけど、まぁ学校で習うくらいは泳げるよ」

「溺れてほしい」

「なんでだよ!?」

ホンマにコイツすぐ嫌なコト言うよな!?俺に惚れてるくせに!!

「俺が何もできねぇ奴だと思ってんのか!?」

「思ってます

和彦様は何でも出来る完璧な人です

和彦様に出来ない事などありません

しかし、セリ様は出来ない事の方が多いので泳げる事に驚いています」

和彦信者が!

「和彦は確かに何でも出来るって俺も知ってるけど

1つや2つくらいはなんか出来ないコトとか苦手なコトってあるだろ?元人間なんだし」

「ありませんね」

「オマエが知らねぇだけじゃ?」

「セリ様は知ってるんですか?」

いや…知らんけど…

和彦って本当に何でも出来るし苦手なコトねぇし…本当に完璧なんだよな

「いや!和彦にも欠点があるぜ!

性格がヤベェコトだ」

「私から見れば、そのヤバい性格が完璧ですけどね」

似た者同士だった…

まぁ…俺だって、和彦の性格ヤバいと思ってるけど…優しい時もあるし…俺のコトなんやかんや大切にしてくれる

やっぱり完璧なのかも……

「まぁ和彦はそうでも、オマエは最低最悪だけどな」

「セリ様に嫌われて本望です」

「嫌いとは言ってねぇよ、性格の話してんだよ」

フェイも丸くなったし優しい時もあるから…もう前みたいに嫌いじゃない…ちょっと好きくらい

そんなこんなでバーベキューの準備ができたみたいで俺達はちょっと遅めの夕食をするコトになった

「お腹空いたー!肉いっぱい焼くぞー!野菜も忘れねぇし、海鮮もあるって最高だ!!」

適当に肉野菜海鮮を熱々の網に乗せて焼いている間にご飯よそって箸や皿を並べる

「美味しく焼けてそう!!

はい和彦の分、こっちはフェイの分」

と2人に肉野菜海鮮が焼けたら皿に乗せて渡す

「いっぱいあるからいっぱい食べろよ」

網が空いたらまた焼いていく

「飲み物もうなくなりそうだな、次何飲む?」

「同じもの」

「………。」

「オッケー、フェイは?」

「…いや…こわい」

さっきからフェイの時が止まってるかのように箸が進まないと思ったら震えてる

「何が!?」

「私のセリ様のイメージはワガママ放題の小悪魔ビッチなんですけど

なんですか?その飲み会で気が利く女みたいな振る舞いは、私の知らないセリ様がいたなんてこわいですよ」

ビッチは余計じゃ?尻軽なのはもう認めるけど言われるとムカつくな

「まぁ、いつもレストランとかで食事するからこういう食事の仕方は珍しいか」

「セリ様って面倒見がいいというか世話好きというか、そういう一面もありますよね」

「うーん、わかんねぇけど3兄弟の長男だからかもな?そういう一面があるように見えるなら

さっきフェイが言った飲み会で気が利く女みたいって言ったけど、ある意味正解だぞ」

俺があれやこれやとやってるのは昔会社の飲み会で周りを見てよく動く女の子がいて

そういうの素敵だなって思って、俺はその女の子の良い面を取り入れただけ

って説明したらフェイはさらに顔を青ざめた

「そこはその女の子を意識するとかじゃなくて、良い一面だから自分もやってみようって思うのちょっと男としてズレてませんか!?」

「うるせぇな!俺に女の子と縁があると思うか!?

それにそんな簡単に誰にでも惚れねぇよ!?」

「セリ様が女の子と縁があると思いませんけど、押しに弱いセリ様は簡単に男には惚れますよね」

ダブルで強く傷付いた!?

簡単じゃねぇけど!?4人の男が好きって言うのは周りから見たら簡単に惚れてるって思うかもだが、色々あっての好きだから!!

誰でもいいワケじゃねぇぞ!?!?

「でもセリ様らしいので安心しました

そうですね、気が利く女がいるなら気が利く男がいてもいいです

私はセリ様がお皿に料理を入れて渡してくれるの嬉しいですし」

「……急にデレるのやめろよ、調子狂うから」

俺はおかわりを待っている和彦のお皿に出来上がった料理を入れる

「セリくん、焼くのに夢中になって全然食べてない

オレが代わろうか」

和彦は俺に良い感じに冷めた肉を食べさせてくれる

熱いの苦手な俺のコトわかって配慮してくれる和彦好き

「この肉めっちゃウマ!!

いいんだよ和彦、俺は好きでやってるんだし

適当に食べてるし大丈夫」

「いや、セリくんにはしっかり食べてもらわないと朝まで持たないなって」

「朝までは聞いてねぇぞ!?!?」

口を開くと和彦が野菜を口に入れる

野菜もめっちゃウマい…

「オレもセリくんが焼いてお皿に乗せて渡してくれると何倍も美味しく感じる」

ふっと笑う和彦の顔を見て、それなんだって改めて思う

気が利く女の子がお皿に取り分けて渡してくれると、なんか嬉しいし美味しく感じる

別に俺はその女の子に特別な感情があったワケじゃねぇけど、誰かにそうしてもらうってなんか良いよな…

それが好きな人だったらもっと強く感じると思って、俺は和彦にもフェイにも俺と同じ良いを感じてほしかった

そして、それは何倍にもなって感じてくれてるようだ

特別でもそうじゃなくても、ほんのちょっとでも良いコトなら俺はスゴイって思ってやるんだ

「セリ様が3人兄弟って事は知っていましたが、まさかお兄さんとは思いませんでした

あんなにワガママで自分勝手なので、弟さんではなくお兄さんがいるのかと」

「どっからどう見ても立派なお兄さんだろ!?俺が長男ってそんなおかしいか!!?」

「兄弟ってどんな感じですか?」

フェイは兄弟がいないから気になるのか

和彦も一人っ子だけど、俺の過去は聞かないでくれている

単に俺自身に興味ないだけかもしれねぇけど…

「…兄弟の仲は普通だけど……過去のコトはあんまり思い出したくねぇかな…」

弟達と何かあったワケじゃない

でも、弟達は過去の話…過去は俺を殺すから思い出したくない

「……申し訳ございません…」

フェイの気を使った声にハッとする

「いや!大丈夫!!謝んなくていいよ、フェイ」

忘れよう…嫌だったコト…過去のトラウマ……忘れたい

本当は毎日思い出す…とくに朝起きた瞬間とか……嫌なのに、思い出したくないのに苦しい

消えろ…消えろ…って、何度願っても、消えてくれたコトはなかった

ちょっと微妙な空気になって、時間が過ぎる

俺は気にしなくていいって言ったし、2人もいつもと変わらずに接してくれてるハズなのに

俺が気にしすぎなだけ……思い出すと引きずってモヤモヤが暫く晴れなくなる


そうして、俺達はホテルの部屋に来たのだが…

「……疲れたな…」

あの体力化け物の和彦から絶対に聞かない言葉が出た

確かに俺はプールで遊んで疲れたけど!?

あの程度で疲れる和彦じゃねぇだろ…ってか、疲れ知らずの和彦が…食い過ぎか?

