【五章】第5話:無限の階層と、プロジェクトの完了(クローズ)
桁を間違えたかのような「12万超え」のダメージを叩き出し、システムを完全に蹂躙し始めた俺たち。
しかし、バトルアリーナの『HELLリーグ』は、文字通りの底なし沼だった。
「 ギャラクシー・ストライク!!」
闘技場に爆発音が鳴り響き、システムが悲鳴を上げる。
俺たち『銀河戦隊』の放った物理カードの連撃が、敵の巨大な魔物を光の粒子へと変換していく。
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【システム通知】
第五十層、クリア!
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『マスター! 第五十層を突破しました! 敵のHPはついに6000台に差し掛かっています!』
ゼノンがホログラムで戦況データを報告してくるが、俺は欠伸を噛み殺しながらサイバー小太刀を肩に担いだ。
「HPが600だろうが6000だろうが関係ない。こっちの火力は初手から12万出てるんだぞ。HPのインフレが俺たちのダメージ計算式に追いつくのに、あと何百層かかるんだって話だ」
俺の言う通り、敵のステータスがどれだけ上がろうと、戦闘は常に「1ターン目のフルバーストで瞬殺」という作業の繰り返しになっていた。
防御も回復も必要ない。ただドローして、物理カードを叩きつけるだけだ。
そして――俺たちは立ち止まることなく、ついに三桁の階層へと到達した。
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【システム通知】
第百層、クリア!
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『ひゃ、第百層の敵、HPが25000台に差し掛かっていました! 通常のレイドボスすら凌駕する数値です!』
「……で、結果はどうだった?」
『……いつものように、開幕の物理フルバーストで瞬殺でした』
ゼノンが呆れたようにLEDの瞳を点滅させる。
俺は闘技場の床にドカッと座り込み、メニュー画面を呼び出した。
「なぁ、ゼノン」
『はい、マスター』
「これ、いくらでも攻略できるが……」
『……はい。私たちの火力が頭打ちになる気配が全くないので、システムが階層を自動生成し続ける限り、一生終わらないですね』
少しの沈黙。
俺はコンソールの『リタイア(棄権)』ボタンに指を添え、ふっと息を吐いた。
「――終わるか、こんなもんで」
『……えぇぇぇっ!? り、リタイアするんですか!? 目指すはランキング1位じゃなかったんですか!?』
ゼノンが球体ボディをバウンドさせて驚くが、俺は首を振った。
「いいかゼノン。俺たちはそもそも、ベータテスター的にこの世界へお仕事(出張)に来たんだぞ。システムの限界をテストし、『理論上、この構成ならどこまでも行けて1位が取れる』と証明する(要件を満たす)ところまではいい」
俺は立ち上がり、ギャラクシーチェンジドライバーの変身を解除した。
「だが、それを証明した後に、ただ時間を浪費して『本当の1位』の座に張り付く必要はないだろう? プロジェクトマネージャーにとって、最も価値があるのは『時間』だ。消化試合に無限の時間を溶かすくらいなら、さっさと切り上げて次の仕事に向かうべきだ」
『ああっ……! なんて大人で、論理的で、そして身も蓋もない理由……! でも、確かに私たちの「テスト業務」は完璧に完了していますね!』
「そういうことだ。十分に楽しませてもらったし、いい気分転換になった。……さあ、俺たちの本来の現場に帰還するぞ。本編のジェマが、仕様書の大改修で泣きながら俺たちを待ってるはずだからな」
『はいっ! 本編サーバーへの帰還シークエンス、起動します!』
こうして俺たちは、バトルアリーナのランキングボードに『圧倒的なスコアで第百層到達』という異常なログ(爪痕)だけを残し、満足げに異世界からログアウトしたのだった。
――プロジェクト『異世界出張テスト』、これにて完了である。
第100層(HP25000)すらワンパンで粉砕し、ついに「飽きた(時間がもったいない)」という大人の理由で帰還を決意するフォージ!
「俺たちの戦いはこれからだ!」ならぬ「俺たちの仕事はこれで終わりだ!」という、PMらしい合理的な幕引きでした。
これにて『急遽PM ワールドリフォージ外伝』の本編(?)は完結となります!
最後まで出張業務にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
次回、ジェマによる総括の【アフタートーク(エピローグ)】をお届けして、本当の完結となります。
「大人の決断w」「爪痕だけ残して去るのカッコいいw」と思っていただけましたら、
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