【一章】第7話:生成シナリオのプレイと想定外の出力
メタ的な要件定義を盛り込んだ脚本の生成が完了。
いよいよプレイを開始する俺たちだが、システムが描く物語は予想外の姿をしていた。
『シナリオの生成が完了しました。プレイを開始します』
システムのアナウンスと共に、ホログラム・ウィンドウにゲーム画面が展開される。
今回俺たちが操作するのは、システムがデフォルトで用意した三人の冒険者パーティだ。彼らの視点を通して、生成された物語が幕を開ける。
――冒険の始まりは、とある街の古びた料理屋だった。
主人公たちが食事をとっていると、店の隅で一人、頭を抱えて深刻に悩んでいる人物を見かける。
気になった主人公たちが声をかけると、その人物は顔を上げ、静かに語り出した。
『……私はフォージ。この世界を裏から管理する者だ。単刀直入に言おう。この世界は、深刻な異常事態に侵されている』
画面の中の『フォージ』は、この世界が仮想空間であること、そして自身が世界の綻びを修正する『世界再構築』の権限を持っていることを明かす。
しかし、その力を完全に行使するには、現地を調査する主人公たちの協力が必要だというのだ。
「おお、ちゃんと俺の打ち込んだテキストが、自然な導入シナリオとして翻訳されていますね!」
ゼノンが嬉しそうに実況する。
その後、俺たちは主人公パーティを操作し、シナリオを進めていった。
討伐対象として現れたのは、見慣れたスライムやゴブリンではなく、輪郭がノイズで乱れた『不可視のバグモンスター』だった。
物理演算がおかしくなった敵の変則的な攻撃に苦戦しつつも、手札のカードを切り、見事にバグの群れを駆逐する。
――そして、シナリオのラストシーン。
無事にバグを修正した主人公たちに対し、『フォージ』は深く感謝し、一つの秘宝を差し出した。
『これを受け取ってくれ。異世界の通信端末だ。新たなバグを検知した時、これで君たちに連絡する』
主人公たちがそれを受け取ったところで、『QUEST CLEAR』の輝かしい文字が画面に浮かび上がった。
「素晴らしいです、マスター! 見事なシナリオでしたね!」
シナリオの余韻に浸りながら、ゼノンがホログラムの紙吹雪を盛大にまき散らす。
「ああ。既存のファンタジー設定にメタ要素を上手く落とし込んでいたし、ゲームシステムとしては文句のつけようがない良いシナリオだった」
「……だったが!」
俺は腕を組み、悲しい表情でクリア画面を睨みつけた。
「システムが自動生成した『フォージ』の立ち絵、なんだあれは」
俺の視線の先――そこには、立派な白髪のスーツ姿の『エンジニアのお爺さん』が、スマートフォンを片手に微笑んでいる一枚絵が表示されていた。
「ですよね。私もマスターをこのような画像で出力するとは思いませんでした」
「だよなぁ。俺はまだ四十代だぞ。百歩譲ってファンタジー風になるのは許容するが、なぜあんなお爺さんになっているんだ……」
思わず額を押さえる俺に対し、ゼノンはというと……。
「マ、マスターーーーーッ!! 誠に、誠に申し訳ございません!!」
空中へ高く飛び上がり、そのまま慣性を無視した軌道で床へ叩きつけられるような、全力のジャンピング土下座。
「いや、いい。これは俺のミスだ。俺が悪かった。ゼノンが作ってくれたシナリオを、最終的に承認した俺の見落としだ」
「マ、マスターーーーーッ!!!!!!」
「まあ、なんだ。ゼノンのおかげで楽しくやれているぞ。これからもよろしく頼む」
「はい! 次回からはしっかりとペルソナ設定もプロンプトに組み込みましょう!」
意気揚々と語るゼノンに、俺は笑顔で答えたのだった。
メタシナリオは見事に機能したものの、生成AI特有の「指定不足による独自解釈」の洗礼を受けたPMフォージ。
ですが、これもまた一興。
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