いや、それもいつも通りか

「…そうですね……」

続けてフェイも返事する

和彦ほどじゃなくてもフェイも疲れてると思えない…

なんなら2人とも1週間は寝なくても元気そうなレベル

逆に怖い……

さっきまで朝まで寝ないとかなんとか言って楽しみにしてたよな…?

「今日は休もう」

「はい」

そう言って、和彦とフェイは別々のベッドに座る

ってか、ベッド2つしかないのに俺は床で寝ろって??

「えっ……?2人とも変じゃね??」

守護霊が変わったか人格が変わったかのどっちかしかないだろ

「セリくんはオレと一緒に寝る」

和彦が来いって手招きするから俺は素直に和彦の方へ近寄ると、そのまま手を掴まれベッドに引きずりこまれる

「おやすみ」

「おやすみ…って!?本当に寝るのか!?

何もしないまま!?和彦もフェイもめっちゃ楽しみにしてたじゃん!?」

和彦は俺の頭を優しく撫でて、眠気を誘ってくる

プールで遊んで疲れたし…眠いのは眠いよ、俺は

でもこの2人が何もしないで寝ようってコトの方が怖いんだって

「……セリ様、貴方はご自分で気付いてないのでしょうが

顔色も悪いですし震えてますよね

お休みになられた方がよろしいかと」

フェイの声が聞こえて、目の前の和彦は余計な事を…って顔をする

言われて、気付いた

俺はいつもと変わりないように振る舞っていたつもりだった…自分はいつも通りだって……

顔色は確かめれてないが、自分の手が震えてるコトに気付いて…その手をぎゅっと握る

………そっか…そうだ……

今の俺じゃ、きっと2人を怖いって感じる……

そんな状態で……できるワケない……

むしろ、気持ち悪いとまで思ってしまう……

和彦のコトもフェイのコトも好きなのに……

ちゃんと好きなのに……

愛し合うコトが……気持ち悪いと思ってしまう…吐いてしまう……

和彦の手が俺の手を優しく包み込んでくれる

少し落ち着いて……知らない間に眠る


眠りが浅く急に目が覚めて

身体を起こすと両隣で和彦とフェイの寝息が聞こえる

俺はフラフラと部屋を出て屋上へと向かった

外に出ると冷たい風が目を覚ましてくれる

「静か……高い……」

真っ暗でも微かな明かりでどれだけの高さがあって……きっと死ねる高さを確認できた

屋上の端に立って…

「セリくん」

後ろで和彦に呼び止められる

俺が起きたコトなんて当たり前に気付いてるか

「和彦…」

「そこは危ないから、こっちに来い」

「危ない…な…確かに

でも、無理かな」

「なぜ」

背を向けてた俺は和彦の方に向く

「早くいかなくちゃ…あっ、死のう…って

頭の中でずっと繰り返される

胸が高鳴るんだよ、高ぶる?そうしなきゃって…

あー!!いかなきゃ!!早く!!早く……って」

後ろに下がると宙に落ちる

でも、そのまま和彦が許してくれるワケなくて俺の手を掴んで引っ張られて、元の場所に戻る

「和彦なら…そうすると思った……」

「……自殺はしないって約束したのに」

したくないよ……いつもの俺ならね

でも、たまに頭の中で繰り返されると気分が高まるって言うか

これが救いなんだって、幸せなんだって、思い込んでしまってる

死んだら幸せになれるって……前世の記憶を取り戻してない俺だったら本気で信じてた

そうじゃないと、報われないと……絶望しかないから

実際は絶望しかないが正解だったけどな

今はみんながいるから絶望だけじゃないって知ってるのに

頭の中で繰り返されるこれが来ると抗えない

「ほっといて」

「オレがこの手を離さないってわかってるのに」

いつもなら嬉しいハズなのに…

全部……何も感じない

ふっと俺の意識はなくなって、契約が表へと出てくる

「勇者の様子がおかしいな」

「時間がないのかもしれない」

和彦は俺が表に出ると手を離した

お~ヤダヤダ、レイ以外と手を握るなんて

「勇者の言ってた頭の中で繰り返されるって話

俺には何も聞こえねぇから、例えば悪魔かなんか悪い奴が何かしてるってコトはねぇな

まぁそういう類はされたら俺がわかるし」

「セリくんの心理的な事か…運命か…」

「どっちもありそうだけど、運命が急かしてるような気もするな

23歳で死ぬ運命なら、和彦が言うようにもう時間がない」

「運命を変えられる方法が見つかるまで、お前がずっと表に出ていたらどうだ?」

「ずっとレイと一緒にいられるからそうしたいが、運命はそんな簡単なコトで変えられるとは思えねぇぞ」

俺が言わなくても和彦もわかってるみたいだった

運命を変える鍵はイングヴェィにあり

でも、そのイングヴェィの力が今は失っているなら…

「…間に合わないって言っても、勇者は何度も生まれ変わるんだから

ダメだったら来世で頑張ればいいじゃん?

俺は今の勇者が死んだらきっと消滅するけど…」

「お前はそれでいいのか?消滅して

レイと一緒にいたくないのか?」

「いたいけど……ダメな時は仕方ねぇだろ…

和彦は生死の神になって寿命がないから、来世の勇者にも会えるのに

なんでそんなに必死になれるんだよ」

和彦はいつも余裕があるように見える

今だって余裕そうには見える

たぶん、和彦の感情がどうなろうとその見え方は変わらない

だけど、話してたらわかる

和彦が勇者のために一生懸命だってコトは

コイツが一生懸命になるなんて、今までなかっただろうに

「セリくんは永遠に生まれ変わる事は知っている

でも、その運命はいつも同じような運命だ

時代が違うだけで、同じような運命を辿るって事は

生まれ変われば必ず不幸になると約束されているようなものだ

お前もセリくんの中にいるなら少しはわかるんじゃないのか?」

………大悪魔の契約の俺は勇者の全てを知ってわかってるワケじゃないが…

この身体に世話になってきてからずっと見てきてる

さっきのコトもだ……

勇者のトラウマも本人にしかわからなくても、その苦しみようを見ていたら………

想像くらいはできる

「だから、和彦は勇者を今助けてやりたいんだな…」

「オレだけじゃない

レイも、香月もフェイも…皆もだ」

レイがそうなら……

「わかった…俺もできるコトは協力する

とりあえず、さっきみたいに自殺しようとする時は俺が表に出て阻止するよ

さっきは和彦が絶対助けてくれるってわかってたから出てこなかったけど」

「助かる」

「別にオマエのためじゃねぇし、レイが勇者を助けるなら俺もお手伝いするだけなんだからな」

「セリくんの様子は?」

「俺が表に出てから眠ってる

でも念のために今日一晩は俺が表に出てた方がいいかな

っつーコトで、ベッドは俺によこしてオマエは床で寝ろ」

ベッド2つしかなくて和彦かフェイのどっちかと一緒に寝るとかトリハダもんなんだよ

とくにフェイは天敵!!!大嫌い!!

あー!ヤダヤダ!!

部屋に帰ろうと和彦より先に歩き出すと

「悪い…やっぱり今日は朝まで寝れないかもな」

妙なコトを言うからピタリと足が止まって、和彦の方へ振り返る

「俺に指一本でも触れたら…!?」

「魔族が5人……結構な強さの奴ら」

あっ、そっち……

急に俺に変な気分向けてきたのかって勘違いして恥ずかしい…!!?

