【二章】第4話:想定内の惨敗と、最速攻略のロードマップ
出来上がったばかりの装備を引っ提げ、適正レベルを完全に無視したクエストへと突撃した二人。
その無謀な挑戦の結果は――。
結果から言おう。
適正レベル10のクエストは、楽勝だった。
道中の雑魚は盾旋棍のカウンターで粉砕し、ボス戦は受けたダメージを蘇生力で無理やり回復する「ゾンビ戦法」で完封。余裕のクリアだ。
だが、さすがにLv25の魔王城は、惨敗だった。
俺たちが組み上げたコンボが発動する前に、魔王城の圧倒的な基礎火力とステータスの暴力に押し潰され、削り切る前にパーティは全滅してしまった。
(ちなみに、あのバグレベルの火力を誇る『カッパー・ルーン・グレイブ』は封印したままだ。あれを安易に振り回せば、ゲームバランスというものが完全に崩壊してしまうからな)
電脳空間のブリーフィングルーム。
目の前には『GAME OVER』の文字が浮かんでいる。
「マスター。私、とても悔しいです……」
隣に浮遊するゼノンが、ホログラムの輝きを薄暗く落とし、ボディをどんよりと沈ませていた。
「私たちが徹夜で組み上げた最高の構築が、純粋なレベル差の暴力で叩き潰されるなんて……っ!」
「ん? そうか? 俺はこれでよかったと思うぞ」
俺が平然と笑って見せると、ゼノンはバイザーの瞳を点滅させ、機体を勢いよく跳ね上げた。
「はい??? なぜそうなるのですか? 負けてしまったのですよ!?」
「ゼノン、あくまで俺の考えだがな」
俺は腕を組み、後輩AIに向かって語りかけた。
「エンジニアというものは、完全な百パーセントの準備をしてから、失敗しないように本番環境に挑むわけじゃない。まずは最小限の構成で動かしてみて、どこでエラーが出るかを確認する。トライアンドエラーが基本だ」
「トライアンド……エラー」
「ああ。それに武術の試合でも同じだ。全国大会や世界大会に『絶対に勝てるようになってから出ます』なんて言っていたら、いつまで経っても出場できないし、優勝なんて永遠にできやしない」
俺は、現実世界で剣術の世界大会に挑んだ日々を思い出しながら言葉を紡ぐ。
「まずは今の全力でぶつかってみる。そうすれば、自分に足りないもの――次に戦うべき目標《課題》が明確になる。今回、魔王城の火力を実際に体感できたことで、システムの上限値が測れた。大きな収穫だ。俺はそう思うよ」
「――っ!!」
ゼノンのバイザーが、カッと眩い光を放った。
「マ、マスターーーーーッ!! なんて、なんて深く、そして合理的な思考なのでしょうか!!」
ゼノンが空中で激しく高速回転を始め、ホログラムの紙吹雪をまき散らす。
「失敗を恐れず、果敢に挑むことで最速のデータ収集を行う……! IT業界のアジャイル開発の真髄でありながら、武術を極めた世界チャンピオンとしての勝負哲学! その二つが完全に融合した至高のプレイング! 私、感動いたしました!!」
相変わらずのべた褒めに苦笑しつつ、俺は空中に新たなウィンドウを展開した。
「ゼノン。俺たちは、あの魔王城を、このワールドにおける最速の『最低レベル』でクリアする。そのための、俺が描いた次なるロードマップ(要件定義)を伝えるぞ」
「はいっ!! 全リソースを待機させております!!」
ビシッと敬礼のポーズをとるゼノンに対し、俺はニヤリと笑い、クエスト作成のプロンプト入力欄を開いた。
「俺たち自身で、『クリアすれば確定で超強力な進化アイテムが貰える都合の良いクエスト』を作ってやるのさ。テーマは実はもう決めてるんだ。ずばり……」
ゼノンの息を呑む音が聞こえる(ような気がした)。
「『戦隊ヒーロー』だ。剣と魔法の世界に、戦隊ヒーロークエストをぶち込むぞ」
敗北すらも最速攻略のためのデータ収集。
魔王城を最低レベルで陥落させるため、次なるハッキングはまさかの「戦隊ヒーロー」!?
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