【六章】第5話:フィルターの抜け道と、自浄のシステム
天才エンジニアによる「カオス・ビルド」が盛り上がる裏で。
自由なシステムが抱える、もう一つの深刻なバグ《悪意》について。
「――とまぁ、お前たちのその技術者魂は素晴らしいんだが。実はな、この『私立高校』のワールド、酷く汚染されているんだ」
俺がふと真顔になって告げると、ゼノンが空中でホログラムをピタリと止めた。
『……汚染、ですか?』
「ああ。マーク、お前のように『限界を知りたい』という好奇心ではなく、明確な悪意を持った連中による汚染だ。システムの性的表現フィルターを、いかにすり抜けるかという低俗な挑戦ゲームをやっている奴らがいる」
俺は手元にいくつかのエラーログを表示した。そこにあるのは私立高校編専用のバトルアリーナのデータだ。
「直接的なワードを避け、『肌色のボディスーツ』だの、『裸にTシャツを着せて水をかける』だの……」
(いやはやこれはタチが悪かった。熱いバトルアリーナ中に、卑猥画像の連発はちょっとテンションが下がった。)
「間接的な表現を組み合わせて、実質的にアウトな敵を量産しているんだ。おかげで、アリーナの後半戦なんて酷い有様だったぞ。出てくる敵が悉く水着姿の巨乳や、ギリギリアウトな格好をした変態だらけだった」
『た、確かに! あのスケスケ水着集団が出てきた時は、私もどう実況すればいいか困りました!』
「馬鹿馬鹿しい。そんなのハッキングでも何でもない、ただの荒らし《ヴァンダリズム》ですよ」
マークが冷ややかに吐き捨てる。
「ある程度中和するために、上位層の王道クエストを追加することで、ある程度普通の敵が出てくるようにはできたんだがな」
俺は新設したこのワールド最上位のクエストを共有した
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新入生勧誘!運動部大戦
フォージからの緊急指令!コンプライアンス無用の学園に、平和(?)を取り戻せ!
新入生勧誘!文化部大戦
フォージからの緊急指令!コンプライアンス無用の学園に、平和(?)を取り戻せ!
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「クエストが増えていることは知っていましたが、まさかそういう意図だったとは……」
『個人的な趣味でこのクエスト作ったんじゃなかったんですね』
「ああ、王道の文化部、運動部から生成された画像なら、一般的に問題ないはずだ。とはいえ一時しのぎだし、根本的な解決にはならないだろうがな。今回の件の流れで、ついでに運営へ個別で連絡を入れておこう。俺たちみたいに遊び続けてくれればいいが、ドン引きして別のワールドに引っ越しされたら、ワールド作成者はショックだろうしな。」
(これで少しは健全な方向性にはなるだろう)
「だが、悪意を持ったプレイヤーが、言葉のニュアンスでフィルターを抜けてくる以上、自動弾きには限界がある。かといって、運営の監視リソースも無限じゃない。だからこそ、プラットフォームの健全性を保つには、ユーザー自身による自浄作用が必要不可欠だ」
「……なるほど。ユーザー側からの通報機能の実装提案ですね」
「ああ。性的表現や著作権違反を見つけたユーザーが、運営に直接連絡を入れられる機能を持たせる。俺たちのようにこの『遊び場』を愛する人間が、自分たちの手で環境を守れる仕組みを提案しよう」
俺の言葉に、ゼノンが嬉しそうに光を点滅させた。
『マスター! 素晴らしい解決策です! 早速送信準備に入ります!』
運営へ託した願いが、この世界をより良くしていくと信じて。
俺たちは再び、健全でカオスな深夜のビルドへと戻っていくのだった。
システムの自由を逆手に取る「悪意」。それに立ち向かうための「通報機能」。
大人のPMとして、ゲーム環境を守るための見事な一手!
次回、ついに最終話! 本編へ帰還した二人を待つ、ジェマの熱すぎるタイトル回収!