魔族が5人?俺も魔族の気配くらいわかるけど

魔族の気配にいち早く気付くのは勇者、その次に和彦だから

俺より和彦の方が先に気付く

「殺気を隠さないって事は誘き出されている?

どっちにしろ相手する事になるなら、乗ってやる」

「和彦は魔族を殺せねぇから、不死身の相手5人はキツいだろ

魔族を殺せるのは勇者だけ、代わるよ」

俺が意識を引っ込めると、眠ってた勇者は魔族の強い殺気に目を覚ます

「っ…!?魔族が5人!?」

「セリくん」

目の前の和彦は魔族の強い気配を感じているハズなのに、どことなくホッとしたような表情だ

さっきのコトで…心配かけたな

魔族の殺気で色んな意味で目が覚めた

「和彦はフェイと一緒にここにいて

あの魔族5人はみんなキルラくらい強い」

「それならオレがいないと駄目」

……確かに、和彦のフォローがないと勝てるかわからない

キルラのレベル2人を同時に相手にするのも大変なのに、それが5人ってなるとな…

向こうは俺の気配を感じていてもその殺気は俺に向け続けている

俺のコトをよく思わない連中か…前は大人しかったが最近は活発だな

屋上から下まで階段を降りる途中で、跪くフェイに出会う

「セリ様…きっと私では駄目だと思って和彦様に託していました

ですが、魔族が貴方の命を狙っているというなら、私もご一緒に」

フェイ……も、心配で近くにいてくれたのか……

さっきの俺はどうかしてた……

本当に……でも、たまにさっきのようになってしまう

いくつの前世でも…

その前世では支えてくれる人も救ってくれる人もいなかった…香月だけだった

今はたくさんいる…だから、何度あぁなったって…俺は死なない

今度こそ…生きてみせるって思える

「フェイ…ありがとう……

でも、今回の魔族はキルラレベルが5人もいる

和彦は生死の神になって死ぬ心配はないが、フェイは人間だから今回はここで待っててほしいんだ

俺も守れる自信がない…」

「……貴方は勇者でも、私と同じ人間で死ぬ可能性があります

足手まといかもしれませんが、セリ様の盾になって死ぬ覚悟はあるのです

どうぞ、連れて行ってください」

いつものフェイなら、俺を信じて待つコトを選ぶ

それは俺が絶対勝つとわかってて、そして自分が魔族相手だと足手まといだとわかってて…

だが、今回のキルラレベル5人は俺が死ぬ可能性が高いと思ったんだろう

「嫌だ!俺は自分が死ぬより自分の大切な奴が死ぬ方がずっと嫌だ!!オマエは連れて行かねぇ!!」

「私も同じ気持ちなのです

逃げられる相手ではないなら、戦って勝つしかありません

私の力も…」

フェイが死んで勝っても…意味ねぇよ……

ここで拒否しても、今度は私を倒して行けとか言いそう

俺がフェイに勝てないのはわかってて、無理矢理ついてくるつもりなのか…

どうしたらフェイは大人しく待ってくれるか言葉を考えていると

「フェイ、お前はここで待て」

和彦の言葉が重く響く

「承知しました、和彦様」

フェイはさらに頭を下げてから、道を開けた

和彦の言葉は絶対…フェイの気持ちよりも……

「フェイ……必ず生きて帰るから…俺を信じて待ってて」

俺はフェイに声をかけたが、フェイは目を合わせるコトもなく頷くコトもなかった

信じて…くれるとは思わない…

でも、最期にはしたくない


和彦と一緒に俺は外に出ると、魔族の気配がする方へと向かった

殺す気で来るならこっちも殺す気でいく

強さからして手加減はできねぇ

「和彦がいるからキルラレベルが5人いても大丈夫な気がする

俺1人だったら勝てるか微妙だけど………あれ?」

気付いた時には遅かった

隣にいたハズの和彦の姿がない

魔族の気配が強すぎて逆に気付けなかった…

いつの間にか、俺はその魔族の結界の中に隔離されていたのだ

和彦は弾かれて、外にいるだろう

でも、和彦は結界も破るほどの力がある

時間はかかるが、必ず俺を助けに来てくれる

問題は……俺がその時間まで粘れるかどうかだ……

「おもしれぇ…本気じゃん

俺を殺すのに5人がかり、そして邪魔な和彦まで排除するなんて」

目の前に現れた5人の魔族

顔見知りじゃないな、キルラレベルがどこに隠れてたってんだ

キルラの奴、自称四天王名乗ってるけど

このレベルがウヨウヨいるんなら四天王どころじゃねぇぞ

息をする暇もないスピードで5人とも俺に襲いかかってくる

それよりも速く対応して、避けながら1番近くにいた魔族の腕を掴んで投げ飛ばす

軽々投げられるコトは予想外なのか、全員少し怯む

ラッキー!セリカが仙人の師匠から教えてもらった武術が役に立ってるぜ!!

この力は最近のもんだ

オマエらにはこの新しい情報はまだねぇだろ

「なんで俺を殺そうとするのか話してくれたらいいんだが?」って話すワケねぇか

「勇者は我ら魔族の敵」

話してくれた!?しかも当然のコトだった!!

やっぱ理由はそれしかねぇか

それがまともな魔族の反応だし、考え方だ

魔族の王様である魔王の香月と人間の勇者の俺が恋仲になる方がおかしい

おかしいのは俺達の方…

「敵…本来はそうかも

でも、俺はできるコトなら戦いたくない」

「殺すか殺されるかの関係に、戦わない選択はない」

「俺は香月と仲良くやってる!だからオマエ達だって…」

「魔王様はおかしくなっているのだ

勇者を殺せば元に戻る」

何君達新人!?俺を殺せば香月も死ぬって知らないのか…

言っても信じないよな…

「俺を殺せば香月も死ぬんだぞ!?」

「嘘をついてまで命乞いか!情けない勇者よ死ね!!」

やっぱ信じてくれねぇ!?

火に油を注いだかのように攻撃が激しくなる

全部は避けきれない…手足を失ってもすぐに回復させる

だんだんスピードが俺についてこようとしてる

掴まったら逃げようがない…掴まったら終わりだ

1人ずつ倒したいが、止まったら掴まるよな…

どうする…このままだと俺の体力が尽きて…

一か八か……まずは1人倒すしかねぇ…

避けてばかりだった俺は、一歩踏み込んだ

すると後ろに強く引っ張られた

あれれれ???引っ張られた先に良い香りが鼻をかすめる

「か、香月……っ?」

俺は香月の見えない力に身を乗せてる

香月の気配を感じていなかったから驚きの方が強い

香月が俺を自分の後ろへと下げさせると一瞬で場の空気が恐怖で埋め尽くされる

その恐怖は勇者の俺でもかなり重い…息が止まる思いだ

この5人の魔力に隠れるくらい気配を隠して香月はここまで来てくれたのか

「魔王様…なぜ、そんな……人間を…」

その答えは聞けぬ前に、5人の魔族は恐怖のあまり息が止まり勝手に涙を流し、そして耐えられない恐怖に自ら命を絶った…

殺されるとわかっていて、それに耐えられず……

ほとんど香月は戦わずして、相手を倒すコトができる

その耐えられない恐怖の力で…見えない力を使うまでもなく…全滅させる…

「なぜ?セリを殺そうとする者は殺すと言ったはずです」

恐怖が和らぎ、息苦しさから解放される

「助けに…来てくれたんだ……」

「ここ最近よくない動きを聞くので」

香月の見えない力から軽く飛び降りたところで、和彦が結界を破って駆けつけてくれた

「セリくん……香月…も?大丈夫そう?」

「和彦…来てくれると思った

魔力皆無なのに、魔族の結界敗れるなんてオマエしかできねぇよ」

力で全てなんとかするタイプの和彦、振り切りすぎてて逆に信頼しかない

「香月が最近魔族の中で怪しい動きがあるから心配で来てくれたんだって」

ニコッと俺が笑うと和彦は少しムッとしたように見えたけど…気のせいか?

