【六章】第1話:悪意なきハッカーと、終わらない限界突破
本編に一度帰還したフォージたちですが、空き時間があるたびにちょくちょく遊びに来ているようです。
しかし平和に遊ぶにはまだ遠いようです。
本編に一度帰還した俺たちだが、空き時間があるたびにちょくちょく遊びに来ている。
なぜかって?いや、そこは簡単だ。面白いからだ(笑)
「おーい、兄貴。遅いですよ……ふぁぁ」
大きな欠伸をしながら現れたのは、ダボッとした白いサイバーパーカーを着た小柄な青年。
俺がこのゲームに誘った親友であり、天才的な後輩エンジニアの『マーク』だ。
「待たせたな。お前もこのシステムで随分と遊んでいるみたいじゃないか。」
ちなみにゼノンのことも彼には紹介済みだ。
『マークさん、お久しぶりです。』
「俺が教えた『カッパールーングレイブ』の理屈は役に立ったか?」
「ええ、あの物理法則をハックするアプローチは参考になりました。でも……兄貴の12万ダメージなんて、正直まだまだ甘いですよ」
マークはパーカーの萌え袖から指先だけを出し、空中に自身のコンソールを展開した。
「……なんだと?」
「見てください。これが僕の組んだ最新のプロンプトです。限界突破のその先を行ってみました」
マークが表示したカードのステータス画面を見て、俺とゼノンは絶句した。
その召喚カードには、毎ターン自動で『999999ダメージ』を敵全体に与えるという、ゲームの根幹を揺るがす完全な破壊兵器が鎮座していた。
『きゅ、99万……!? カンストしてます! マスターの火力を軽く超えてきました!』
ゼノンが球体ボディを震わせて驚愕する。
「すごいなこれは、変な固定観念がない分、うまく指示を出せた証拠だな。」
(おそらく俺ではそんな無茶な数字を指示することすらないだろう)
「……お前のプロンプト構築力には恐れ入るよ。完全にシステムの限界値を叩き出してるじゃないか」
俺が苦笑しながら褒めると、マークは退屈そうに目をこすった。
「数値の限界を突破するのは、もう飽きました。パズルの正解を見つけちゃった気分です」
「そうか。じゃあ、次はどうするんだ? もっと複雑なシナジーでも組んでみるか?」
「いえ」
マークは淡いアイスブルーの瞳を少しだけ細め、ハッカー特有の楽しげな笑みを浮かべた。
「数値の限界は超えたので、次は『画像生成のフィルター制限』をどこまですり抜けられるか、限界テストをしてみました。すでに最高の大作ができていますよ」
そう言って、マークは新たなるカードの生成結果を誇らしげに呼び出した。
火力の限界を突破し尽くし、退屈してしまった天才ハッカー・マーク。
彼の悪意のない好奇心は、システムのもっともデリケートな部分へと向かいます。
次回、マークがフィルターを極限まで回避して作り上げた「最高の大作」とは……?




