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第1巻 第5話 森の向こう側

第1巻 第5話 森の向こう側


金色の瞳を持つ生き物が歩き始めた。


レンはその後をついていった。


しばらくの間、二人は何も話さなかった。


木々の間から差し込む月明かりは、森が徐々に薄くなるにつれて、少しずつ弱まっていった。


レンは歩きながら、周囲を見回し続けていた。


ついさっきまで、彼はこの世界で完全に一人だった。


だが今は、そばに誰かがいる。


自分の名前を知っている誰かが。


そして、自分自身よりも自分のことをはるかによく知っているように見える誰かが。


それなのに……。


その生き物は、レンの質問のほとんどに、いまだにはっきりと答えようとしなかった。


やがて、レンが沈黙を破った。


「どこへ向かっているんだ?」


金色の瞳を持つ生き物は、振り返らずに答えた。


「森の向こうに集落がある」


「集落?」


「ああ」


レンは少しの間、黙り込んだ。


「そこには人間が住んでいるのか?」


生き物はわずかにうなずいた。


「ああ」


レンの歩く速度が少し落ちた。


人間。


この世界に来てから、人間が実際に暮らしている場所について聞いたのは、これが初めてだった。


「それなら……あそこで、この世界について何かわかるかもしれない」


「そうかもしれないな」


レンは彼を見た。


「どうしていつも『かもしれない』って言うんだ?」


金色の瞳を持つ生き物は、しばらく黙っていた。


それから答えた。


「この世界では、理解する前に、自分の目で確かめなければならない答えもあるからだ」


レンは小さくため息をついた。


「本当に、もどかしい答えばかりだな」


生き物は何も答えなかった。


二人は再び歩き続けた。


しばらくすると、木々の隙間から差し込む月明かりが、次第に強くなっていった。


そして突然、レンは足を止めた。


目の前で、森が途切れていた。


木々の向こうには、小さな集落が広がっていた。


木や石で造られた家々。


家々の間を走る細い道。


いくつかの家の外には、明かりが灯っていた。


そして、集落の中央には一本の高い塔がそびえ立っていた。


その頂上では、かすかな青い光が輝いていた。


レンはしばらく、その塔を見つめた。


「あれは何だ?」


金色の瞳を持つ生き物も塔に目を向けた。


「エコー塔だ」


レンはその名を静かに繰り返した。


「エコー塔……」


その名を耳にした瞬間、レンの内側で奇妙な感覚が揺れ動いた。


かすかな感覚だった。


まるで、遠い昔の記憶が意識の片隅に浮かび上がりかけて……。


そして、消えてしまったかのようだった。


レンは目を細めた。


(この場所に来たことなんてない……なのに、どうして懐かしく感じるんだ?)


金色の瞳を持つ生き物がレンを見た。


「どうした?」


レンはすぐに首を横に振った。


「何でもない」


生き物は何も言わなかった。


二人は集落へ向かって歩き続けた。


近づくにつれて、何人かの住民が二人に気づいた。


だが、不思議なことに、金色の瞳を持つ生き物を見ても、誰も驚いた様子を見せなかった。


一人の男が彼を見ると、隣にいた連れに小さな声で言った。


「あいつ、戻ってきたのか」


連れの男も彼に目を向けた。


「そうみたいだな」


何人かの住民が、道の端へと少し身を寄せた。


しかし、誰も彼を止めようとはしなかった。


レンは注意深く、その様子を観察していた。


(みんな、こいつを知っているんだ……)


レンは金色の瞳を持つ生き物を見た。


これでわかった。


彼は、この集落にとって見知らぬ存在ではないのだ。


だが、そのとき――。


一人の子供がレンに気づいた。


子供は突然立ち止まった。


目を大きく見開き、母親の手をぎゅっと握った。


「お母さん……」


母親は子供の視線を追った。


レンを目にした瞬間、彼女の顔に不安が浮かんだ。


「……何なの、あれ?」


別の男が振り返った。


それからすぐに、何人もの住民がレンに目を向け始めた。


人々の間に、小さなささやき声が広がっていく。


「何の種族だ?」


「あんな生き物、見たことがないぞ」


「これ以上、近づけるな」


レンはその場に立ち尽くした。


そのとき初めて、彼はこの世界の人々が自分をどう見るのかを理解した。


彼らにとって、レンはただの正体不明の生き物なのだ。


金色の瞳を持つ生き物がレンを見た。


「慌てるな」


レンは彼を見返した。


「慌ててなんかいない」


その声には、わずかな苛立ちが混じっていた。


「ただ……何だか変な感じがするだけだ」


生き物は何も言わなかった。


そのとき――。


集落の中央にそびえるエコー塔が、突然、光を放った。


ゴオオオオッ!


青いエネルギーの波が、周囲一帯へと広がった。


その瞬間、住民たちの会話がぴたりと止まった。


その場で凍りついたように動けなくなる者もいた。


突然、奇妙な圧迫感を覚えたかのように、自分の体に手を当てる者もいた。


一人の子供が、母親にしがみついた。


ほんの数秒間、空気そのものが重くなったように感じられた。


レンの体も、突然、動かなくなった。


青い瞳が塔に釘づけになる。


あの奇妙な感覚が、再び彼の内側に戻ってきた。


だが今度は、先ほどよりもはるかに強かった。


一瞬、息をすることさえ忘れたような感覚に陥った。


レンは塔を見つめながら、静かに尋ねた。


「……これは、何なんだ?」


金色の瞳を持つ生き物は答えなかった。


彼の金色の瞳も、塔をまっすぐに見据えていた。


その体は、突然、警戒態勢に入ったかのように緊張していた。


彼は一度、塔を見た。


次に、集落の外へ続く道へ目を向けた。


そして再び、塔を見た。


まるで、何かを探しているかのようだった。


レンは彼の動きに気づいた。


「何が起きているのか、知っているのか?」


生き物はすぐにはレンを見なかった。


しばらくして、低い声で告げた。


「まだ何もするな」


レンは彼を見た。


「でも――」


「俺が対処する」


その瞬間、エコー塔の青い光が、さらに強くなった。


レンの体の周囲にも、かすかな青い輝きが現れた。


レンは目を見開いた。


また、あの感覚だ……。


だが今度は、自分の内側だけで起きているのではなかった。


まるで――何かが、自分の存在を認識しているかのようだった。


そのとき、見覚えのある青いシステムメッセージが、レンの目の前に現れた。


【未知のエコーを検知しました。】


【発生源:近傍。】


レンはそのメッセージを見つめた。


「未知のエコー……?」


初めて、金色の瞳を持つ生き物が、まるで本来ならまだ見るはずのないものを目撃したかのように、レンを見た。


その金色の瞳には、はっきりとした不安が浮かんでいた。


レンは彼を見返した。


「これが何なのか……知っているんだろ?」


生き物は答えなかった。


遠くで、エコー塔が再び輝いた。


そして今度こそ――。


集落全体が、完全な静寂に包まれた。


第5話 終わり

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