「……確かに、ボスちゃんの事もあったし」

「ありがとう香月…いつも助けてくれて」

香月にお礼を言って、目を合わせると引き込まれる

見つめ合ったまま何も言うコトなく、愛しい気持ちが募るばかり

「香月が来なくてもオレがセリくんを守れた」

和彦の言葉で魔法が解けたかのように視線が外れる

なんかちょっと機嫌悪そうな和彦の様子には気付いたけど、なんで??としかわからん

「2人とも心強いよ

それじゃフェイも待ってるコトだし帰ろうぜ」

香月と和彦の手を掴もうとしたら、和彦の手を掴もうとした左手が払われる

「…今はオレといるより香月といた方がいい

フェイにはオレから言っておく」

「えっ…?」

なんて声をかけたらいいか迷ってる間に和彦は姿を消す

「なんだよアイツ…」

俺の手を払うなんて……なんかわかんなくてモヤモヤする!!それからムカつく!!!

「知らねぇよバカ…いいよ、行こう香月」

モヤモヤの苦しさを抱えたまま、香月と一緒に魔族の国に帰ってきた



疲れた…

自分の部屋に入ってそのままソファに寝転ぶ

せっかくだからゆっくりしよう…

って、気を抜いたらすぐに眠気が襲ってくる

あ~…今寝たら夜寝れなくなるぞ……スヤァ…

……寝たか

勇者には悪いが、ちょっとばかし契約の俺を表に出させてもらうぜ

勇者のモヤモヤの原因は俺は知ってるんだよな

ふっと思い出す

和彦は勇者には言えないコトはよく俺に零すようになって…

俺は仲良くする気なんかねぇけど、別に話したきゃ勝手に話せばいい、聞き流してやるからってくらいは思ってる

「セリくんはオレ達を平等だと言ってるが、オレはそう思わない」

和彦の言葉がなくても、俺もわかっていた

勇者は香月と和彦とレイとフェイに強制的に恋人にされて(レイとフェイはまだだけど)、4人ともその関係を良いとしてる

むしろ、そうじゃなきゃ恐ろしいコトになるから逃げられないというか…

だからこそ、最初は悩みに悩んで…いや、強制されてるから無駄な悩みであるコトに気付き

それなら4人とも同じだけ愛して同じ時間を過ごそうと覚悟を決めた

確かに勇者は4人を本当に大切で好きな気持ちはある

それに多少の差はあるかもしれないが、偏らないように平等にを意識して

4人のやべぇ奴らから逃げられない勇者の誠実さでもあった

俺はレイ一筋ですけど!!

「なんだ和彦、自分が1番が良いのか?それとも自分だけのものにしたくなったとか?」

「何を言ってる?セリくんの中でオレが1番に決まってる」

真顔で言う和彦に本気なんだ…って何とも言えない気持ちになる

自信しかないもんな和彦は

「それでも…

香月じゃないと駄目な時がある

オレでも、他の誰かでも、駄目だ」

勇者だって無意識だ

いや、ある意味で言うと意識してるか

みんな同じくらい好き、愛してる、大切だ

でも、恋心があるのは香月だけなんだ

それを勇者自身は気付いてるのか、気付いていて他のみんなのコトを思って気付かないフリをしているのか

「何それ嫉妬?オマエでも嫉妬なんかするんだ」

見た感じ、和彦が嫉妬してるような様子も怒ってる感じもしない

なら、不満か?羨ましいのか?

和彦自身も

「わからないな」

と答える

あの和彦がわからないなんて珍しいコトも言うんだな、明日は槍でも降るんじゃね?

「オレはセリくんを助けたい

助けられないのに…香月は一瞬でセリくんを救う」

「……ムカつくよな…それ……」 

和彦の気持ちがわかるなんて、それもムカつくぜ

今のレイは俺を大切してくれるし愛してくれる…

でも、本物にはどう足掻いても勝てない

俺の場合は大悪魔の契約でレイの理想のセリ、ただの妄想…空想…夢……偽者

こっちがどんなに本物よりも愛していたとしても……

香月と和彦の場合はどっちの愛が強いとか知らねぇけど、きっと和彦は負けてる気はしないだろう

「香月と勇者の間には誰も入れないってコトだ

運命で結ばれてるから引き離すコトも無理だろうよ」

引き離せたらレイがもっと幸せになるのにな~

「セリくんには香月が必要だ

引き離すつもりはない

ただ、オレにも香月と同じくらいセリくんを救える存在になれたら」

うわ…言われて、思い出した

勝手に和彦と別れさせてレイに怒られたコト…

レイもきっと和彦と同じコト言うんだろうな

内心は全員消えてオレだけを愛してほしいってレイは思ってるのに

「なんだそんなコト?

和彦はもう生きてるだけで勇者救ってるだろ」

俺がそう言うと和彦は、ん?と首を傾げるが

「和彦が人間だった時に死んだコト

あの状況は香月でも救えない

和彦じゃなきゃ無理だったよ

死んでも生きて、勇者の悲しみを晴らした

きっと増えるよ…もっと救えるコト」

知らんけど…

なんでかな…和彦のコトなんてどうでもいいのに

気付いてないみたいだから伝えたかった

香月は特別かもしれないけど、和彦にも和彦だけの特別があるって

いや俺は本人じゃないからホンマに知らんけど、たぶんそうじゃねぇかなって

だって…俺は本物じゃないだけでセリとして生きてるんだからな

「……そうだな…

でもオレは欲張りだからセリくんの全てがほしい」

和彦は一瞬驚いて、でも少し表情を緩めた

あっそ…アツアツですね~…

そんな会話をしたコトがあって

別に俺は和彦の味方ってワケじゃねぇが、香月のコトは1番気に入らねぇって思ってる

引き離すとか別れさすとか、またレイに怒られるからそんなコトはしないが!!

ひとこと言ってやらねぇと気が済まねぇんだよ!!

ってコトで、香月に文句言う!!

そう決めていた俺はさっそく文句を言いに行くのに部屋のドアを開けると、偶然香月も勇者を訪ねてきたのかバッタリ会う

「わっ…!?」

目の前の香月を見上げて言葉が詰まる

背高ッ…超美形ッ……

「貴方」

声も素敵…匂いも良い香り……

レイは世界が認める世界一のイケメンだけど、香月はまた違うタイプだ……とにかく素敵

俺は香月にまったく惚れねぇけど、認めるのは認めるよ……こりゃ勇者が惚れても仕方ねぇって……

(俺自身も気付いてないが、俺はセリだから好みは香月がタイプ…)

「あっ!!何か用があって来たんだろうけど、まずひとこと言わせろ!!

オマエあんま調子乗んっ」

言い終わる前に香月は俺に紙袋を渡した

「半分は貴方が食べてもいいですが、半分はセリに渡してください」

紙袋の中を確認すると、フルーツサンドが入っていた

「セリが食べたいと言っていたので」

こ、これは……!?超人気店の幻のフルーツサンド!?マジか!?

言ってたって前に来た時だよな?それを覚えていてくれたってコト!?!?

「えっ……良い奴……」

美形って性格も良いんだな……勇者が惚れるのは仕方ない

香月は用が終わったのかそのまま去っていく

部屋に入ってフルーツサンドを掲げて喜ぶ

「美味しそう~早く食べたい~~~」

香月ホンマ良い奴、レイの次に良い奴じゃん

和彦が勝てる要素1つもねぇわ

いや、和彦にも旅の途中はずっと奢ってもらってたけど…あれは嫌がる俺を付き合わせたんだから当然だろ

さぁフルーツサンド食べるぞ!!ってタイミングでお客さんが来た

「セリくんヤッポー!来ちゃった♪」

元気に響く同じ声の天使がまっさらな笑顔で部屋に入ってくる

「オマエいつも眩しいな…」

性格というか雰囲気というか、無邪気さと純粋さに目が痛ぇよ…いや俺の心か

天使の後ろから会釈して微笑むのは女神の結夢ちゃん

「珍しいな、2人がここに来るなんて」

「一度遊びに来たかったんだよね、魔族の国に」

オマエがなんでも興味を持つのはわかるが、神族である女神の結夢ちゃんが魔族の国に来るのおかしいだろ

神族の中でも結夢ちゃんはめっちゃ理解があるから魔族との関係も受け入れてるんだろうけど

「オマエのようなお子ちゃまが遊びに来れるほど平和で安全な国じゃないんですけど…」

楽しそうに天使は笑うが、道中大丈夫だったのか?

無事だから今ここにいるんだろうが、そう簡単に来れはしないハズだろ

話を聞くと、レイとフェイと一緒に来たらしい

レイとフェイと天使と結夢ちゃんのメンバーって意外すぎて道中どんな会話して来たのかスゲー気になって寝れなくなるじゃん

あのレイとフェイだぞ?

いや、天使だからうまくやれたのかもしれねぇ

フェイは子供嫌いとか言いながら天使のコトなんやかんや気にかけてるし

レイも天使に苦手意識あるけど、なんやかんや気にかけてるし

そして、レイとフェイは外でキルラに絡まれてるらしい…

いつものコトだから、そのうち解放されるか

キルラは魔族の国に入る奴にはすぐに喧嘩をふっかける

勇者の仲間と知ってるからレイとフェイを殺しはしないだろうが、力を失ってるレイとフェイは強いとは言ってもキルラは自称魔族の四天王のひとり

今の2人じゃ勝てる相手じゃない

キルラが一方的にオレ様つええーー!!って満足するまで遊ばれんだろう

天使と結夢ちゃんはキルラに「女子供は通れ!」って通してもらったとわかる

これも勇者の仲間だから通してもらっただけだ

キルラは他の女子供にも容赦はしないだろうからな

レイが来てくれたのは凄く嬉しい!早く会いたいけど…キルラしつけぇから暫くは会えねぇか

俺の胸がレイでいっぱいになっていると結夢ちゃんが持っていたカゴからお菓子を取り出して俺へと差し出す

俺の胸はお菓子でいっぱいになった

「最高…良い人……」

レイの次に良い人

すぐにみんなでお茶にしようって言ってるのだとわかった

結夢ちゃんは話せないけど、表情や身振り手振りで何を伝えたいかなんとなくわかる

「さっき香月からフルーツサンドも貰ったし、美味しい紅茶いれてみんなで食べようぜ!!」

「イエーイ!!ヤッター!!」

って、契約の俺のままでよかったのか?

まぁ後でタイミング見て勇者に代わるか

まずはおやつ食べたいし!!!

それじゃささっと、美味しいロイヤルミルクティーは俺がいれました

「結夢ちゃんのケーキいつも美味しいね~」

天使はニコニコ頬張って幸せそうだ

「ホンマそれな、結夢ちゃん良いお嫁さんになるって、俺も好きだもん」

前にも食べたコトあるが、お菓子作りの天才か!?ってくらい結夢ちゃんのお菓子は最高に美味しい

「超人気店の幻のフルーツサンドに負けないくらい美味しいから…」

ちらっと結夢ちゃんの方に視線をやると、微妙に複雑な顔で頬を赤らめていた

あっ…そういや、結夢ちゃんって勇者のコト好きだったよな

本人は話せないから確かめるコトはできないが、誰が見たって絶対好きだろって反応するから気付く

勇者本人は気付いてないみたいだが…

俺を契約だとわかってても、好きな人の姿で好きって言われたらそんな反応にもなるか

聞きてぇ……男からしかモテない勇者のどこが好きなのか?って

女の子から見て惚れる要素あるか?勇者って

見た目は華奢で小柄で中性的だし

………まぁ、謎に男気はあるっちゃあるけど…

結夢ちゃんが世界一のイケメンのレイなら惚れるのもわかるが、いやレイに惚れられても困るけど

美味しいお菓子作れる結夢ちゃんに勝てる気がしないから!!?

「フルーツサンドも半分食べたし、半分は勇者に渡せって香月に言われてるからそろそろ代わるかな」

「そうなの?もうちょっと契約の君ともお話したかったな」

天使は契約の俺にまで優しい

「また今度話してくれたら嬉しい」

「わかった!また今度話そうね、約束だよ」

勇者と同じ姿をしてる目の前の天使はまっさらな笑顔が眩しい

思わず手が伸びてナデナデしちゃう

それじゃあ…俺は引っ込むか……

ハッと気付くと目の前の光景に一瞬戸惑うが、契約が表に出て引っ込むとこうなるのはいつものコトですぐに状況を理解するよう空気を読む

珍しいな、魔族の国に天使と結夢ちゃんがいるなんて

そういや、天使が前から魔族の国にも遊びに行ってみたいって言ってたか

よく無事にたどり着いたな……

「セリくん!契約がお菓子半分残してくれてたよ」

さっきから甘い美味しい匂いがしていたコトはわかっていたが、天使に言われてテーブルの上に視線を向けると

「はわっ!?こ、これは……超人気店の幻のフルーツサンド!?

に、負けない結夢ちゃんのお菓子もたくさん……」

感動……絶対美味しい、食べてなくてもわかる

もう美味しいもん、匂いがもう美味しいから

目を輝かせて手が勝手に伸びる

「いただきます!」

まずは結夢ちゃんのお菓子から

「う~~…美味しい…!!ホンマに

美味しすぎて他に言葉が出てこねぇ…」

俺が笑うと結夢ちゃんも微笑んでくれる

幻のフルーツサンドもいただく

「フルーツサンドもうめぇ!!!

さすが人気店!!やべぇ!!

でも!!こんなやべぇフルーツサンドと同じいやそれ以上かもしれん結夢ちゃんのお菓子は!!」

美味しすぎて窓から飛び出してしまいそうな衝動にかられる

「だよね!!結夢ちゃんは天才!!」

「女子力高すぎ!!こんなのみんな好きになる!!」

褒められて照れる結夢ちゃんは奥ゆかしくて、本当に女の子って感じで可愛い

俺だったら褒められたら調子に乗る

セリカもそうだ、俺と同じで調子に乗るタイプ

照れるとかそんな可愛いコトできない

そうして俺達は楽しいおやつの時間を満喫した

「それにしてもレイとフェイ遅いけど、大丈夫かな?」

天使はソワソワして心配で眉を下げる

「えっ?天使と結夢ちゃんってレイとフェイと一緒に来たのか?」

マジかよ、スゲーメンバーじゃん

道中どんな会話したとかなんも想像できねぇぞ

あの2人と長旅できる人ってこの世に存在するのか?ってくらいのレベルだぞ

俺でなんとか…ってところなのに

まぁ天使の天真爛漫なまっさらな雰囲気にその間だけ浄化されて弱体化されたのかもしれん

しかも、結夢ちゃんっていう癒やし系の女神もいればもう完全に浄化されてるわ…あの2人もしかしたら人が変わったかも

「うん、レイもフェイもなんやかんや優しいよね」

あの2人が優しい!?ウソだろ!?!?

天使の「ねー?」って笑顔に結夢ちゃんも微笑んで頷く

俺にも優しくしろよ!!!アイツら!!??

「一緒に来たけど、2人はキルラに遊ぼって呼び止められて

おやつの時間だから早くねって言ったんだけど」

あー…キルラが絡むのはいつものコトだが、今のレイじゃ無理だしフェイ1人で勝てない

俺の仲間だって知ってるから殺しはしないだろうが、時間が経ってるからかなり痛めつけられてんじゃねぇかな

それも一方的に……

キルラは魔族だ、良心なんてない

手加減と言っても死ななきゃいいってだけの感覚だから……嫌な予感がする

「ちょっと様子見てくるから2人はゆっくりしてて」

「そうだね、セリくんが行ってくれるのが安心

レイとフェイのコトお願いね」

任せろ、と俺は勇者の剣を手にとって、キルラの気配がある方へ走った


外に出て少し離れたところまで駆けつけると、想像していたより酷い状況が広がっていた

フェイとレイを勝ち誇った顔で見下ろしてるキルラと、見学してるポップが退屈にあくびをしてる

フェイもレイもボロボロで、フェイは左腕が切断された状態でなんとか右手で武器を持ってまだ戦う意思を見せる

レイは両腕がなく、なんとか意識を保った状態だ

「レイ!?フェイ!?」

大丈夫か!?なんて声をかけられないくらいの状態なのに俺が近付くのをフェイは止めた

「セリ様…邪魔しないでもらえますか?

回復も必要ありません……」

フェイはわかってる…魔族は勇者の俺にしか殺せない

だから倒すってコトは不可能だ

それにキルラは自称四天王だが、自称するほどの実力がある

フェイじゃ傷ひとつ付けられる相手じゃない

それでも、フェイの中では傷ひとつ付けてやらないと気が済まない

それがフェイにとっての勝ち…レイも同じだろう

「しつけぇな~あんたらも、さっさと負けを認めでもしたら逃がしてやるって言ってんのによ」

キルラはずっとオレ様つええーー!!に酔ってるのがわかる

「ざあああこぉおおお」

これでもかって舌を出して悪人顔で見下してきた

「「…雑魚はお前だ」ですね」

レイとフェイは満身創痍でも立ち上がってキルラを見上げる

どう見ても状況は2人の負けなのに、気持ちは絶対負けねぇって顔してる

「雑魚の証明して…やんよぉッ!!」

圧倒的な力を見せつけるように、キルラは鋭い爪を持った大きな足で2人を蹴り踏みつけた

ねじり踏み殺すように、キルラは何度も何度も2人を踏みつける

止めるな、回復するなって言われたが、もうこれ以上は死ぬ……とっくに意識がなくなった2人相手にキルラは殺す気で止まらない

キルラの奴、興奮しすぎてハイになっちまってる

「やめろキルラ!もうとっくにオマエの勝ちだ

これ以上は死ぬ」

俺の声にキルラは動きを止めるが、テンションの上がりきったキルラを落ち着かせるには言葉じゃ無理かもしれない

レイとフェイに回復魔法で怪我は完璧に治せたが、落ちた意識から目覚めさせる効果はない

暫く2人には寝ててもらおう

俺に守られてるっての絶対嫌がるだろうから

「ルールはオレ様!殺した方が勝ちってね~!!」

キルラが一歩前に出たかと思ったら目の前まで踏み込まれてる

掴まるその一瞬前にはその場から離れるように跳ねた

戦うか…いつものコト

「そのルールじゃ俺以外、誰も参加できねぇだろ」

勇者以外に魔族は殺せないから、レイとフェイじゃ最初から勝負になってない

「セリ様を殺してオレ様が勝者になるっ!!」

「暴走してんな…冷静になったら後悔すんぞ」

勝っても負けてもどっちでもキルラにとっては最悪

俺を間違って殺してしまったら、キルラは香月に殺される(魔族の王である香月も魔族を殺せる)

俺が勝つってコトはキルラが死ぬってコトだし

まぁ俺はキルラを殺しはしないが

勇者の剣を鞘やから抜くと、勇者の剣を持つ右手に強い風を感じた

「……なるほど…いつもよりホンマに本気じゃん」

右手は切断され強い風に勇者の剣とともに離れた場所まで飛ばされてしまうとは

右手は回復魔法で一瞬で治せても、吹き飛ばされた勇者の剣が手に戻るワケじゃない

あの距離まで勇者の剣を拾いに一瞬でもキルラに背を向けたら死ぬ

武器がないのも不利だ

キルラの攻撃を避けて腕を掴むと遠心力でぶっ飛ばす

「忘れてたぁああ!?」

セリカが習得した武術のコト忘れるなんて本当に鳥だな

まぁ覚えてても掴まれたらもう逃げられず投げ飛ばされるだけだが

この隙にすぐに近くにあったフェイの武器を拾う

いや…ダメだ、この槍は俺に重すぎる…!?

「これでオレ様を殺そうってかぁ!?させん!!」

キルラにフェイの武器を奪われ、その槍をバキッとへし折った

「アハハハハハハハハ!!!頼みの武器がなくなってもう負け確っすねぇ!!!??」

レイの武器は弓、矢を自分の氷魔法で作り出すタイプだからレイの武器は使えない

でも、キルラは何もわかってない

真っ二つになった槍を離すキルラから、俺は持ち手が短くなった刀身の方を拾う

「軽くしてくれてありがとう、俺の勝ちだぜ」

勝ったと勝負を放棄したようなもんのキルラの隙をついて、そのまま懐に入り胸を突き刺した

「ぎゃーーーーー!!!殺される~~~!?!?」

深く突き刺さる前に、フェイの武器は砕けた

「ぎゃーーーーーぎゃーーーーー!!いてぇーーー!!!死ぬーーーー!!!」

刺された胸を押さえながら転げ回るキルラにため息つく

「死なねぇよ、大げさだな」

キルラを殺す気はなかった、だからフェイの武器で全力で殺しに行った

フェイの武器じゃ勇者の力に耐えられなくて砕けるってわかってたから

キルラを放置してレイとフェイに駆け寄った

やっぱり暫く意識は戻りそうにないか

「あっ!?…フェイの武器壊しちゃった……

これって高かったのかな?レアだったりするか?」

やべぇ…ってちょっと青ざめるけど、まいっかぁって壊した記憶を消す

勇者の力関係なく、魔族相手に戦い続ければそのうち壊れるのは当然だし



あ~久しぶりにキルラとガチでやり合ったかも

まぁ絶対いつも俺が勝つけどね!

いや、もしかしたらキルラはガチじゃねぇのかも…

キルラは香月に言われて俺を殺せないから、殺すってくらい本気のキルラと戦ったら100回に1回くらいは負けるかも?

俺だって、キルラはウザいしトラブル持ってきては俺が尻拭いする感じで腹立つけど、嫌いじゃねぇから本気を出せるワケじゃない

本気を出すってコトは殺してしまうかもしれねぇから

とにかくキルラがレイとフェイを殺さなかっただけありがたい

俺の仲間だから殺さなかっただけだが、今回はちょっとやり過ぎだよな

回復魔法で怪我は治してもあの瀕死のダメージから意識を回復するにはちょっと時間かかるだろう

はぁ…毎回来る度にキルラのオレ様と戦え!ってウザ絡みしてくんのやめてくんねぇかな

面倒くせぇもんって考えながら、俺も疲れたから早く休もうって部屋に帰った

結構時間も経ってるし、天使と結夢ちゃんはもういないだろうなってドアを開けたら

「………いるんかい!?なんで!?」

誰もいないと思ってた、いても天使か結夢ちゃんだと思ってたから普通にビックリするだろ

香月と和彦が俺の部屋で待ってたんだから…

香月はまぁわからんでもないが

「なんで和彦がいるんだよ!?」

「セリくんに会いたかったから」

えっ…いや…う、嬉しいけど…

俺達あの時微妙な空気だったのに……

和彦の奴「今はオレといるより香月といた方がいい」とか言って、ちょっと素っ気なくてそのまま俺の手を振り払ったじゃん…

「…いや!?その前にオマエの部下フェイがピンチだったんだから助けに来いよ!?」

和彦ならキルラとフェイが戦ってるコトくらい気付いてるハズだ

ちなみにキルラは自分より強い奴には絡まない

だから和彦に一度コテンパンにやられてからは目も合わせなくなったな

「キルラ相手ならセリくんの方が強い」

「勇者の俺にしか魔族は殺せないだけで、魔族相手でも強さなら和彦は最強だって

むしろキルラの中じゃ俺より上の認識だろうよ」

俺には勝てないってわかっててダル絡みしてくるが、和彦にはそれがないってのは

俺と戦うより和彦の方がヤバいってコトだ

逆に和彦相手じゃ死ねないから、死んだ方がマシって思わせるくらい残酷なんだよ

「セリくんがピンチなら助ける」

自分の部下は死んでもええんかい…

「あっそ……いつも通りで…なんか心配して損した」

はぁ…と俺は和彦と向き合うようにソファに座った

俺が座るとずっと立っていた香月が俺の右横に座って、ちょっと緊張して背筋が伸びる

なんか…熱いよな……戦った後だから当然か?

でも…わかってる……香月にドキドキしてるって、ちらっと香月の方に視線を向けると

目が合ったからすぐに正面向いて逸らす

もっと…熱くなっちゃった……香月カッコ良すぎなんだもん……もう死にそう

「…セリくんはいつも通りじゃなそう」

「何が!?べ、別に…いいいつも通りですけどォ!?」

とりあえず落ち着け俺

いつも通りに……いや、無理っすね!?

自覚あるんだよ、香月に恋してるって

ずっとずっと誰よりも長い関係なのに、いつまで経っても初恋のような感覚から抜け出せない

ずっと初恋やってる俺…恥ずかしすぎる色んな意味で

いっぱいいっぱいになってた俺が気付いた時は目の前に和彦の顔があって「あっ…」と声が漏れるごと唇を塞がれる

「っ…いきなり…何すんだよ!?」

和彦の胸を押しのけてキッと睨む

「いつものセリくんだ」

「何がだよ!?」

俺が押しのけて引くなんて和彦にしては珍しいな

和彦は目の前のソファに座り直すと香月を指差す

「次は香月とキスして」

「なんでオマエに言われてしなきゃなんねぇんだよ」

「嫌なんだ?」

「嫌……」

香月の方に視線を向けるとまた急に熱が上がる

「なワケ…ない…けど……その…あの……」

香月と目が合うだけで時間が止まる

なのに胸の鼓動は激しくなるばかり熱を上げながら…

「オマエに見られてるっていうのが嫌なんですけど!?」

パッと和彦の方に視線を戻して指を差す

「香月にだけ、セリくんがそういう顔するのは」

「……ん?」

和彦の雰囲気が恐くなる…最後まで何とは言わない

でも、俺はやっとこの空気が何かわかる

いつもメンヘラのレイを相手して慣れてるし理解してるから

和彦に限ってって思って気付くのが遅かった

「それって……ヤキモチ?…嫉妬?」

言われて和彦の眉が潜む

「オレが…?レイじゃあるまいし」

「いや、そうだよ

前からたまにオマエなんかおかしいなって思う時あったけど、そっかそっか」

あの時も嫉妬してたから冷たかったんだ

和彦がヤキモチなんて可愛いとこあんじゃん

なんか嬉しい~~~ニヤニヤしちゃう

「何その顔?」

「えーオマエにもそんな可愛いとこあるんだなって」

ふふふって俺は和彦の隣に移動して頬をつっつく

「あの和彦にも人間らしい感情があったんだな~って感動した!!

元人間なのに人の気持ちわかんねぇ奴だったじゃん」

「別に嫉妬してない…ただ気に入らないなってだけ」

「それが嫉妬って言うんだぞ?」

頬をつっつく指を掴まれて、和彦は照れ隠しする

「今夜は覚悟して」

「………ごめんなさい……」

照れ隠しとわかってても、夜の和彦こわいからこれ以上いじるのやめとこう

「でも、和彦の気持ちがわかって嬉しい

俺は誰か1人のものにならないって最初に言ったのは和彦だぜ

だから、俺はみんなで幸せになるって決めたんだ

みんなのコト大好きだし愛してるから」

「オレとレイとフェイはきっと同じかもしれない」

「フェイはまだそこまで達してないな!!アイツ最初の出逢いが和彦より最悪だったもん

それにみんな好きなところの違いもあるし、関係だってそれぞれ違う

でも、みんなそれぞれ違う中で絶対同じくらい愛せる

みんなと一緒に幸せになる…なりたい」

和彦はいつも自信しかない奴だから嫉妬とは無縁だと思ってた

俺の気持ちなんて関係ないって自分勝手で、勝手に決められて強制されて逃げられない

最初は最悪だった

なのに、そんな和彦を俺はいつの間にか好きになってたんだよ

「和彦には隠してても、どうせわかってるなら

きっとハッキリ言った方がいいんだろうな

俺は香月に恋してる…この気持ちは他の人にはないかも……

和彦にもこの気持ちはないと思う」

俺の言葉に和彦は、やっぱりってわかってたよって目を伏せる

傷付けたかな…でも、ウソついたって意味ないし、和彦に隠し事はできないし和彦なら理解してくれる…

レイは絶対ダメ、嫉妬に狂って独占欲も激しいから殺される

レイも気付いてそうだが…

「俺は前世の記憶も取り戻してからなら、香月との時間が1番長いけど

今生(いや前の世界で一度死んでるからこの表現はおかしいかもだが、1つの記憶で区切るなら)で言うなら

和彦が1番付き合い長いだろ

前の世界でのネタも通じるのはオマエだけ

マンガもアニメもゲームも、俺のしょーもない話も笑って聞いてくれんのは和彦だけ

俺はオマエのコト大好きだから!ずっと一緒にいたいって思ってるし!

だから、プロポーズも受けたんじゃん……愛してるから

こんなに想ってる……オマエがいなきゃ、和彦は和彦じゃなきゃ……もうダメなんだって言わなくてもわかってるくせに…」

恋と同じくらいの重みがあると俺は思ってる

大切な気持ちも、愛も、それは絶対に変わらないから

あ、和彦はマンガもアニメもゲームも興味ない奴だが、俺が見てる時に一緒に見たりしてるからわかる

「………セリくんがオレなしじゃ生きていけない事くらい知ってる」

和彦がふっと笑ってくれる

「生きていけないとまでは言ってない」

つい和彦にはツンとしてしまう時がある

照れ隠しなんだよ、でも間違ってない

「オレは香月に負けてない、むしろ勝ってる」

またいつもの自信を取り戻して香月に向けて勝利の眼差しを向ける

うーん…和彦ってもっと賢い奴なんだけど…嫉妬入るとアホになるのか…

「同じって言ってるんだから勝ち負けなんてねぇよ」

「セリくんは香月に話さないような話までオレにする」

めっちゃ香月に向けて勝ち誇ってる

「いや、前の世界の話しても香月わかんねぇし」

香月はずっと口を挟まないし、和彦のマウント(になってなさそう)もスルー

魔王の香月には感情がないから嫉妬するコトもない

俺を好きな感情以外はなし、俺を愛してる感情以外はない!!(ここ大事!!)

「香月との時間よりオレとの時間の方が濃い」

「どんだけ気にしてんだよ!?!?!?」

「気にする

でも、オレは今のセリくんとの関係でよかった

セリくんがオレに恋して香月みたいな接し方になったら物足りない」

「……うん、俺達の関係って最高だろ」

俺の言葉に和彦は珍しく最高の笑顔を見せた

そんなに笑う奴じゃないのに…和彦も嬉しいって笑ってくれるんだ…

俺も自然と笑顔が零れる

違うから最高の関係でいられるんだって究極だろ

和彦といると落ち着けるから居心地良くて大好きだぜ

「また…殺すかもしれない」

香月の言葉に場の空気が冷える

さっきまでの笑顔が消えて、心まで締め付けられる現実に軽いめまいまで引き起こす

「セリの幸せになりたいを叶えられますか?」

「はっ?喧嘩売ってるのか香月?

言われなくても、オレはセリくんを幸せにする」

ピリつく空気に俺は口を挟めなかった

それは俺もなんとなくわかっていたコトを、恋や愛も幸せなんて見えないものでフタをしていたから

「なぜ、セリを殺した事がある貴方が幸せにできると言い切れるのでしょう」

「それはお前もだろ」

「ま、待て!

香月は魔王で俺は勇者だから殺し殺されるなんて前世もあったぜ?それは仕方ねぇコトだし昔のコトだ

なんか…空気悪いからやめよーぜこんな話…」

これ以上空気が死ぬと大変なコトになると思った俺はなんとか2人の間に入る

息が詰まるくらい…苦しい

「このままだと近いうちにセリは殺されます

私か、和彦か、その他か……セリ自身かもしれません」

「オレはセリくんを殺したりしない」

「運命が決める事です

その時に選ばれたら、貴方でもまたセリを殺すでしょう」

和彦は唇を噛んだ

言い切れなかったんだ…絶対にないと

前の世界で俺は和彦に殺されたコトがある

この世界で再会した時に和彦は俺のコトが好きでたまらなくて気付いたら殺していたって言ってた

あの時、和彦の中でどんな変化があったのかは俺にはわからない

和彦自身もわからないのかもしれない

俺はどの前世でも24歳になる前までに死ぬ運命だ

自分で死ぬコトもあったし、愛する人に殺されるコトも、誰?っていう奴にも殺されたコトがある……憎い相手から殺されたコトだって……

逃れられたコトはない

それが23歳の今…起こる…次の誕生日は迎えられない

「イングヴェィの力……今は失ってるみたいだけど、それで運命を変えられるかもって話はある

その力を取り戻すのがいつかわからねぇから、もし今回間に合わなくてもまた生まれ変わるから

何度も…俺は生まれ変わる

前まで絶望だったけど、運命を変えられるかもって希望があるから…まだ…生きていられる……」

「間に合ってもらわないと困る

また1からやり直すなんて」

「前世の宿があるから!俺を見つけたらそこに連れて行ってもらえれば」

俺だってみんなのコト忘れたくない

でも、前世の宿もあるって知ったからみんなを思い出せるなら…

「生まれ変わっても似たような人生を歩むなら、もうセリくんに辛い思いをしてほしくない」

もう生まれ変わりたくない……もうあんな思いをするのは嫌だ……何度も何度も何度も

時代や世界が変わるだけで、永遠と同じような運命を辿る

「……死にたく…ない……でも、仕方ないじゃん

いつも死ぬんだもん…

考えたくない……嫌だ……」

目の前が霞んで瞬きをしたら零れてしまいそうな瞬間…香月の唇が触れる…

「んっ…」

重なる唇にビックリして目を閉じると涙が零れる

でも、それは1回きり

嫌な気持ちが消えていく…上書きされる…塗り替えられていく

香月が好きって気持ちに埋め尽くされる

何も考えられないくらい…ドキドキする

「私が幸せにします」

唇が離れて香月しか目に入らない考えられない胸がいっぱいだ

「……そ、それって……プロポーズ……じゃん…?」

熱く赤くなった頬を手で包む

「これはプロポーズじゃない!!プロポーズには指輪が必須だろ!?」

あっまた和彦が嫉妬してる

和彦はプロポーズしたのは自分だけってマウント取りたいんだろ~な~…指輪チラ見させてるし

「何度生まれ変わっても、必ずセリと出逢って幸せにする

当然、運命を変えなくてはなりませんので」

和彦は香月を押しのけて、強引に俺を引き寄せると唇を重ねる

さっきより熱く深く激しく…

「あっ…かず……ひこ……んんっ」

ダメ…立ってられない………ヤバ、キスだけでイキそう…和彦うますぎて頭おかしくなる……

和彦の胸を押しのけようとすると、手を掴まれ指を絡められる

「……決着は今夜つけよう、香月」

「いいですよ」

その場に崩れる俺の上でバチバチするんじゃねぇ…

「勝手な……コト、言って…んじゃねぇ……」

運命は変わるような気がする

だって、もう変わってるところもあるんだから

幸せって思うコトがたくさん増えた

憎しみと苦しみと悲しみの運命だった…ずっと不幸だった

だから、いつか運命だって変わるって信じられる

それがこれまでの俺とは違うところでもあるよな

みんなと出逢って…

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